この冬、韓国携帯電話は愛称と素材で勝負 [2006年12月12日]

「チョコレートはいかがですか?」「それよりは光り物でシャインがいいかな」…

 これはデパ地下ではなく、韓国携帯ショップでの会話。日本だと「903i出ました!」とかW43、W44など品番で紹介するのが当たり前だが、韓国の携帯は愛称で呼ばれるのが人気の証といわれている。


 去年までは広告モデルの名前をとって「ジョンジヒョンフォン」、「クォンサンウフォン」などとユーザーの間で自然に覚えやすい愛称がつけられたが、今年の春モトローラの「レイザーフォン」が大当たりしてからは、メーカー側が発売段階から「チョコレート」「マジックシルバー」「ウルトラエディッション」「シャイン」など端末の特徴をとった愛称を打ち出している。もちろんそれぞれ品番もあり、サムスン電子のマジックシルバーはSCH-B500、LG電子のチョコレートはKV-5900だが、誰も「KV-5900ください」とは言わない。


 業界では「愛称がある携帯ほどよく売れる」という説があり、何とか記憶に残る名前をつけなくてはと悩んでいる。それもそのはず。日本と違い韓国は年俸制が定着し、ボーナスという存在は記憶の彼方へ消えてしまったため、時期に関係なく年中新規端末が発売される。代理店で埃をかぶったまま消えていく端末も少なくない。


LGの携帯は「チョコレート」でブレイク


 愛称マーケティングで最も成功したのはLG電子の「チョコレートフォン」。板チョコのように薄くてかわいい、プレゼントしたい携帯と女性社員らが話しているのを偶然聞いた担当者がこのような名前をつけたそうだ。チョコといってもこげ茶色ではなく、ブラック、ショッキングピンク、ホワイト、ワインなど豊富なカラーバリエーション、アメリカ市場向けにグリーンやチェリーなどのカラーも発売している。キーパットの文字が赤なのがおしゃれ。チョコレートフォンは世界70ヶ国で販売されていて、海外でもマスコミが大絶賛、今年600万台販売を達成した。サムスン電子に押され気味だったLGの携帯は黒字転換、一気に世界の高級ブランドとして認知されるようになった。








LG電子のチョコレートフォン「KV-5900」



 1000台限定発売されたチョコレートフォン2限定版は14金で縁取られ、LCDの下にも14金のストライプがある豪華なモデルで話題になった。LGは後続モデルとして「シャイン」を発売し、サムスン電子のマジックシルバー、モトローラのクレイザーに対抗している。







LG電子のチョコレートフォンII「LG-SV600」



鏡のようなメタル素材がブームに


 韓国で最も携帯が売れる卒業・入学シーズンをターゲットにしたこの冬の新機種は「輝く、鏡のようなメタル素材」がポイントとなっている。「シャイン」も「マジックシルバー」もまさに名前からしてぎらぎら光っている。







サムスン電子のマジックシルバー「SCH-B500」








LG電子のシャイン「LG-LV4200」


 サムスン電子はマグネシュームにニッケル、クロムなどのメタルメッキ素材、200万画素カメラ、衛星DMB(衛星モバイル放送)対応で値段は約70万ウォン(約9万円)、LG電子は韓国で初めてステインレススティール素材を採用し、後面はどうみてもデジカメにしか見えない。200万画素カメラ、1GB音楽保存メモリー付きで値段は約60万ウォン(約7万6千円)とプレミアム路線だ。どっちもスリム&スライドで1日平均1200~1500台は売れている。


 「スリムでスライド式だとプラスチックでは弱すぎて折れそうで不安」というユーザーの意見から、いずれも丈夫なメタルを導入されることになった。サムスンとLGは「うちの素材の方が丈夫で優秀」と争う。サムスンが「マグネシュームの方がスティールより軽くノートパソコンにも使われる高級素材」といえば、LGは「スティールの方が加工性に優れている。マグネシュームメッキは時間が経つと剥がれる」と反撃。それを受けてサムスンは「マグネシュームこそ超薄型携帯を可能にした革新的要素。自動車業界でも高級素材としてマグネシュームが脚光を浴びている」と止めを刺す。


 モトローラも世界で7000万台売れ、韓国でもピンクの携帯がバカ売れした「レイザー」の後続として「クレイザー」を発売した。光沢のあるガラス素材で、レイザーより小さくメタルっぽさを強調している。TV広告ではクレイザーを持ち歩きながら音楽を聴く主人公の行く先々、携帯に光が反射して通行人がまぶしくて転んだり目をそむけたり、えらい迷惑な携帯にしか見えないが、とにかく光ってるよ~というコンセプトを強調している。


 パンテックもSKYのブランドのメタル素材の新機種を発売する。薄型折りたたみで地上波DMB(ワンセグ)を搭載した。韓国で始めてスライド式携帯を発売しメガヒットとなったSKYはキャリアSKテレコムの子会社SKテレテックのブランドだったが、パンテックに買収された。海外輸出に力を入れてきたパンテックはメタルで内需市場の巻き返しを狙う。


 そのほか、韓国の携帯電話では、薄さの競争も激化している。これについては次回、ご紹介しよう。


※写真の出典は各社ホームページ


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061211/256604/

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