第35回:面白キャラ大集合の『ダルジャの春』はヒューマン・コミック・メロドラマ







第35回
面白キャラ大集合の『ダルジャの春』は

ヒューマン・コミック・メロドラマ

2007年3月14日


 日本と同じく韓国も大暖冬だったこの冬。1月も2月もコートいらないんじゃない? というほど暖かくて地球の温暖化が本気で心配になったけど、3月に入ってから急に雪は降り出すわ、氷点下になるわ、コッセムチュイ(花が咲くのを妬む寒さ、春になる直前にやってくる寒さのこと)がすごかった。

 韓国は3月が新学期なので、寒くても「春=3月」というイメージが強く、各メーカーのテレビ広告も春っぽくなってきた。その中でも大のお勧めは
このCM! チョ・インソンが登場するホワイトデーケーキのCMなのだけど、このびっくりしてぼーっとした表情から恥ずかしそうな笑顔に変わる微妙な表情が、もうたまらなく大好き!

 チョ・インソンのCMで春が来たな~と感じるのもなんですが、「
白い巨塔」のチャン・ジュンヒョクの魅力から抜け出すためにも、別のターゲットを探さなくてはならない。「白い巨塔」で最後にチャン・ジュンヒョクが自分の手術シーンを思い出しながら死んでいく場面では涙が止まらなくなって、来週から私は何を楽しみに生きればいいのかを考えたらまた涙が止まらなくなった。だが、すぐに思い出した。このドラマがあったじゃな~い。『ダルジャの春』です。

●契約恋愛から始まる本当の恋

 男運に恵まれず、いつの間にか仕事一筋になるしかなかった33歳キャリアウーマンが、家出して弁当屋を目指す年下のエリート弁護士(だけど今は仕事をやめて貧しい)と契約恋愛をきっかけに本当の恋に落ちて同棲する(ほとんど飼っている)……。これだけ聞くと「君はペット」と「アネゴ」をごっちゃ混ぜにしたようなストーリ? と思ってしまいがちだが、それがチェリムという女優のお茶目な演技力のおかげで、とてもかわいく素晴らしいドラマに仕上がっている。









ダルジャ役のチェリム、今までのお嬢様スタイルから二皮ほど向けたような変身ぶり
(c) KBS
※ クリックで拡大
転がり込んできたテボンと同棲するようになったダルジャのマンションに母と祖母がやってきた
(c) KBS

 とにかく面白いドラマにするのが目標という『ダルジャの春』は、製作発表会からとても興味深かった。メロでもなくラブコメでもなく、「ヒューマン・コミック・メロドラマ」というその路線がすごく気になり、同時間帯の「外科医ボンダルヒ」、セブンが主人公の「宮S」をあきらめ「ダルジャ」を選択した。正直、心臓病を克服する痩せすぎ女医よりも、何を言いたいのかさっぱりわからない皇室の三角関係よりも、わかりやすく笑えるダルジャのほうが個人的には好みということもある。

●多彩なキャラが魅力

 このドラマの見どころは、「そうそう、こんな人私の周りにもいる!」と共感をもてる人間味のあるキャラクターがたくさん登場することだ。

 典型的な三角関係としてチェリムが演じる主人公のダルジャの母と、年下彼テボンの父親は、初恋の仲で今でもお互いを意識している。独特なキャラクターであるテボンの母は未だにパパっ子で、何でも「パパ~」と暴力団風のパパに泣きつくおばさんで、年上彼女のダルジャからもダルジャの母からも嫌われている。







ソンジュとセドの駆け引きやセドの告白イベントは韓国ならではのこと?
(c) KBS
 ほかにも、テボンの父の妹で仕事のためなら家族のことなど後回しの厳しすぎるダルジャの上司、 何でも相談できる会社の温かい先輩と、いつもダルジャを心配してくれる仲間たち、仕事にはシビアでいつも無表情だけど情が深いところもあるソンジュ、プレイボーイだけどソンジュには本気のおっちょこちょいのセド、ダルジャに思いを寄せる取引先の社長、ダルジャに嫌がらせをするストーカー並みの社長の前妻と、実にさまざまなキャラクターが登場。さらに、エピソードが入り乱れ、ダルジャの恋の行方より、出演者全員の恋のほうが気になってしまう構成が面白い。

 毎回、夢シーン、想像シーンという設定で、さまざまなドラマの名場面をパロっているのも爆笑もの。ダルジャを観て面白いと思ったあなたは、かなりの韓国通であること間違いなし!


