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現在放送中のドラマ『彼女はキレイだった』(関西テレビ/フジテレビ)。韓国の人気ドラマのリメイクで、日本版の放送が韓国でも開始されたとあって、改めて注目を集めている。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんがリポートする。
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『彼女はキレイだった』の日本リメイク版が、8月18日から韓国の有料放送チャンネルと動画配信サービスでも放送が開始された。8月6日には、原作に出演したチェ・シウォンが自身のTwitterで「かのキレ、韓国語の字幕で早く観たいです。とても楽しみ! こういうのが文化交流じゃないかな?うはは!!」と日本語でコメントし、韓国ファンが日本版に注目するきっかけにもなっている。
2015年に韓国で放送された本作は、初回の4.8%から最高18%の高視聴率を記録した大人気ドラマである。どれほど人気だったかと言えば、プロ野球の中継で9話の放映が中止になった際、視聴者からのものすごい抗議があったため、次回の10話は放送局が野球中継を断念して本作を放映したほど。2015年の作品にも関わらず、韓国では未だにケーブルテレビで再放送されているほど根強い人気で、中国、ベトナムでもリメイク版が制作された。
物語は、イケメンエリートの主人公、チ・ソンジュンと、昔は美少女だったが今はパッとしないヒロイン、キム・ヘジンの2人が再会することから始まるラブコメディ。お互いに初恋同士だったが、自信が無いヒロインは自分が初恋相手だと言い出せず、美人の親友に自分の代役を頼んでしまう。日本版もあらすじは大きく変わらないが、原作の方がコメディー要素が強く、登場人物全て個性的で、毎回笑いと胸キュンが交互にやって来る愉快なドラマだった。
韓国ドラマには、見た目はそれほど良くないがプライドが高く自信家で、何事にもめげず仕事も恋も手に入れるというヒロインがよく登場する。しかし本作のヒロイン、ファン・ジョンウム演じるへジンは、30才にもなるのにアルバイトをしながら就活中で、プライドも自信も無くドタバタともがきながらも前に進む。そのうえ、そばかす顔に爆弾が落ちたようなくせ毛、白い靴下に黒い靴というマイケル・ジャクソンのような姿は、これまでのヒロイン像とは大きく異なり、韓国では新鮮味を持って受け止められた。
また、2015年放送当時も今も韓国は就職難。「夢は正社員」と話すへジンに共感する人も多かった。家柄や学閥に加え、見た目も「競争力」と評価される韓国で、貧乏でどんなにファッションがダサくても、肌がきれいでなくても、思いやりがあって前向きに頑張る人は必ず報われる、ありのままの自分を愛してくれる人がいるというストーリーが共感(韓国では「代理満足」と言う)を呼び、特に30~40代の女性に熱烈に支持された。
さらに、韓国ドラマでは主人公の女性と三角関係になる相手役は大体意外と純情派のツンデレ御曹司イケメンと、全てを包み込む優しいイケメンのどちらかなのだが、本作でチェ・シウォンが演じたキム・シニョクは、顔を見ただけで笑ってしまうほどコミカルな存在。いたずら好きだが人を不愉快にさせないムードメーカーで、いつもへジンの味方になってくれる頼もしさがある一方で、ミステリアスな一面もあるという複雑さも持ち合わせた「図々しい変わり者イケメン」という見慣れない役どころで話題を呼んだ。
物語の後半では、韓国で「さつまいもシーン(水無しでさつまいもを食べた時のように胸が苦しい、すっきりしない)」と言われた、へジンが自分に自信が無さすぎてソンジュンに思いを打ち明けられないもどかしい場面もある。だが、その分ソンジュンの一途な面が際立ち、ソンジュン役を演じたパク・ソジュンの声と表情にファンになってしまう人も続出。当時デビュー4年目だったパク・ソジュンが、ドラマ放送後のインタビューで「人気を肌で感じている」と恥ずかしそうに語っていたのを覚えている。
就職難や見た目重視の社会を生きる女性の苦労や、女性同士の友情と絆、ありのままの姿が愛され成長していくヒロイン、どんな状況でも自分の人生の主人公は自分だというドラマのメッセージは、今見直しても共感できる。日本版のヒロイン像にもその要素が多く反映されており、韓国の原作ファンにどう受け入れられるのか楽しみである。
【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。
《 NEWSポストセブン》
2021. 9.
-Original column
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