[日本と韓国の交差点] 徴兵は、韓国男性アイドルの芸能人生命を左右する

「イジェナルババミスター イルミモヤミスター、ジージージージーベイベーベイベーベイベー」。しまった、また口ずさんでしまった。テレビでもネットでも街中でも、洗脳されるほど聞いてしまったせいだろうか。この歳になってもアイドルの歌がすんなり歌えてしまう。

 60万人に及ぶ韓国国軍の希望とロマンと呼ばれる女神さま、「少女時代」がついに日本にやってきた。彼女たちだけではない。「カーラ」や「ブラウンアイドガールズ」、「フォーミニッツ」など、韓国で大人気の女性アイドルグループが次々日本デビューを果たしている。


 韓国のメディアも、「女性アイドルたちが日本を魅了した」と連日報道している。「ライブに2万人が集まった」。「海外アーティストのアルバム売上順位で記録を更新した」。「バラエティー番組に出演したこんな発言をした」。などなど、日本におけるすべての活動が報道されていると感じられるほどだ。「本当に人気がある」ことの証拠として、レコード店の陳列やライブ会場の写真がネットに投稿されている。日本に住んでいる韓国人が中心となって投稿しているようだ。



軍での慰問公演の数は人気のバロメータ



 韓国のアイドルの人気順位は、アルバムや曲がダウンロード販売された数の順位だけでなく、軍の慰問公演にどれぐらい呼ばれるかも重要な要素だ。慰問公演の回数が多いほど、国民的人気を誇るアイドルであると言える。人気が高いのはやはりセクシーな踊りを売りにする女性歌手。ここ最近は「少女時代」が人気ナンバーワンなのだそう。韓国軍の最終兵器は軍人の士気を最高潮にしてくれる「少女時代」ではないかと思ってしまうほどすごい。ネットに投稿された慰問公演の動画を見ていると、少女時代の歌声が「うお~」という軍人たちの歓声にかき消されて全く聞こえない!


 国軍放送の広報大使にも、男性芸能人ではなく女性アイドルグループ「Fx」が選ばれた。「少女時代」の妹分として結成されたグループだ。1年間、国軍放送への出演、キャンペーン、慰問公演をする。男性アイドルは徴兵で軍とかかわるいっぽう、女性アイドルもこうした形で軍と密接な関係にある。



男性アイドルにとって徴兵は「アイドルの終わり」を意味する



 最近の若手スターの中には、「徴兵のことであれこれ言われたくない」と、厳しい海軍や空軍にわざと志願する人もいる。本人は苦労するし、除隊後も人気が続くかどうか不安はあるだろう。だが、株は上がる。自分の子供を軍に行かせたお母さんたちの支持率が高くなれば、視聴率を取れるタレントになれるかもしれない。


 いっぽうで年々増えているのは、不祥事を起こし、「自粛」のために入隊するケースである。麻薬、飲酒運転、傷害事件などの問題を起こし、“みそぎ”のために軍に入る。そして、事件が忘れられたころに除隊して芸能界に復帰する。


 「芸能人」の場合、入隊してからも「芸能兵士」として芸能活動を続けられる道がある軍の広報映画に出演したり、国軍が放送するFMラジオ番組のパーソナリティを務めたり(国軍放送のラジオは誰でも聞ける)、慰問イベントの司会をしたり。それでも人気が落ちるのを恐れて、法律違反を犯してでも徴兵を免除されたがる。


 男性アイドルの場合、徴兵の通知は「もうアイドルではなくなる」という通知にも等しい。徴兵をきっかけにグループ解散もよくある話しだ。小学校5~6年生のときにオーディションで選ばれ、練習生として5~6年ほど苦労してやっとデビュー……と思ったら、3~4年たった全盛期に徴兵の通知が届く。除隊後もアイドルで居られる保障はない。


 最近は「軍必ドル(徴兵を済ませたアイドル)」といって、除隊してからデビューする実力派もいるが、美少年というよりお笑い系アイドルとして人気を得ている。


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By 趙 章恩

2010年9月24日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100928/216412/