2月3日、韓国の通信政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は日本の省に当たる)は、サイバーテロ防止のための討論会を開催し、「大統領官邸を中心にサイバーテロ対策室(コントロールタワー)を新設する」、「情報セキュリティ予算は、現在の5倍以上に増額する方針である」、といった内容を発表した。
未来創造科学部の情報セキュリティ予算は、年間2500ウォン(約270億円)。これを1兆2500億ウォン(約1350億円)以上に増額し、サイバーテロに備えるべきだと主張している。サイバーテロとは、政府機関や国家重要施設のハッキングやサイトにアクセスできなくするDDoS攻撃をはじめ、インターネット回線を乗っ取りシステムの誤作動を起こして事故を誘発する行為、テロを扇動する書き込みを繰り返す行為、などを指す。
韓国が、サイバーテロを初めとする「テロ」に敏感になっている背景には、イスラム国の存在がある。
イスラム国武装勢力による日本人人質殺害は、韓国にも大きな衝撃を与えた。日本と同じく米国の同盟である韓国も、いつテロのターゲットになるか分からないという不安が広がった。日本人人質事件が発生する直前の1月初めには、18歳の韓国人青年がトルコで行方不明になった。この青年はシリアに密入国、イスラム国武装勢力に加担した可能性がある、というニュースが流れた。
韓国警察の捜査によると、18歳の青年はSNS経由でイスラム国関係者と接触していたという。青年のパソコンからは、イスラム国の旗や武装勢力の隊員と見られる写真と動画が多数見つかった。この青年とイスラム国の接点は、Twitterで始まった。2014年10月には、Twitterでイスラム国武装勢力の組織員になりたいとつぶやき、他のTwitterユーザーから連絡先をもらっていた。
イスラム国武装勢力は、Twitterを使って自分達のメッセージを伝えようとしている。関係ないハッシュタグをつけて、イスラム国に関心がない人の目にもつくようにしていることはよく知られている。この青年は、Surespotという個人情報を登録する必要がなくメッセージの記録も残らないSNSアプリを使い、Twitterで知り合ったイスラム国関係者とシリアに密入国する具体的な話をしたと見られる。
韓国メディアは、非行少年が高校を中退して引きこもり、学閥社会の韓国になじめず色々なことに対する不満からイスラム国の「英雄になろう」という誘いに負け、武装勢力に加担したのではないかと分析する。イスラム国がSNSで巧みに世界中の若者を洗脳し誘惑していることから、国会や政府関係者の間では、「イスラム国が発信する動画やメッセージを、韓国からは見られないようにする」のはもちろん、こうした「テロ勢力に賛同するような書き込みや検索を繰り返す人の通信記録を、収集して監視する必要があるのではないか」という話にまで発展している。それがテロ防止法だ。
テロ防止法を制定すると、国家情報院という韓国政府の情報機関が「テロ関連国内外の情報収集・作成・配布」、「危険人物の情報収集」、「テロ団体指定と解除」、「テロ団体の構成員と疑われる者に対する出入国・金融取引・通信利用の情報を収集」などができるようになる。もちろん、韓国内ではテロ防止法に反対する意見もある。「通信の秘密保護といったプライバシー侵害になる恐れがある」、「テロの範囲が明確でないため、情報機関が権限を乱用する可能性がある」、という理由だ。
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