視聴!<ダルジャの春>

 『ダルジャの春』(KBS2、毎週水・木夜9時55分から)を視聴するには、ドラマ視聴ページ(VOD)から。KBSのインターネットでの視聴方法について詳しくは第2回:無料で楽しむ韓国ドラマ 入門編2<KBS>を参照。


●お姉さまをリードしてくれる頼れる年下の彼






テボン役のイ・ミンギ、最初はあまりカッコいいと思わなかったけど、男前です
(c) KBS

 「がんばれグムスン」でグムスンの義理の兄を演じたイ・ミンギが男性主人公のガン・テボン役を演じているが、サムスンの年下彼ヒョン・ビンとは正反対の、恋愛にうといシャイなお姉さまをリードしてくれる頼れる年下彼。私はテボンの方が好きだな~。

 暖かい家庭に憧れてお弁当屋さんになるのが夢で、好きな女性に何も望むものはない、ただ自分といると気が楽になる、落ち着くと言われたいテボン。現実ではあり得ない反抗的な若手エリート弁護士だけど、似合っている。無駄に年だけとってしまったドジな子供ダルジャを、「まったく~」って感じでフォローしてくれるところがいい。

●波乱万丈のイ・へヨンと役柄が重なり共感







ソンジュ役のイ・へヨン。本当に美しい
(c) KBS

 韓国の女性たちは、イ・へヨンが演じる脇役のソンジュにもすごく共感している。テレホンショッピングのトップショーホスト(商品の紹介をするアナウンサーのような売子のような役割をする人)という韓国で流行の仕事に就き、どんなハプニングにもあわてず、テキパキと生放送をこなすしっかりものだけど、実は離婚した夫の借金を背負ってしまうほど情が深く、恋人が負担を感じるのではないかと心配して妊娠を打ち明けられない気弱な面ももっている。

 この役のイ・へヨンは、現実でも離婚を経験している。10年来の大恋愛の末結婚したが1年ちょっとで離婚、自分名義になっている夫の借金返済を無効にするために前夫を詐欺で訴えた。だが仕事の面では離婚後テレビ出演も増え、テレホンショッピングで自分がデザインしたファッションブランド「Missing Dorothy」を売り出したところ大当たり。今年の3月から梨花女子大学デザイン学部で「Missing Dorothy」の成功談がカリキュラムに加えられ、CEOとして特別講義もする予定だ。アイドル歌手でデビューし女優に転換、韓国女優にしては珍しくヌード写真集も出したほど波乱万丈の彼女とソンジュを重ねてみる視聴者も多い。だからソンジュもイ・へヨンもがんばってほしい! と応援せずにはいられない。

 チェリムも子役出身だから演技には定評があるが、離婚後の復帰作としてこの役を選んだのは正解。ダルジャってチェリムそのままじゃないの? というほど似合っている。

●韓国女性の日常に興味のある人は必見です!

 映画「プラダを着た悪魔」まではいかないけれど、『ダルジャの春』にはこの冬と春の人気ファッションも勢揃いしている。大暖冬だっただけに袖がちょっと短めでちょうちんのようになっているふわふわコート、フェミニンなシフォンブラウスにハードなブーツなど、あまり決めすぎないお仕事ルックで、明日からでも真似できそうなファッションばかり。ソンジュのボブとミニワンピース、カラー原石のジュエリー、そしてダルジャのスモーキーメイクは20~30代に支持され、雑誌や新聞にも特集で紹介されたほど。番組のホームページでは、ダルジャに似合いそうなコーディネートを視聴者が選ぶイベントも開催されている。

 また、毎回ドラマのタイトルにはダルジャの心理を代弁するイラストが使われていて、これもまたおしゃれなイラストでロマンチックな雰囲気を盛り上げてくれる。仕事も恋も家族も大事な韓国女性の日常に興味のある人にはぴったりの『ダルジャの春』。見逃さないでくださいね!








ドラマのタイトルは毎回イラストで制作される
(c) KBS



By-
RBB TODAY : 趙章恩の現地直送「韓ドラ事情 
Link