G★2008をはじめ、韓国のゲーム展示会に欠かせないイベントはやはりプロゲーマの試合観戦である。オンラインゲームの対戦は、「eスポーツ」として1年を通してリーグ戦が行われているほどの盛り上がりようだ。
プロゲーマーというと、日本ではどうしても一昔前の「高●名人」を思い出す方が多いようだが、韓国のプロゲーマーは全く趣きが違う。
違いの一つとしてまず挙げられるのが、年齢が若いこと。10代後半から~20代前半という若さに、何故かジャニーズのアイドルを連想させるようなイケメン揃い。賞金やイベント・CM出演等による年俸は、医者・弁護士に負けない億単位(日本円で年収1500万円ほど)、F1レーサーのような格好いいユニフォームに身を包み、追っかけファンを抱えたまさにアイドル集団なのだ。
G★2008最後の日、ゲーマー達を熱狂させたイベントが行われた。韓国で唯一の女性プロゲーマー「ソ・ジス」と一般観客が戦争シミュレーションネットワークゲーム「スタークラフト」で対戦できるという夢のようなイベントがそれ。彼女が行くところならどんなに遠いところでも応援に駆けつけてくれる追っかけファンを始め、子供や女性も彼女のプレイに興味津々な目を向けて観戦した。
対戦はガラス張りのブース内で行われ、周囲はすごい数の人!人!人! 彼女を一目見ようと押すな押すなの大行列が出来るほど。将棋倒しが危ぶまれるまでの人だかりは、会場内にいた観客が一斉に集まったことによるものだ。
ソ・ジスは、2002年にプロになり、STX SouLに所属。グラビアアイドルのようなかわいい顔とすらっと伸びた手足で、男性ゲーマーを虜にするプロゲーマーである。何があってもめげずに努力するキャラとして、女性ゲーマーにとっても憧れの存在となっている。女性の部での優勝経験はあるものの、全体のリーグ戦での優勝経験はまだなく、2軍生活も余儀なくされていた。しかしその情熱とチャレンジ精神は高く評価され、2008年10月に韓国女性新聞が選定した「2030女性希望リーダー20人」の一人にも選ばれたほど。
「女だから」という考えに捉われず、新しい分野を切り開いたソ・ジスは、ミニスカートのユニフォームを着せられ、ゲーマーというよりもかわいい女の子としてチヤホヤされることを悲しいと感じているようだ。「女性プロゲーマーではなくプロゲーマーと呼ばれるまでがんばる」のが当面の目標だという。
ソ・ジスはスタークラフト部門では唯一の女性プロゲーマーであるが、その他のゲームには女性だけのプロゲーム団も登場している。プロゲーマー同士で結婚に至るケースもあるほどだ。
韓国のオンラインゲーム対戦は、10月からリーグ戦が始まり、5ラウンド行われる。1ラウンド を5~7週にかけて12のゲーム団体総当たり戦が行われるため、選手の体力管理も重要な鍵となっている。
8月には釜山で決勝が行われる。釜山のグァンアンリ海水浴場には野外特設舞台が設けられ、2万人を超える観客が集まる。韓国の高校生の間ではサッカーと並ぶ人気スポーツとして「eスポーツ」があげられるほどだ。
2007年からは「大統領杯アマチュアeスポーツ大会」も開催されており、ここで優勝したゲーマーは、プロゲーム団やゲーム業界にスカウトされることが多い。
プロリーグが開催されているゲームタイトルは様々であるが、なかでも最も人気なのはやはり「スタークラフト」。個性的な特徴を持つ3つの部族と数え切れないほど豊富なマップの組み合わせにより、予測がつかない戦術で次々に敵を倒していくプロゲーマー達の熱い戦いぶりは、見ていてとても気持ちよい。手の動きが見えないほど素早くマウスとキーボードを使って兵力をコントロールするところは、まさに神業としか思えず、一見の価値ありといえるだろう。
そして、イベントを盛り上げてくれるのが、ゲームの戦況を中継する解説者とアナウンサーの絶妙なコンビネーション。これが、笑いあり驚きありの手に汗を握る観戦を視聴者にもたらしてくれる。
独特の言い回しと伝説的な名言を残している解説も生まれるほどで、サッカーや野球、格闘技を見るのとあまり変わらない感覚だ。
韓国には、24時間、オンラインゲーム対戦の中継を専門とするケーブルTVチャンネルがあり、地上波放送局でも金曜日の夜はオンラインゲーム対戦の名場面を紹介したり、プロゲーマーのインタビューを放映する番組があるほど。オンラインゲームもスポーツの一つとして、「eスポーツ」という確固たるジャンルを構築しているのだ。
次回は知れば知るほど面白い韓国のプロゲーム集団とプロゲーマーの実態をご紹介します!
By.趙章恩
Original report (@niftyゲーム)
http://game.nifty.com/cs/column/detail/090105118805/1.htm