「韓国スマートヘルスケア最前線」スマートウェア市場が幕開け、遊び心が受け大ヒット [2015年06月15日]

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すべてのモノがインターネットにつながるIoT(internet of things)がもてはやされる中、韓国では洋服とICTを融合した“スマートウェア”への期待が高まっている。先陣を切ったのは、Samsungグループでファッション事業を担当する第一毛織。キャリア大手のKTと協力して2014年9月、韓国初のスマートウェアをうたう「スマートスーツ2.0」をスーツブランド「ROGATIS」から発売した。

 スマートスーツ2.0は発売以来、韓国で大きな話題を呼び、同時期に最もよく売れたスーツの1つになった。“スマート”に込めた意味は、スマートに着こなせるということ、そしてこのスーツとの連携によってスマートフォンをより便利に使えるということだ。スーツ生地そのものはストレッチ素材でしわをくみにくく、肩にかかる圧力も少ないため、着ていると疲れるといったことはない。

内ポケットとスマホが連携

 スマートスーツ2.0は、ジャケットの内ポケットにNFCタグを内蔵している。ポケットにスマートフォンを収めると自動的にマナーモードに切り替わり、ポケットから出すとロックが解除されてすぐに利用可能となる。「Un-Lock」と呼ぶ機能だ。このほか、スマートフォンでポケットにタッチすると画面に自分の名刺情報が現れてメールやSMSで相手に送信できる「名刺機能」、スマートフォンにイヤホンを取り付けてポケットに入れると自動的に音楽再生が始まる「音楽機能」などがある。

 NFCタグは水や高熱にも耐えられるように作られており、スーツを洗濯したりドライクリーニングに出したりしても使い続けることが可能だ。NFCタグを内ポケットから取り外すこともできる。

 購入者専用のアプリも用意した。このアプリを使えば、NFCタグの設定を変えたり、Samsungグループのシンクタンクであるサムスン経済研究所が提供するeラーニング動画を無料で見たりすることができる。Samsung Musicが提供する音楽を聴いたり、生年月日から算出したバイオリズム、歩数や消費カロリーを計算できる活動量計を無料で利用したりすることも可能だ。


SamsungグループのアパレルメーカーROGATISが2014年秋に発売したNFCタグ付きスマートウェア「スマートスーツ2.0」。2015年秋には「スマートスーツ3.0」を発売する予定だ。(写真提供:ROGATIS)


遭難時にもこれで生き延びる!

 ROGATISは、アップグレード版となる「スマートスーツ3.0」の発売を2015年秋に予定している。モバイル決済や交通利用、ビルの出入り管理といった、オフィスライフをスマートにする機能を取り込むことを検討しているという。

 省エネのためにカジュアルな服装でも問題視しない企業は韓国でも増えており、結果としてスーツを着る人が減っている。ROGATISブランドのスーツの売り上げも最近は減少傾向だったが、今回のスマートスーツは遊び心があり着ていて楽しいと評判を呼び、前年比30%の売り上げ増の起爆剤となった。

 スマートウェアに取り組むのはROGATISだけではない。韓国のアウトドアファッションブランドであるコーロンスポーツも2015年2月、ファッションとITを融合したスマートウェア「ライフテックジャケット」を発売した。

 このジャケットは、スマートフォン充電機能に加えて、なんと風力発電装置を使った発熱機能(35~50度の範囲で発熱できる)を備える。遭難した際にLEDで救助要請信号を放ったり、スマートフォンに事前登録した番号に写真やGPSの位置情報を送信したりする機能もある。ジャケットとスマートフォンが連動して写真と動画を撮り続ける「ブラックボックス」機能も搭載した。いずれも、遭難したり災害が発生したりした際に、着用者の生存能力を高める機能だ。


サムスン電子が「脳卒中予測帽子」

 発売元のコーロンスポーツはスマートウェアの開発にあたり、どのような機能がユーザーに喜ばれるかを分析。そのためのビッグデータ解析チームを2013年に立ち上げたという。

 韓国のスマートウェアは、実証実験段階のものが多く、市販にこぎつけたのはまだごく少数。市場としては立ち上がったばかりだ。ROGATISのスマートスーツ以外は多くの場合、機能の割には値段が高く、とりあえずチャレンジしてみたというノリのものも少なくない。

 それでもスマートウェアに対する企業の関心は非常に高く、例えばSamsung Electronics社は「脳卒中を予測してくれる帽子」を社内公募で開発中だ。韓国でも2015年のキーワードはIoTで決まり。スマートウェア市場にも大きな変化がありそうだ。


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 -Original column

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