ある風俗店が摘発された理由 [2007年3月6日]

先日、韓国の新聞は一斉に日本のイメクラを真似た風俗サービスの取り締まりに関する記事を掲載した。この記事を読んでいてすごい!と思ったことがある。それは、この店が見つかっただけで年間190億ウォンの売上(日本円約24億円)をあげていたとか、弁護士・医者・教授・軍人など10回以上この店を利用した常連100人も「性売買処罰法」により不拘束立件されたことではなく、この店が取り締りの対象になったきっかけはポータルサイトの掲示板やブログに掲載された「体験談」だったということだ。この体験談を見てやってきた客も多かったらしい。性を買うのも処罰の対象なので「接待のために入り口まで行っただけ」と主張していた人も、ブログが証拠となり立件されたという話まであり、思わず笑ってしまった。

直接会う前に相手のSNSやブログをチェック


 日本でもいずれそうなると思うが、韓国では合コンや面接の前、その人のSNSやブログをチェックするのが当たり前のようになっている(韓国最大SNSのCyworldは名前と生まれた年度が分ればその人のHOMPY(ブログ機能に加えて、掲示板や画像公開機能などがついた個人用ホームページ管理システム)を検索できる)。そのため、ネット上にはオフラインとは違うもう一つの自分を作り上げる人が増えているが、まだ率直に書く人もいるんだな~と感心してしまった。


 自由に自分のことを書き込める日記のようなものがブログのはずなのに、人の目を気にしないといけないのは悲しいが、率直に書きすぎるのも考えもの。欧米でもブログの書き込みが発端となり解雇されたり訴訟になったりするが、韓国も例外ではない。ただ、風俗体験談を書き込み、その結果、法律違反で立件されつというのは世界でも珍しい事件だろう。


 国民総背番号制度が導入されているいうこともあるが、IT強国らしく、韓国では犯罪捜査の基本としてインターネットのモニタリングが行われる。特に重要なカギになるのはIP追跡で、容疑者の名義で会員登録されたウェブメール、オンラインゲームなどのIDを確認し、いつどこでアクセスしたのかIPアドレスを追跡し居場所を突き止めることが多い。


整形してもネットからの追跡で「御用」のケースも


 20~30代の容疑者はよくPCバン(日本でいうところのインターネットカフェのようなスペース)でチャットやゲームの途中、IPアドレスを追跡され逮捕されたりもする。警察は容疑者がよく利用するサイトを調べ、その会社に「通信事実確認許可書」を提出し、資料を提出してもらっている。2006年も完全犯罪を実現しようと顔を別人に変える整形手術までした詐欺容疑者がIP追跡で捕まった。容疑者の住民登録番号で会員登録されたIDのIPアドレス追跡で居場所を突き止め、本人確認のため住民登録票を作る際に捺印した指紋と照会して逮捕できたという事件だった。


 一時期、オンランショッピングやオークションの代金騙し取りやオンラインゲームでのアイテムハッキングなど、ネットは犯罪の溜まり場のようなイメージが強かったのが確かだ。自殺コミュニティーが次々見つかり、ホームレスの名義で加入した携帯電話と通帳を犯罪目的で売買したり、「一緒に強盗やりませんか」というコミュニティーまで登場したりして人々を呆れさせた。


 ところが、同時に犯罪を捜査する刑事ごっこができるコミュニティーも登場して、実際に、犯罪捜査の役立っているケースもある。詐欺にあった被害者達が警察の捜査を待ちきれず、コミュニティーを開設して情報を集め犯人を追いかけることもよくある。


 ネットに限らず、新しく登場した技術に関しては、負の側面が大きく報じられるのはどの国も同じだろう。でも、実際には、プラスの側面も多い。そうでなければ、こんなに普及するはずもない。犯罪捜査を巡るネットの活用も、その一例だといえるだろう。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070306/263946/

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