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Blizzard Entertainmentの大人気オンラインゲーム、Diablo IIIが2012年5月15日、全世界で発売された。保存版パッケージがソウル市内で先行発売された14日、イベント会場には5000人近くが集まり、徹夜する人まで出た。15日午前9時から始まったネット販売では、限定版パッケージを購入するためユーザーが殺到し、SKテレコムが運営するネットショッピングサイト「11番街」のサーバーがダウンして、サイトそのものにアクセスできなくなるという事故まであった。
限定版パッケージを購入すると、ゲームをインストールするためのUSBメモリーのほか、ゲーム制作過程を記録したDVDとゲームの中で使える特別アイテムが特典として付く。中古サイトでは早速限定版が取引されていて、定価9万9000ウォン(約6700円)のところ、プレミアムがついて3倍ほどの値段が付いている。一般パッケージ・デジタル版は5万5000ウォン(約3700円)で販売されている。
Diabloは、パソコンにゲームをインストールしてから、ネットワークを経由して戦うオンラインゲームの一種で、一度はまるとほかのことは何もできないほど中毒性が高いことから、韓国では「悪魔のゲーム」、「大学入試ブレーカー(受験勉強ができない)」、「タイムワープゲーム(夢中になってしまい、気が付くといつの間にか2~3日が過ぎている)」とまで呼ばれている。
Diablo IIIの初期画面を立ち上げたパソコンの前にカップラーメンとお菓子を山積みしたネットカフェでの写真を掲載し、「いよいよスタート!」と引きこもりになることを宣言するユーザーが続々登場。パソコンの仕様が古すぎてDiablo IIIをインストールできず、プレイするためだけに最新のパソコンに買い替えるユーザーも少なくない。自作向けパソコンやパソコンの部品を扱うネットショップの売り上げが大幅に上昇しているとして、韓国のマスコミは「Diabloシンドローム」というタイトルで連日報道している。
男性アイドルの間でもDiablo IIIは話題のようだ。ライバルといわれるグループに同ゲームの保存版パッケージをプレゼントし、「これで彼らは活動休止!」と喜びのつぶやきを残したアイドルもいれば、同ゲームの保存版を買ってほしいとファンにねだったとして問題になった男性アイドルもいた。
あまりの人気のためサーバーが混雑し、ゲームをインストールしたのにログインできずゲームをプレイできないユーザーも増えている。パソコンにインストールして楽しむパッケージゲームであるが、専用のサイトからログインをしないと始められないネットワークゲームでもあるため、サーバーが混雑すると、ゲームをインストールしていてもプレイできないのだ。Blizzardはこのことでユーザーに謝罪したが、ユーザーが最も集まる夜10時以降になるとなかなかログインできない現象は、ゲーム発売から1週間経った22日時点まで続いている。
スマートフォンの普及により売り上げが急落していたPCバン(ネットカフェ)もDiablo IIIのおかげで生き返った。PCバンでプレイされるオンラインゲームのユーザー数やプレイ時間を調査する「ゲームトリックス」の発表によると、5月17日時点で、Diablo IIIのPCバンでのプレイ時間が1日190万時間を突破。数あるオンラインゲームの中でも桁違いの断トツだった。同時アクセス者数は約8万人で、最高記録は14万1792人。発売後初めての週末(5月19~20日)2日間でPCバンプレイ時間が940万時間にも上った。これは、この5年間で最高という。
Diablo IIIは、19歳以上が利用できるゲームに分類される。しかし中高校生にも人気が高く、中高生がプレイするため家族の住民登録番号を盗んで年齢認証をしていることは心配である。家族とはいえ、他人の個人情報を盗用するのは犯罪であることを教える必要がある。明らかに中高生に見える青少年が成人用ゲームを利用している際には、PCバンで年齢確認をするとか、ゲーム会社も住民登録番号の盗用には厳しく対処するといった社会的責任も考えないといけないだろう。それほど韓国ではDiablo IIIがすごいことになっている。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年5月25日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120524/1050745/