「【韓国教育IT事情-3】デジタル教科書とVR教室で教育現場に変化」で紹介したように、2010年韓国はスマートフォンが大流行し、2011年には携帯電話加入者の4割はスマートフォンを使うとまで予測されているほどである。スマートフォンを使わせるため、全国各地に無線LANスポットも急増し、都市部だけでなくリゾート地や農漁村でも無線LANの電波が届くほどだ。キャリアはこぞって「うちはフリースポットをこんなに持っている」「うちのスマートフォンに加入すると、全国どこでもWi-Fiが使える」と、お互いにものすごく張り合ってCMを流している。
◆旅先でも手軽に使えるデジタル教科書
韓国のデジタル教科書はどんな端末からも使えるのが特徴である。子どもを連れて旅行に行っても、旅先でスマートフォンと無線LANを使ってデジタル教科書を読み込んで勉強し、宿題をさせられる。子どもにとっては大変な世の中になったものだ。
大学でも、これまではノートパソコンを使うモバイル・キャンパスや、携帯電話を使うものがあったが、今は全部スマートフォンに変わっている。スマートフォンで大学の講義をリアルタイムで聴けるのみならず、出欠チェックや、先生への質問など、全部がスマートフォンで行えるようになった。
日本ではすでに発売されているiPadであるが、韓国では2010年11月30日にようやく発売された。10月からサムスンのGalaxy Tab(ギャラクシー タブ)、最大手キャリアのKTからIdentity Tabという7インチのタブレットPCが発売された。持ち歩ける大きさということでiPadより小さく軽く、300万画素のカメラ、DMB(韓国のワンセグ)受信機能、音声通話機能が付いているのが特徴である。また中小メーカーからはさらに小さい5インチの学習用タブレットPCも登場した。5インチは主に高校生向けで、休み時間にも受験サイトにアクセスして講座動画を見たりして受験勉強ができるよう作られたものである。
2010年末になってようやくタブレットPCが出揃い価格競争も始まるだけに、デジタル教科書実証実験校でも、現在タッチ式ノートパソコンで行っている実験をタブレットPCに変更する計画が出始めている。
◆学習効果を見ながら徐々にデジタル化
デジタル教科書実証実験5年目を迎える2011年には小学校3~6年の国語、英語、数学と中学1年生の英語が紙教科書+CD-ROMになる。中学までは義務教育であるため無償で配布される。CD-ROMのコンテンツは、パソコンはもちろん、モバイル端末にもインストールできるように準備している。電子黒板とIP-TV、子ども用の端末を活用して授業を行い、学習効果を見ながら徐々にデジタル教科書へと切り替える計画である。重いカバンを背負わなくても済む、参考書を買わなくてもCD-ROMにあるアニメ、動画、百科事典などの付加コンテンツを活用して勉強できる、といったメリットがある。
2011年には「デジタル教科書2.0」実験も始まる。韓国政府はもっとも付加情報が多く端末の操作も要求される科学の教科書を中心に、2007年から行われているデジタル教科書をアップグレードさせるための研究である。デジタル教科書が本当に学習効果を高められるのかを研究する「教育情報化成果測定指数開発」にも着手した。
デジタル教科書というのは、ただ端末の中に教科書を入れればいいというものではない。韓国では、教育の情報化、校務の情報化等、すべて情報化して、デジタル教科書と連動させている。教科書だけではなくて、学生たちがデジタル教科書で何を入力したのかを把握し、それを全部評価して、校務のデータベース化と連動させるシステムも全部整っている。
韓国政府の教育政策は「ビジョン2015年」として、先進教育学術情報化による健康で創造的人材育成を目的としている。5大戦略目標の一つにGreen IT 基盤の新教育システム構築があげられ、学習と技術基盤の相互イノベーション、初等教育から生涯学習まで個人の成長に合わせて対応できるシステム環境構築に重点が置かれている。デジタル教科書はデジタルネイティブ世代に合わせた効果的学習ツールとして脚光を浴びているが、小学生だけでなく、生涯教育の一歩として導入したいとも考えている。
◆デジタル環境における著作権法改善方案
経済産業省にあたる知識経済部と文化庁にあたる文化体育観光部は「融合コンテンツ開発支援」として、デジタル教科書につながるマルチプラットフォーム標準電子本制作、3D教科書、仮想現実・ホログラムを使った教科書コンテンツ開発を支援している。また教科書のために著作権も改訂しようとしている。現行の著作権法では「教科書に掲載」することは著作権が免責されるが、デジタル教科書の場合、その資料を再加工して宿題をしたり、そのデータを他の学生に転送したりすることもできるので、著作権違反になる可能性がある。
「デジタル環境における著作権法改善方案」をまとめ、デジタル教科書にリンクするDBや情報の範囲をどこまでにするのかというのも決めようとしている。
韓国ではデジタル教科書導入に向けて15年もバッググラウンドのシステムを開発し、先生のスマート化を図り、省庁が力を合わせて制度を改善、中身の開発のために支援を惜しまないできた。日本のデジタル教科書はある日突然沸いて出たようなイメージがある。紙の教科書をデジタル化して子ども1人に1台パソコンを配ったからといって教育効果が高まるだろうか。デジタル教科書は教育情報化、教室情報化、校務情報化といった一連の流れの中で登場するものである。日本はデジタル教科書だけを目的にしているのではないかと、疑問に思ってしまう。今の日本の教育問題、子どものICT利活用問題、先生や学校の問題、全部を見通して政策的に進めているのか、自問してほしいものだ。
