「スマート」だね韓国社会(下)

<寄稿>「スマート」だね韓国社会(上)
ITジャーナリスト 趙章恩


人・生活・行政つなぐ
民団も独自の情報発信を


モバイル行政めざすソウル


 ソウル市は「スマートソウル2015」政策を進めている。ソウル市内のどこでも高速モバイルインターネットを無料で使えるようにすることで情報格差をなくし、世界初のモバイル行政実現を目標としている。


 スマートフォンから医療・福祉・年金など、その人のための行政情報を提供、書類の申請や税金・各種届出もスマートフォンから利用できるようにする。


 ソウル市内の地下鉄の駅や観光地には必ずといっていいほど情報発信端末である「デジタルビュー」というデジタルサイネージ(電子看板)が置いてある。


 大画面にはニュースや広告が流れ、メニューをタッチすると、無料で交通情報やマップ、周辺ショップの案内、ニュース、エンタメ情報などを利用できるほか、電話も無料でかけられる。





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済州のスマートグリッド実証実験世帯


実証実験中の済州再生エネ


 このようなスマートライフは大都市だけではない。観光レジャーの名所、済州も「スマート済州」をキャッチフレーズに、09年12月から世界最大規模のスマートグリッド実証実験を行っている。


 福島原発事故以降、世界中で太陽光発電、風力発電といった再生エネルギーが注目されているが、済州道は一歩先に再生エネルギーとスマートグリッドで電力を効率的に使うことを始めた。


 実験に参加している約600世帯は、スマートフォンから家庭内の家電を操作でき、住民が自家発電した電力を電力会社に販売できるようにするためのシステムが整っている。今年末にはこれを3000世帯に拡大する計画だ。


 今年4月からは済州市と通信キャリアのKTが提携し、同市のいたるところで誰もが無料で高速モバイルインターネットを利用できるようにもしている。


 スマートフォンやタブレットPCを持って済州を訪れた観光客が、観光情報やグルメ情報を検索しながら移動している様子をよくみかけるようになった。


 18年開催が決定した平昌冬季五輪も世界初のユビキタス五輪にするための準備が始まっている。


 スマートフォンとモバイルインターネットを基盤に五輪会場の建設状況を公開し、12年からは組織委員会がスマートワークを導入し、ソウルと平昌を行き来しなくても、スマートフォンやタブレットPCを通じて不便なく業務ができるようにする。


 18年の冬季五輪では、平昌をスマートシティにして、人の生活はこれからこうなるという未来を体験させることで、「スマートKOREA」の名声を高め、輸出拡大を期待しているのだ。


 また、「未来ネットワーク」も注目されている。18年にはすべての競技が3Dで中継されることが予想されるからだ。


韓国モデルに日本でも推進


 韓日の間ではスマートフォンを使った観光情報提供、国際モバイル決済の提携が行われている。自分のスマートフォンを韓国でも、日本でもそのままおサイフケータイとして利用できるようにするための提携が結ばれ、準備が進められている。また韓日政府の間には、電子政府に関するMOUも結ばれた。


 韓国は国連が選定した電子政府評価で世界1位に選ばれただけに、そのノウハウを日本に伝授して、国民の利便性を高められる電子政府サービスを提供できるようにしようと手助けしている。


 日本がこれから導入しようとしている国民ID制度や行政情報化、保険・年金情報化、病院情報化なども、韓国では既に20年近く前から導入されているサービスだけに、韓国はどの国よりも日本が学ぶべきモデルであり、適切なアドバイザーであることは間違いない。


本国と在日を結ぶ民団情報


 韓国の電子政府サービスは、在外国民もインターネット上で個人を確認するための「認証書」を受給すれば、いつでもどこでも利用できる。


 民団は本国と日本に在住する韓国人をつなぐ役割を果たしていく重要な機関である。このように在外国民が利用すると便利な韓国のITサービス、アプリケーションを紹介するのも、その役割の一つといえるのではないだろうか。


 また日本に住んでいる韓国人が困っていることをタッチ一つで調べられ解決できるような、民団のアプリケーションも必要である。


 筆者の家族の場合、本国に帰る時に日本で払った年金の払い戻し方法が分からなくてずいぶん苦労したことがある。こうした在外国民の悩みを誰よりも詳しく把握できる立場にいる民団だけに、スマートコリアの一環として、特別永住者や長期滞在者などに分けて、その人にぴったりの情報をプッシュ型で提供できるよう準備を進めるべきであろう。スマートフォンで誰でもすぐ情報を発信できる環境になってから、韓国は自然と情報が開放され、情報通信技術(ICT)と他産業が融合して次々に新しいサービスが生まれている。


 韓国情報化振興院の09年12月の調査では、国民の86・7%が情報化によって韓国社会は良くなったと答えている。多くの国民がインターネットを利用してから生活の質も高まり、社会もより良い方向へと変わっていると考えている。


 民団を中心に、在日韓国人の社会も情報化でよりスマートになっていくことは間違いないだろう。とても楽しみだ。


(2011.8.31 民団新聞)

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http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=0&newsid=14788