2010年韓国でもっとも人気を集めたのは「スマートフォン」である。主婦の間でもスマートフォンは大ヒットした。
韓国のデジタル教科書
◆スマートフォンは必需品
韓国の主婦は専業主婦であっても子どものために忙しい。学校まで送り迎えは基本、子どもの教科書でママが先に勉強していつでも質問に答えられるよう準備をしておく。良い塾と家庭教師を調べるため情報収集にも時間をかける。進学校の近くに引っ越すための不動産投資にも忙しい(韓国では名門大学の進学率が高い高校の近くほど不動産が高い)。
移動しながら子どもの成長や教育に関する豆知識を集めたアプリケーションを利用したり、Twitterを経由してママ友同士で情報交換したりつぶやいたり、子どもの学校のホームページを随時確認して告知を確認したり、マンションの管理費や光熱費をインターネットバンキングから支払ったり、近所のスーパーに食材を注文して配達してもらったり、パソコンを持ち歩かなくても手軽にネットで調べものができるスマートフォンは、忙しい教育ママにはぴったりなのだ。
韓国では、スマートフォンの次はiPadのようなタブレットPCがヒットし、その次はスマートTVといって、インターネットにアクセスしたり、スマートフォンと同じくアプリケーションを利用できるTVがヒットするといわれている。家電がすべてネットにつながりスマートフォンで操作できるようになるため、電力を効率的に使用するためのスマートグリッドも2011年からは一般家庭に導入されるとも見込まれている。これからは何でも「スマート」がキーワードになるようだ。
◆教育現場の変化
「スマート」は機械だけではない。人間も「スマート」にするため、教育現場では色んな変化があった。その代表的な事例がデジタル教科書とVR教室である。韓国では2013年デジタル教科書商用化を目指し、2007年から実証実験を行っている。教科書内容をデジタル化しただけでなく、参考書、問題集、辞書、動画、アニメ、音楽といったマルチメディア資料が追加され、教科書を見ながら疑問なところはクリックするだけで無限の資料が登場して、子ども達の理解力を高められるというのがデジタル教科書である。
さらに面白い教室も登場した。VR教室といって教員が画面の中に入ってキャラクターが一緒に授業を進める「仮想現実」の教室。これを実用化するための実証実験も行われている。天気予報やニュース番組などでよく使われているもので、あるはずのない地図やキャラクター、映像の中に教員が入っていって授業をする。英語の授業だと外国人のキャラクターと先生が一緒に登場して会話しながら子ども達に話しかけたり、歴史の授業だったら昔の王様を呼び出して会話しながら歴史の勉強ができるというもの。
◆教員能力評価制度
どんなに技術や端末機能が優れているとしても、このような最先端の教科書やVR教室を活用してより楽しく授業ができる教員がいない限り、教育の情報化なんて絵に描いた餅にすぎない。韓国では90年代から教員のICT研修を義務化し、2010年からは教員能力評価制度を導入した。同僚教師と子ども、保護者も評価し参加する。
・何十年も同じ教え方をする
・ネットを活用できない
・デジタル教科書を使いこなせない
といった先生は自然と評価が落ちる。先生も定年までクビになることはないと安心してはいられない。ここまで厳しく先生にも危機意識を持ってもらわないと、教育現場は動かないのかもしれない。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
リセマム (ReseMom)
2010年12月20日
-Original column
http://resemom.jp/article/2010/12/20/779.html