「半導体選挙」の様相を呈する韓国総選挙、与野党は支援公約で競う

.

韓国では2023年4月10日に第22代国会議員を選ぶ総選挙が行われる。選挙日は臨時休日になる。同年3月31日に聯合ニュースが全国18歳以上の1000人を対象にした世論調査では、「必ず投票する」が回答者の80%、「できれば投票する」が同15%と、選挙に対する関心度は極めて高い。

 今回の選挙は「半導体選挙」と呼ばれるほど与野党の半導体公約が目立つ。米国、日本、中国など各国の政府が半導体生産拠点を自国に誘致するため巨額の補助金を支給する中、韓国も税額控除だけでなく補助金を支給すべきだという雰囲気になっている。韓国政府はこれまで半導体産業に補助金を出していない。2024年3月時点の韓国半導体の輸出額は116.7億米ドル。全輸出額に占める割合は20.6%と、韓国を代表する産業である。しかしこのままで韓国半導体産業のグローバルな競争力が失われるかもしれないという危機感が漂っている。市場調査会社の米Gartner(ガートナー)が2024年1月に発表した世界半導体市場の売上高1位は米Intel(インテル)、2位は韓国Samsung Electronics(サムスン電子)だったが、同年3月の英Omdia(オムディア)の調査では1位はインテル、2位に米NVIDIA(エヌビディア)が入り、サムスン電子は3位という結果になった。

 韓国政府は同年3月27日、国務総理が主宰する「第5次国家先端戦略産業委員会」において、2047年まで先端戦略産業特化団地を造成し、民間の投資が活発になるよう補助金を含め投資インセンティブ制度を拡充する方案を検討すると公表した。韓国内ではついに政府が半導体産業に対する補助金を検討し始めたという見方になっている。

 韓国における2大政党の1つである「国民の力」は与党として、政府の「京畿道南部半導体メガクラスター」造成に合わせ、半導体新規設備投資に対して主要競争国の支援に相当する直接的な補助金の支給を推進し、世界における半導体の覇権争いで優位な地位を維持すべきだとしている。補助金の根拠を確立するために「国家先端戦略産業競争力強化及び保護に関する特別処置法(半導体特別法)」と「国家基幹電力網拡充特別法」の改定を公約した。半導体施設投資認許可の手続きも簡素化すると公約した。

 野党の「共に民主党」は、半導体設備投資に対する大手企業15%・中小企業25%の税額控除を維持しながら京畿道南部から東部にかけて「半導体エコシステムハブ構築」を公約した。システム半導体(非メモリー半導体)と先端パッケージングに対する支援を拡大し、ファブレス半導体設計企業を育成、半導体素材・部品・装置の中小企業と大手企業の協力を強化するとした。半導体生産拠点は洋上風力発電と太陽発電を利用した再生エネルギーを使うRE100に対応する。電気や用水など半導体生産に必要なインフラ設備投資の一定割合を政府が支援することも公約した。現在の半導体設備投資に関わる税額控除は一時的なもので2024年末と期限が定められている。共に民主党は期間を延長し民間の投資を誘導するとしている。

 ただし国民の力の補助金は財源をどうするのか、共に民主党のハブ構築はいつどのように構築するのかといった細部の計画をまだ公開していない。

 章恩=(ITジャナリスト)

 

(NIKKEI TECH)

2024. 4.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00106/

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *