「韓国スマートヘルスケア最前線」ビッグデータ分析に基づく個人健康管理やIoTによる「ヘルスケア実証団地」、韓国政府が支援 [2015年02月10日]

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韓国の経済産業省に当たる産業通商資源部(省)は2015年1月29日、「スマートヘルスケア産業活性化方案」を発表した。主な内容は、国民の健康管理サービスを強化し、スマートヘルスケア産業の輸出を拡大するために、政府予算150億ウォンと官民ファンド150億ウォン、計300億ウォン(約33億円)を支援するというもの。

 韓国政府が描くスマートヘルスケアとは、製造と通信、医療、サービスを相互に連携させ、いつでも手軽に個人の健康管理ができる環境を指す。そこに向けて、「需要連携型スマートヘルスケアシステム開発」「スマートヘルスケア企業の国際競争力確保」「スマートヘルスケア産業基盤作り」の3つを推進する。

オーダーメード型の健康管理を実現へ

 このうち、「需要連携型スマートヘルスケアシステム開発」とは、企業が病院や患者個人のニーズに合わせてシステムを開発できるようにすることである。新設した「Uヘルス総合支援センター」を中心に、研究開発段階から病院と企業、認許可機関、研究機関が連携し、実生活に役立つシステムを開発できる研究環境の構築に2015年に60億ウォン(約6.6億円)を投じる。

 さらに、これまでは病院ごとに保管していた個人の健康・医療情報を統合し、ビッグデータ分析を通じて個人に最適化した健康管理サービスを提供する「個人オーダーメード健康管理システム」を開発する。ここに向けて、2015~2017年に毎年30億ウォン(約3.3億円)ずつ、計90億ウォン(約9.9億円)を投資する。慢性疾患患者や手術後に退院した患者のケアだけでなく、健康を維持するための健康管理にまで段階的にサービスの範囲を広げる計画だ。

「ヘルスケア産業協会」を発足

 「スマートヘルスケア企業の国際競争力確保」と「スマートヘルスケア産業基盤作り」に関しては、ベンチャーや中小企業への投資促進、実績確保のためのテストベッド事業拡大、海外進出のためのサービスと機器認証の獲得、新事業部門の国際標準への先制対応、産学連携などを支援する。官民共同で新産業に投資する1350億ウォン(約148億円)規模の「新成長動力ファンド」から、150億ウォン(約16億円)をヘルスケア関連プロジェクトに投資する。

 さらに、ヘルスケア業界のネットワーク作りに向けて、ICTとサービス、医療をつなげる「ヘルスケア産業協会」を2015年中に発足させる。同協会は、スマートヘルスケア関連機器とプラットフォームの標準化、国際競争力強化のための活動を行う。

 産業通商資源部は同日、スマートヘルスケア産業活性化方案と並ぶ新たな投資案件として、「バイオ産業エンジンプロジェクト」も発表した。スマートヘルスケアとバイオを連携し、個人向けの携帯型生体情報測定装置と健康管理システムを開発するというものである。

健康情報を収集・保存・分析するプラットフォームを構築

 通信政策を担う未来創造科学部(省)もこの日、「ソフトウエア中心のヘルスケア産業育成方案」を公開し、75億ウォン(約8.2億円)を投資すると発表した。これは総額7052億ウォン(約780億円)規模のスマートシティ/スマートホーム/スマートグリッド計画につながるものである。

 未来創造科学部は2015年上期中に「需要連携型デイリーヘルスケア実証団地」を造成し、IoT(internet of things)を活用したさまざまなアイデアを試せるようにする計画。2015~2017年の3年間運営し、3つのテーマに取り組む。「健康情報を収集・保存・分析するヘルスケアプラットフォーム構築」「中小企業の製品開発環境造成」「病院連携実証サービス提供」である。この実証団地を誘致しようと全国の自治体が動いているが、韓国メディアによれば最も有力なのは、過去に大規模な慢性疾患ヘルスケア実証実験を行った実績がある大邱市だという。

 韓国政府はこの他にも、ヘルスケア関連のベンチャースタートアップ支援やアイデア公募など、医療とICTの融合を後押しする政策を毎週のように発表している。この分野では2015年もまた大きな変化がありそうだ。


By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」

日経デジタルヘルス
 -Original column

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