【e-Learning Korea】 日本のデジタル教科書の現状…格差拡大に懸念

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2012年9月12日から14日まで、ソウル市COEX展示場で開催された「e-Learning Korea 2012」。展示の中で一番「すごい!」と思ったのは、スマート教室での模擬授業だ。江原道フェンソンという、ソウルから北へ3時間ほど離れた山里にあるソウォン小学校の4年生が教室を会場に移して「科学」の模擬授業を行った。

 机の上には、サムスンのGalaxy Note 10.1と電子ペン、バーコードが描いてあるカードだけが置かれ、鉛筆もノートも、紙の教材も一切ない。先生も同じくGalaxy Note 10.1を手に持ち、電子教卓と電子黒板を駆使して授業を進めた。



 

スマート教室は未来の教室ではなく、実際にソウォン小学校で使われている端末とプログラムをそのまま会場に移動させたもの。このような環境で勉強する学校はまだ全国で7校ぐらいしかない


 
電子黒板に映っているのがARの化石。実際には何もないが、子ども達の前に巨大が化石が現れ、ぐるぐる回したり、ARの道具を使って化石を割り、骨を掘り出すことができる



 
先生からのクイズ問題。恐竜の骨を見て名前を当てる


 
自分の化石から出てきた恐竜の骨を見て、どの恐竜なのかをデジタル教科書や教育サイトを検索して調べる。その結果を電子本にまとめ、皆の前で発表する




◆ARで化石を発掘・調査

 授業は、学習目標の説明から始められた。「恐竜と化石」について勉強する時間だという。子どもたちは自分のタブレット端末を使って、「ARで現れた化石をARの道具を使って掘り」、その化石から出てきた骨を見て「デジタル教科書と教育サイトを検索し、どの恐竜の骨なのかを調べ」、「3D電子本にまとめて皆の前で発表する」という、小学校4年生とは思えない、高度な授業だった。

 小さい手で、ピアノを弾くようにキーパッドで文字を入力し、自分がARで発掘した恐竜の化石がどの恐竜のものなのか、アニメや写真を編集して電子本を作り、それをクラスの教育クラウドに保存、先生のタブレットからファイルを呼び出して電子黒板に送信し、皆の前で発表する。作成した資料は、クラウドにアクセスするだけでいつでもどこでもどの端末からでも利用できる。次の授業では、皆が作った電子本を組み合わせて、仮想の恐竜博物館を作るという。

 子どもたちがすべて自分の手で作ったという電子本は、子どもらしいアイデアで溢れていた。友達が飼っているイグアナの写真と、デジタル教科書の恐竜の写真を比較して、恐竜の特徴をわかりやすく説明する子もいた。小学生のプレゼンのアイデアに驚いた。

◆過疎地でも平等な教育機会を実現

 ソウォン小学校は、4年生が6人、全校児童36人程度という小さい学校だ。隣の学校まで車で2時間かかるほどの過疎地である。そのために、塾に行きたくても行けない、参考書を買いたくても市内まで買いに行くのが大変、という環境の中で、平等な教育機会を実現するためにスマート教室が導入された。タブレットとデジタル教科書さえあれば豊富な資料を使うことができ、一人で勉強しても十分な学習効果をあげられるという、実証実験を行っている。

 ソウォン小学校は児童の人数が少ないため、先生が自律的に教育課程を調整できるイノベーション学校にも指定されている。紙の教科書に縛られることなく、先生は電子黒板、タブレット、3DやAR教材を使って、4年生が1年間に学ぶべき内容を教えればよい。学校教育に対する発想の転換が「スマート教育」を支えているのかもしれない。

◆テレビチャットで他校と交流

 ソウォン小学校の子どもたちは、隣の学校の子どもたちに会えるチャンスがなかなかないので、教室にある電子黒板とタブレットを使ったテレビチャットで、他校と交流しているのだそうだ。先日は2つの学校をネットでつなぎ、セミナーのようにそれぞれの学校の子どもたちが調べた宿題を発表し、お互いにテレビチャットで質疑応答をする授業を行ったという。

 模擬授業を終えた子どもたちに「タブレットで授業するのは難しくない?」と聞いてみた。すると全員、「このおばさん、何でそんなこと聞くのかな?」と首をかしげて笑っている。「これのどこが難しいのか、その質問が理解できない!」という表情だ。「紙の教科書に比べると使い方が複雑なので、慣れるまでに時間がかかるのではないか」というのは大人の勝手な思い込みに過ぎなかったようだ。

 ソウォン小学校では、端末を配る前に、子どもたちに端末とデジタル教科書の使い方を教えたが、直観的に使い方がわかるため、まったく問題がなかったという。タブレットを使った授業は「3DやARの資料をたくさん使うからすごく楽しい!」「全科目タブレットで授業すればいいのに!」と皆おおはしゃぎだ。しかし中には、「模擬授業の練習のために先週ずっとタブレットで科学の授業しかしていないから、ほかの勉強もしたい」と正直に不満をもらす子もいた。

◆自宅のPCでクラウドにアクセス

 授業用タブレットは学校に置いたまま使い、家には持って帰れないのだとか。自宅では自分のパソコンを使って、クラウドに保存したファイルをダウンロードして宿題をし、親のスマートフォンを使っているという。4年生6人の中で自分のスマートフォンを持っている子は1人だけだったが、パソコンは全員、自宅に1台以上持っていた。

 このほか、eラーニングの授業だけで単位がもらえ学士号がとれるサイバー大学、先生の動きを追いかけるカメラを使い自動的にeラーニング講座を録画してくれるシステム、紙の教材を簡単に3Dに変えられるツール、国家英語試験(韓国は2016年の受験からセンター試験の英語科目が国家英語能力評価試験に変わり、読む、書く、聞く、話すの4つの力を見る。現在は英語で話す試験は行っていない)対策として、英語を話すと、ネイティブの発音との違いを比較し、直してくれるタブレットとプログラムも面白かった。手間ひまかけずに、よりスマートに効果的に教育できる技術もたくさん展示されていた。

◆重要なのは先生のやる気

 日本では教育現場でのICT活用がゆっくり進んでいるように見えるが、韓国は何でもパリパリ(早く早く)精神で突撃するので、取材する方も大変だ。しかし、展示会で出会った学校の先生や電子黒板メーカーの担当者は、皆同じことを強調した。

「電子黒板やタブレット端末といったものは、あくまでもよりよい教育をするためのツールにすぎない。重要なのは先生のやる気です。先生が変わらないと子どもも変わりません。先生がよりスマートに教育したいと意欲的に端末を導入する学校は、設備が最新のものでなくても、子どもたちの好奇心、集中力を高める授業をしています。ICT機材や端末を導入することがスマート教育の目的になってはいけません」

 そうなのか。それで展示会に現役の先生たちもたくさん視察に来ていたのか(胸のカードに学校名と教師と書いてあった)。技術と端末を展示する展示会で、韓国の先生たちの熱意と意欲までも見ることができたe-Learning Korea 2012。来年もリセマムで紹介する予定だ。

《趙 章恩》


2012年9月21日
original link :
http://resemom.jp/article/2012/09/21/9964.html

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