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2009年10月末に韓国でiPhoneが発売され、2010年上半期には一気に各メーカーからスマートフォンが出そろい大ブームになった。2年縛りでスマートフォンを安く購入した加入者の契約期間が終わり、ついに機種変更、キャリアの乗り換えのシーズンがやってきた。
韓国の大手通信キャリア3社は中古スマートフォンを代理店に売って安く機種変更できる「エコフォン」制度を始めた。今までは中古端末はリサイクルゴミとして捨てるか、ネットのオークションサイトを利用して個人間で売買するしかなかった。個人間で取引すると、同じ端末でも人によって販売価格が大きく違ったり、端末の状態をだまして売ったりといろいろ問題があった。
使っていた端末を捨てて、他のキャリアに新規で2年縛りで加入した方が、プロモーション料金が適用されて端末も料金も安くなるので、2年ごとにくるくるキャリアを変えるユーザーが韓国にはとても多い。キャリアは契約期間が終わった加入者を囲い込むために、使っていたスマートフォンをネットのオークションサイトよりも高く買い取るエコフォン制度を導入した。キャリアが中古端末の買い取り基準を作ることで中古端末の利用活性化に役立て、環境保護にもつながるようにするためである。
スマートフォン契約が終了したユーザーを囲い込むため、中古端末を買い取るエコフォン制度が始まった。写真はSKテレコム代理店で
SKテレコムの場合は、機種変更の際に捨てられる端末を集めて、機器故障で一時的に端末が使えなくなった加入者に貸し出すレンタルフォンや、低所得層への無料端末として活用していた。捨てられる携帯電話端末は、SKテレコムだけで年間約150万台に上るという。
エコフォン制度はキャリアによって買い取り基準が若干違うが、ほとんどの場合は浸水、音声通話品質、データ通信性能、液晶とバッテリーの状態など20項目をテストして、New、A+、A、B+、B、Cに分けて判定する。キャリアは買い取った端末をきれいにして部品交換などを経てから、MVNO用や携帯を紛失した加入者向けに販売している。キャリアの代理店で購入した中古端末は14日以内であれば交換、または返品できるので安心して使える。
2011年に販売されたスマートフォンの場合、A+状態の端末価格は新品の半額以下の12万~20万ウォン(約8300円~1万4000円)。ユーザーは、代理店のほかに、キャリアのホームページからも購入できる。今後は新規加入の場合でも中古端末を使うユーザーが増えると期待されている。
このほかにも、1年以上スマートフォンを利用した加入者がLTEスマートフォンに機種変更する場合、10万ウォン(約7000円)を支援するプロモーション料金もキャリア3社で一斉に始まった。韓国で発売されたLTEスマートフォンは、サムスンのGalaxyNote、LG電子のOptimusLTE、パンテックのVegaLTE、HTCのRaider 4G—の4機種である。中古端末を代理店に売るエコフォン制度を利用すれば重複割引になる。このプロモーションでキャリア3社から250万台ほどのスマートフォンが中古市場に流れると推定されている。
しかし、中古端末を買い取ってもらうためには自分が加入しているキャリアで機種変更する必要がある。キャリアを変える場合は端末を買い取ってもらえない。キャリアは、契約期間を終えた加入者の囲い込みのために、エコフォン制度を導入したようなものである。中古端末の販売価格より、買い取り価格の方が高い場合があるのもそのせいだ。
とまれ、2012年内には中古端末で新規加入するユーザー向けの専用料金制度も始まるという。エコと加入者の囲い込み両方を狙ったエコフォン制度が活性化すれば、端末価格の負担なくあれこれいろんな機種を使ってみることもできるので楽しみである。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年5月18日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120517/1049742/