「韓国スマートヘルスケア最前線」CESで目立った「ウエアラブル+ヘルスケア」、LG社も本格的に市場参入へ [2014年01月23]

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2014年1月7~10日に米国ラスベガスで開催された「2014 International CES」では、「フィットネステックゾーン」「ヘルスケアゾーン」が新設され、中国のZTE社やソニーのウエアラブル端末も注目を浴びた。これまでのウエアラブル端末は「こういうものも作れる」というメーカーの技術を宣伝するための展示のように見えたが、2014年はビジネスとして「ウエアラブル+ヘルスケア」「ウエアラブル+フィットネス」に一歩踏み出したメーカーが多い印象を受けた。

目立っていたLG社


 中でも目立っていたのが、韓国LG Electronics社だ。同社は、ヘルスケア機能を備えるウエアラブル端末「ライフバンドタッチ(lifeband touch)」と「心拍イヤホン(heart rate earphone)」を公開した。LG社はCESの会場で実施したプレス向け発表会で、2014年上半期中にライフバンドタッチを発売し、本格的にモバイルヘルスケア市場に進出すると宣言した。

 腕時計型のライフバンドタッチは、身体の活動量を測定するもので、歩数や歩いた距離などからカロリー消費量を計算して表示する。測定した情報は、LG社が提供するフィットネスアプリだけではなく、人気の高い他のダイエットアプリやフィットネスアプリと連動して使えるようにした。

 LG電子のライフバンドタッチはiOSとAndroid両方のスマートフォンと連動する。この点では、自社のスマートフォンにしか連動しない韓国Samsung Electronics社の腕時計型端末「GALAXY Gear」と差異化を図った。


 デザイン面の工夫も施している。柔らかく曲がるので、手首の骨に当たって痛かったりサイズが窮屈で長時間装着しているのが苦痛だったりという不便を可能な限り少なくしている。生活防水機能を備えており、手首の太さに応じてサイズも3種類用意した。有機ELディスプレーの画面をタッチすると、スマートフォンと連動して着信やスマートフォンに保存した音楽を再生する機能もある。

イヤホンで心拍測定

 一方、心拍イヤホンは、イヤホンを利用して耳の血流量から心拍数を測るというもの。音楽を聴きながら測定できる。運動効果を高めるためには一定の心拍数を維持した方が良いため、自分がちゃんと運動効果を出せるほど動いているかをチェックするためにはとても便利な機能といえる。

 心拍数を測定するイヤホンは、韓国の中小企業であるiriver社が2013年のCESで公開し、LG社よりも一足先に販売している。「iriverOn」という名前の製品で、心拍数の測定と同時にGPSを用いて歩いた距離や経路をスマートフォンに記録できるものだ。Bluetooth搭載イヤホンなので、電話の着信機能もある。運動記録用のアプリケーション(以下、アプリ)はFacebookのIDでログインするようになっているので、Facebookの友達同士で運動記録を共有し、励まし合うこともできる。


Samsung社の自転車連動端末にも注目

 Samsung Electronics社は、米国の自転車メーカーであるTrek社と提携し、自転車のペダルを漕ぐと「GALAXY NOTE3」を充電できるサービスを展示した。GALAXY NOTE3をTrek社の自転車のハンドルに装着すると、スマートフォンと自転車に取り付けたセンサーが連動して、自転車に乗って移動した距離、移動速度などをGALAXY NOTE3の画面から確認できるので、サイクリングがより楽しくなるという機能も展示した。この機能は、GALAXY Gearとも連動する。

 中小家電メーカーの韓国Moneual社は、ウエルネス分野のウエアラブル端末を展示した。「Babble」というベビーコミュニケーター端末で、耳が不自由な母親に赤ちゃんの泣き声を伝える。赤ちゃんの近くに丸い人形のような本体を置くと、赤ちゃんの声の音域を分析して、ぐずっているのか、楽しそうにしているのかといった状態を母親用の腕時計型端末に振動で伝える。

産業拡大を支援する韓国政府

 韓国保健福祉部(部は省にあたる)が2013年末に公開した「OECD Health at Glance 2013解説」によると、韓国の一人当たり医療費支出の増加率は2000~2009年の間で年平均9.3%とOECD平均(4.1%)の2倍に当たり、OECD加盟国の中で最も大きかった。過度な医療費負担により貧困層に転落した世帯の割合は0.36%と、OECD加盟国の中で5番目に高いという。韓国では家計に占める医療費の負担が徐々に大きくなっているため、健康を維持し、病気を予防できるようサポートするモバイルヘルスケアが益々注目を浴びるのは間違いないだろう。

 韓国政府は2013年医療法改定による医者と患者間の遠隔診療許可に続き、ヘルスケア用ウエアラブル端末の標準制定、ヘルスケア用バイオセンサー開発、モバイルヘルスケアのための医療情報システム改良、医療情報のビッグデータ分析などを支援している。2014年も韓国政府は世界に先駆け規制を緩和し、韓国の企業が多様なビジネスモデルでヘルスケア市場をリードできるようにするつもりだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年1月23
-Original column

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