[日本と韓国の交差点] 海外メディアまで騒がせたサムスン物産の臨時株主総会

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7月17日、ソウル市内でサムスン物産の臨時株主総会が開かれた。サムスングループの実質的な持株会社である第一毛織(ファッション、レジャー、外食、建設関連業)とサムスン物産の合併を認めるかどうかを決める株主投票を行うためである。結果は、サムスン物産の望み通りになった。株主の84%が投票に参加。70%が合併に賛成し、反対は14%にとどまった。これにより第一毛織は9月1日付でサムスン物産を吸収合併する。合併後の新会社はサムスングループの持株会社の役割を果たす。新会社の社名はサムスン物産になる見込みだ。

 サムスン物産は第一毛織と合併し、バイオ事業に力を入れると発表した。第一毛織・サムスン電子・サムスン物産の3社はSamsung BioLogicsという会社の株の97%を保有している。だが、複数の韓国メディアによると、合併の目的はそれだけではないようだ。サムスン物産と第一毛織の合併は李健熙(イ・ゴンヒ)会長を長とする李一族がサムスングループの経営を承継するためにとても重要なのだ。

 李健熙会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が、サムスングループの経営権を承継するためには新会社の筆頭株主になる必要がある。

 サムスンングループは現在、サムスングループ会社同士がお互いの株を持つ循環出資構造と呼ぶ構造になっているからだ。例えば、こんな具合である。
第一毛織がサムスン生命に出資
サムスン生命がサムスン電子に出資
サムスン電子はサムスン電機とサムスンSDIに出資
サムスン電機とサムスンSDIはサムスン物産に出資
サムスン物産はサムスン電子に出資

 循環出資の中心に第一毛織があった。循環出資構造を取ることで、李健熙会長は、自身が保有するサムスン電子の株式数は少なくても、サムスングループ全体のオーナーの座に就いていられた。

循環出資に代わる支配体制が必要に

 しかし韓国政府が循環出資を問題視し、サムスングループをはじめとする財閥に対し改善を求めていた。財閥グループのオーナーで居続けるためには、本人と家族も株を保有する必要がある。しかし今からサムスングループの株を買うには莫大な資金が必要だ。しかし持株会社の筆頭株主になればこの問題をクリアーできる。サムスングループは合併により、循環出資構造をシンプルにしようとしている。

 新しくできる持株会社がサムスングループの主力会社であるサムスン生命とサムスン電子の株式を保有する構造に変える。韓国の独占規制および公正取引法は、持株会社は上場した子会社の株式の20%以上を保有する義務を課している。サムスン電子とサムスン生命の株を20%以上持つ持株会社を作るため、第一毛織とサムスン物産の合併が必要だった。

 第一毛織とサムスン物産の取締役会は、合併する方針を5月26日に発表した。そして、7月17日に臨時株主総会を開いて、合併を認めるかどうかを株主の投票で決めることにした。両社の取締役会は、合併する際の株式交換比率を、時価総額を基準にして、第一毛織の株1に対しサムスン物産の株は0.35に決めた。第一毛織は新株約5467万株を発行してサムスン物産の株約1億5621万株と交換する。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年7月21
-Original column