韓国が超純水技術「国産化」、日本の輸出規制強化きっかけに半導体競争力向上

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韓国環境部(部は日本の省に相当)傘下の韓国水資源公社とSK Hynix(SKハイニックス)は2024年10月11日、半導体製造に不可欠な超純水技術の自立性確保と水産業育成のために、「SK Hynix用水供給施設運営・管理・統合水供給基本協約」を締結した(図1)。

図1 韓国水資源公社での作業の様子

図1 韓国水資源公社での作業の様子

SK Hynixと2024年10月11日に、「SK Hynix用水供給施設運営・管理・統合水供給基本協約」を締結した(写真:韓国水資源公社)

 この協約は、SK Hynixの半導体工場に超純水を始めとして公共用水を安定的に提供することで、韓国の半導体産業のグローバル競争力を高めるのが狙いである。SK Hynixは2025年から韓国の技術によって生産した超純水を使用する。

 半導体生産工程で最も重要なインフラといえるのが、水と電気である。ナノ(nm)メートル単位の超微細加工においてウェーハを洗浄するために使う超純水は、水素と酸素だけを残して無機質とバクテリアをすべて除去した有機物0.01ppm以下の水である。超純水は、半導体のエッチング工程後、ウェーハを削って不純物を除去したり、イオン注入工程後に残りのイオンを洗い流したり、ウェーハの研磨や切断したりする際にも使われる。

 このため、直径8インチ(約20cm)のウェーハ1枚当たり7トン以上もの超純水が必要になる。しかも、3nm、2nmと微細化競争が進む中、各工程の前後にウェーハを超純水で洗浄する過程で小さな粒子が残ると半導体製造工程と歩留まりに悪影響を与えるため、より高品質で不純物を含まない超純水を確保することが、半導体製造において重要度を増している。

きっかけは日本の輸出規制強化

 韓国は、DRAMを初めて生産した1980年代から日本と米国の超純水生産技術を利用してきた。それが自立を目指して国産化に投資するようになったきっかけは、日本の経済産業省が2019年7月に導入した韓国に対する半導体材料3品目の輸出管理厳格化措置(2023年3月解除)である。

 半導体は韓国を代表する産業であるが、半導体を生産するための素材・部品・設備は費用を低く抑えるために、長年日本から輸入していた。それが日本の対韓国輸出管理厳格化措置の後から、半導体に関しては経済安保の観点から素材・部品・設備を国産化して外部要因による不確実性をなくし、安定した生産体制を維持できるようにすべきという産業界の意向が強くなった。超純水自体は半導体材料3品目(フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト)の対象外だったが、生産に不可欠なものとして国産化開発の対象になった。

 当初は、超純水生産技術の国産化に向けて企業が個別に投資していたが、2021年に政府が超純水の生産技術を「国家核心技術」に指定し、研究開発予算を投じたことで本格的に動き始めた。そして2021年から2025年の5年計画で、環境部と韓国水資源公社、SK ecoplant(SKエコプラント)、SK Siltron(SKシルトロン)、その他多数の中堅企業が共同で超純水生産技術の研究開発と実証を行ってきた。

 SK Siltronの工場内にある「超純水国産化実証プラント」は、海外の設備を韓国の技術で設計・施工した施設と、設計・施工・設備のすべてを韓国産で固めた施設に分かれている。それぞれ毎日1200tの超純水を生産して実証している。韓国の産業界から政府に対し、超純水の技術開発をしてもテストベッドと性能認証環境が整っていないことがネックになっているので解決してほしいと依頼したことから、韓国水資源公社を中心に技術自立と市場開拓のためのテストベッドを運営することになった。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 10. 

-Original column 

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