インターネットこそ若返りの妙薬! [2007年4月18日]

韓国では全国どこに行っても、郵便局、市役所、区役所、住民自治センターといった公共機関には無料でインターネットが使えるパソコンが数台置いてあり、誰でも使えるようになっている、また99年あたりから無料または月1000円ほどの安い授業料で参加できるシニアパソコン教室が市役所や区役所で年中開催されている。ちょっと前までも60代以上の世代はインターネットが使える、いやインターネットがどういうものか知っているだけでも「すご~い」と言われるほどデジタルデバイドが深刻だった。

 でもこの頃はシニアのインターネット利用は当たり前、インターネットがきっかけになり人生が変わったというデジタルシニア世代がよくテレビで紹介されている。ネットでも若い世代と変わらないほど動画投稿やブログ運営、スカイプを利用して世界各国のユーザーとビデオチャットに熱心な、インターネットを利用するのが日常になったWebver族が脚光を浴びている。


 WebverはWebとsilverの合成語で、以前は引退後は世の中の動きには鈍くなり近所付き合いだけになってしまいがちだったシニア世代が、インターネットを利用して最新情報を取り入れ、積極的に友達の輪を広げ人生を楽しんでいることから付けられた名前だ。シニアパソコン教室はパソコンの使い方やネットの基本的な使い方を教えていたが、それぐらい普通に使えるシニアが増えてからは動画教室、HOMPY(韓国のSNS)教室などに種目を変えている。


 韓国マイクロソフトと韓国情報文化振興院が情報化教育を履修した55歳以上400人にアンケート調査をした結果によると、情報化教育後「生活が楽しくなった」が98%、「友達が増えた」が91%と、「より健康になった」が89%、「子供や孫との会話が増えた」が90%、「日常生活がより便利になった」97%、など、インターネットを利用するようになってからコミュニケーションも増え、健康状態もよくなり世代間のデバイド解消にも役立っていることが分った。


中でも21%のシニアが情報化教育後「再就職や経済活動のチャンスに恵まれた」と答え、シニアの情報化が人生の中での経済活動期間の延長にも現実的に役立っていた。また面白いのは54%もの人が「掲示板に投稿したり、他人の書き込みに対してコメントを残したことがある」と答え、27%は「インターネットショッピングを利用したことがある」と答えている点だ。インターネットショッピングは日本のシニアより利用度が低いかも知れないが、さすが討論好きの韓国らしく、書き込みやコメントを残して自己主張を楽しむのは年齢など関係ないようだ。

 この調査を担当した韓国マイクロソフトは「韓国はデジタル化が急速に進みすぎたため、インターネットがシニアを社会から疎外させる主な原因になっていたが、ここ数年インターネットを自由に利用できるようになったシニアが増えたため、逆にインターネットがシニアの社会復帰を促進している」と分析した。


 韓国のSNS「サイワールド」も、2007年1月現在50歳以上の会員は95万人で、2004年3万8千人に比べ25倍も増えている。全会員の中で50歳以上が占める割合も2004年1%から2005年3%、2006年4%と徐々に増えている。ポータルサイト「DAUM」も2006年末時点の50歳以上利用者は全会員の13.3%で、2004年に比べ4%ほど増えている。自分で撮影した動画をブログやHOMPYに掲載して訪問者の反応をワクワクしながら待ったり、ネットで出会った友達のサイトにコメントを残したりすることで精神的に若返り、健康になったというシニアは一人二人ではないようだ。


 ソウルから南へ30分ほど離れた軍浦市(グンポ市)には「NO老クラブ」という70~80代が中心のインターネット同好会が活発な活動をしている。市が主催した情報化教室に参加した人達が中心となり、クラブのホームページを作って自由に書き込みしたり、次のオフ会ではどこに行こうかとチャットをしたり、子供向けにネット礼儀教室コンテンツを制作してみたり、忙しい毎日を送っている。


 NO老クラブに参加している78歳のおばあさんは「ネットを使うようになる前まではいつ死ぬんだろうか、病気にならず眠ったまま死ねるといい、そんなことばかり考えていて笑うこともなかった。でも今はネットであれこれ検索してみたり、シルバー同好会に加入して掲示板でやりとりをしながら気に入った人とデートもしてみたり、スカイプでアメリカにいる孫娘とビデオチャットもしてみたり、毎日があっという間に過ぎていくから困るわ~」と幸せそうだった。


 まだ韓国の60歳以上のネット人口は30%にならない程度で、日本よりも少ない。だがネットで得られる幸福指数はどの国に負けない。それは逆にデジタルデバイドより世代デバイドの方が怖いという裏返しかもしれないが、積極的に新しい人生を楽しむ姿に子供も孫も元気付けられる。若返りついでに、ネットで青年のふりをしているシニアもいるかもしれないと思わせるほどだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070418/268573/

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