◆旅先でも手軽に使えるデジタル教科書
韓国のデジタル教科書はどんな端末からも使えるのが特徴である。子どもを連れて旅行に行っても、旅先でスマートフォンと無線LANを使ってデジタル教科書を読み込んで勉強し、宿題をさせられる。子どもにとっては大変な世の中になったものだ。
大学でも、これまではノートパソコンを使うモバイル・キャンパスや、携帯電話を使うものがあったが、今は全部スマートフォンに変わっている。スマートフォンで大学の講義をリアルタイムで聴けるのみならず、出欠チェックや、先生への質問など、全部がスマートフォンで行えるようになった。
日本ではすでに発売されているiPadであるが、韓国では2010年11月30日にようやく発売された。10月からサムスンのGalaxy Tab(ギャラクシー タブ)、最大手キャリアのKTからIdentity Tabという7インチのタブレットPCが発売された。持ち歩ける大きさということでiPadより小さく軽く、300万画素のカメラ、DMB(韓国のワンセグ)受信機能、音声通話機能が付いているのが特徴である。また中小メーカーからはさらに小さい5インチの学習用タブレットPCも登場した。5インチは主に高校生向けで、休み時間にも受験サイトにアクセスして講座動画を見たりして受験勉強ができるよう作られたものである。
2010年末になってようやくタブレットPCが出揃い価格競争も始まるだけに、デジタル教科書実証実験校でも、現在タッチ式ノートパソコンで行っている実験をタブレットPCに変更する計画が出始めている。
◆学習効果を見ながら徐々にデジタル化
デジタル教科書実証実験5年目を迎える2011年には小学校3~6年の国語、英語、数学と中学1年生の英語が紙教科書+CD-ROMになる。中学までは義務教育であるため無償で配布される。CD-ROMのコンテンツは、パソコンはもちろん、モバイル端末にもインストールできるように準備している。電子黒板とIP-TV、子ども用の端末を活用して授業を行い、学習効果を見ながら徐々にデジタル教科書へと切り替える計画である。重いカバンを背負わなくても済む、参考書を買わなくてもCD-ROMにあるアニメ、動画、百科事典などの付加コンテンツを活用して勉強できる、といったメリットがある。
2011年には「デジタル教科書2.0」実験も始まる。韓国政府はもっとも付加情報が多く端末の操作も要求される科学の教科書を中心に、2007年から行われているデジタル教科書をアップグレードさせるための研究である。デジタル教科書が本当に学習効果を高められるのかを研究する「教育情報化成果測定指数開発」にも着手した。
デジタル教科書というのは、ただ端末の中に教科書を入れればいいというものではない。韓国では、教育の情報化、校務の情報化等、すべて情報化して、デジタル教科書と連動させている。教科書だけではなくて、学生たちがデジタル教科書で何を入力したのかを把握し、それを全部評価して、校務のデータベース化と連動させるシステムも全部整っている。
韓国政府の教育政策は「ビジョン2015年」として、先進教育学術情報化による健康で創造的人材育成を目的としている。5大戦略目標の一つにGreen IT 基盤の新教育システム構築があげられ、学習と技術基盤の相互イノベーション、初等教育から生涯学習まで個人の成長に合わせて対応できるシステム環境構築に重点が置かれている。デジタル教科書はデジタルネイティブ世代に合わせた効果的学習ツールとして脚光を浴びているが、小学生だけでなく、生涯教育の一歩として導入したいとも考えている。
◆デジタル環境における著作権法改善方案
経済産業省にあたる知識経済部と文化庁にあたる文化体育観光部は「融合コンテンツ開発支援」として、デジタル教科書につながるマルチプラットフォーム標準電子本制作、3D教科書、仮想現実・ホログラムを使った教科書コンテンツ開発を支援している。また教科書のために著作権も改訂しようとしている。現行の著作権法では「教科書に掲載」することは著作権が免責されるが、デジタル教科書の場合、その資料を再加工して宿題をしたり、そのデータを他の学生に転送したりすることもできるので、著作権違反になる可能性がある。
「デジタル環境における著作権法改善方案」をまとめ、デジタル教科書にリンクするDBや情報の範囲をどこまでにするのかというのも決めようとしている。
韓国ではデジタル教科書導入に向けて15年もバッググラウンドのシステムを開発し、先生のスマート化を図り、省庁が力を合わせて制度を改善、中身の開発のために支援を惜しまないできた。日本のデジタル教科書はある日突然沸いて出たようなイメージがある。紙の教科書をデジタル化して子ども1人に1台パソコンを配ったからといって教育効果が高まるだろうか。デジタル教科書は教育情報化、教室情報化、校務情報化といった一連の流れの中で登場するものである。日本はデジタル教科書だけを目的にしているのではないかと、疑問に思ってしまう。今の日本の教育問題、子どものICT利活用問題、先生や学校の問題、全部を見通して政策的に進めているのか、自問してほしいものだ。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
リセマム (ReseMom)
2010年12月23日
-Original column
http://resemom.jp/article/2010/12/23/813.html