「韓国スマートヘルスケア最前線」「肥満率3割」のペット向けヘルスケアに脚光 [2015年07月24日]

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韓国の大手通信キャリアが2015年に入って力を入れている事業の1つに、「伴侶動物(ペット)」市場の開拓がある。各社が提供するIPTV(インターネット経由で視聴する有料放送)には、ペット専用のテレビチャンネルやラジオチャンネルがある。家族が出かけ、ペットだけが家に残されることが多い韓国の事情に合わせて、“ペットのストレスを軽減する”内容となっている。2015年3月には、韓国Samsung Electronics社が英国のドッグショーで犬のための“スマートホーム”として、約370万円の「ドリームドッグハウス」を出展して話題を集めた(ITproの関連記事)。

 韓国では日本とは異なり、全国どのマンションでも、犬や猫などのペットを飼うことが基本的に許されている。少子化の影響で、ペットを子供代わりに大事に育てる人も増加中だ。

 韓国愛犬協会の統計によれば、犬や猫を飼っている世帯は2014年末時点で全世帯の約20%。そしてペットを飼っている人の多くにとって、悩みの種はペットの「肥満」であるという。

 ソウルに住んでいると、犬を散歩させている人をあまり見かけない。一戸建てよりもマンションが多いため、マンションの団地内をちょっと歩かせるぐらいだ。月に何回かは犬のためのプールやテーマパークに連れて行って遊ばせる飼い主もいるが、韓国愛犬協会によれば、韓国のペット(犬・猫)の3割は肥満で健康管理が必要な状態という。


ペットの健康を管理


GPSにWiFi、測位モジュールまで

 こうした背景から、韓国の通信キャリアはペットのヘルスケア市場に着目している。例えば業界最大手のSK Telecom社は、ペットを肥満にさせないためのヘルスケアサービスとして、「Tペット」を提供中だ。

 これまでも、首輪にGPS機能を搭載し、ペットの位置情報や散歩経路を記録するサービスはいくつか存在した。これに対しTペットは、GPSにWiFi、携帯電話基地局の測位モジュールの3つを組み合わせ、位置と移動経路をより詳細に表示・把握できる。GPSに動作認識センサーと通信モジュール機能を加えたデバイス(3.7cm×3.7cm、18g)を首輪に付け、アプリケーションと連動させて使う。

 インターネットにつながるため、ペットと飼い主が互いに離れていても、ペットの状態や運動した時間、消費カロリー、睡眠時間などの行動パターンを1日中チェック可能だ。そして、もっと運動させるべきか休ませるべきか、この時期にペットの健康管理で気を付けることは何か、といったことをアドバイスしてもらえる。ペットの動きや運動量はすべてアプリケーションに自動で記録される。ペットの運動データを蓄積することで、アドバイスの精度はさらに高まっていく


留守番中のペットを家族の声で安心させる

 Tペットで利用するデバイスは、欧米のペットヘルスケアサービスが提供するデバイスよりも小さく軽いため、小型犬にも利用できる。防水機能を備えており、デバイスを付けたままペットが雨などに濡れても大丈夫だ。1回の充電で約36時間の連続使用が可能。バッテリー残量に応じて飼い主のスマートフォンにメッセージを送信する。

 このデバイスはスピーカーも内蔵しており、家族の声を録音してアプリケーションから送信すると、首輪から声が聞こえる仕組みとなっている。ペットだけを家に残して外出した時や、ペットが迷子になってしまった時などに、家族の声を聞かせて安心させる効果があるという。音声は1回20秒まで録音でき、4件まで登録できる。

 デバイス価格は約7000円で、毎月約650円のペット専用インターネット料金プランへの加入が必要だ。加入した飼い主は、SK Telecom社のグループ会社が運営するインターネットショッピングモールで、ペットフードやペット用品を割引で購入できる。

 Tペットを紹介する韓国メディアの記事のコメント欄には、「ペットまでインターネットに加入させてヘルスケアをする時代が来るとは!」といった、驚きの声が数多く書き込まれている。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 -Original column

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