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今、日本で大きな反響を呼んでいる9人組ガールズグループ「NiziU」。ソニーミュージックと韓国のJYPエンターテインメントとの共同オーディション番組『Nizi Project』からデビューした同グループだが、成功に導いたプロデューサーのJ.Y.Parkにも注目が集まっている。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。
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今日本で大人気の「NiziU」は韓国でも大きな話題となっている。6月30日にリリースされたNiziUのデジタルミニアルバム『Make you happy』の韓国版MVが7月15日公開されると、たった半日で200万回再生を記録。6月29日に1万9150ウォンだったJYPエンターテインメントの株価は7月20日時点で3万2450ウォンと1.5倍以上上昇し、時価総額は約1兆1100億ウォンを突破した。
今年1月から始まった『Nizi Project』は、日本だけでなくJYPエンターテインメントのYouTube公式チャンネルでも公開されており、NiziUを応援する多くの韓国ファンがデビューまで見守り続けた。韓国メディアもオーディションの一部始終を報道し、「日本人中心のメンバーがK-POP式トレーニングでデビューする」という初の試みに期待が寄せられていた。
だが、韓国ファンの間では『Nizi Project』の番組編集に不満の声も上がった。「オーディション参加者よりJ.Y.Parkが主人公みたい」、「J.Y.Park本人が日本でデビューしたくてNizi Projectを企画したように見える」、「誠実さや人間力がクローズアップされすぎ」「 “J.Y.Park名言集”まで登場している」など。さまざまな反応があるなか、特に多かったのが「J.Y.Parkが日本でイメチェンに成功している」といった声だ。
というのも、私立名門の延世大学出身のJ.Y.Parkは、今でこそ作曲家、振付師、プロデューサーと活躍の幅を広げているが、もともと韓国では有名な歌手である。1994年に発表したソロデビュー曲ですぐに一躍有名になったJ.Y.Parkだが、歌で魅了する“普通の”タイプの歌手ではなかった。デビュー当時は、常にセクシーであることを追求し続けた「型破りな歌手」というイメージで活動していたのだ。
インタビューでは下着と靴下が丸見えの透明ビニールパンツ姿で登場したり、雑誌の特集でもヌード写真を公開したり、奇抜なファッションで歌ったりと、ずば抜けた歌とダンスでファンを魅了しつつも、音楽活動以外の面も際立っていた。韓国ではその頃のイメージが強いだけに、今回の『Nizi Project』でのJ.Y.Parkに“イメチェン感”を覚え、面白く受け止められたのだろう。
韓国では今、J.Y.Parkに関する記事が出る度にかつての「透明ビニールパンツ」写真が再掲載されている。あまりにインパクトが大きいため、J.Y.Parkの歌手時代を知らない10~20代の若年層の脳裏にも焼き付いてしまうほどである。J.Y.Parkは、2015年にバラエティー番組に出演した際、「インターネットからあの(透明ビニールパンツ)写真を削除したい…」と嘆いていた。
今はすっかり落ち着いて、K-POP界をリードするプロデューサーであり、オーガニック野菜と大量のサプリメントを欠かさない健康オタクのJ.Y.Park。その人柄も評判通りで、2020年6月に放送されたテレビ番組では、自身がプロデュースしたガールズグループ「Wonder Girls」の元メンバーが、別の事務所に移籍した後もJ.Y.Parkに仕事の相談をする様子が放送された。本人も2人の娘を持つ父親だからか、自身がデビューさせたメンバーをいつまでも心配し見守る姿は、父親そのものだった。
J.Y.Parkは歌手活動も続けている。デビュー当時から「60才になっても歌って踊りたい」と語っていた彼は、昨年12月、自身が作詞作曲した曲の中で韓国の音楽チャート1位になった曲が50曲(2019年末時点で55曲)を突破したことを記念し、「Park Jinyoung Concert No.1 X 50」を開催。3時間のステージを1人で歌って踊った。
J.Y.Parkが手掛けたガールズグループは全て成功し、プロデューサーとしての夢も着実に実現させている。日韓で愛されるNiziUのグローバルな活躍に今後も期待したい。
【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。