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キャリアのLGU+がGoogle TVを利用できるサービス「U+TV G」を始めた。これは、2009年から同社の提供する「デジタルIPTV」サービスに、「スマートセットトップボックス」を追加したもの。米グーグルがメーカーではなくキャリアと手を組んでGoogle TVのサービスを提供するのは、初めてである。
インターネットにつながるデジタルテレビにこのスマートセットトップボックスを追加すると、インターネット検索、VODといった既存のIPTV機能に追加してグーグルが提供するGoogle Playからゲームや動画、学習アプリなどをテレビから利用できる。セットトップボックスは1.2GHzのデュアルコアCPU、Google TV最新バージョンを搭載、タッチパッド付きリモコンも提供する。
利用できるコンテンツは地上波放送再放送と119のケーブルTVチャンネルに加え、5万件あまりのVOD、グーグルのサービスとなる。月々9900ウォン(約700円)、ブロードバンドネットワーク料金とセットだと月3万ウォン(約2100円)で利用できる。
サムスン電子やLG電子のスマートTVは普通のテレビに比べ3倍ほど高い。47型のスマートTVが14万円~15万円ほどする。それでもこの1年間で半額近く安くなってこの値段である。LGU+のスマートセットトップボックスを使えば、テレビを買い替えなくても安い費用でスマートTVが自慢する豊富なゲーム、学習関連アプリやフィットネスアプリを自宅のテレビから利用できる。
「スマートTV」と「IPTV」はどちらもインターネットにつながるテレビである。しかしスマートTVはメーカーが、IPTVはキャリアがサービスを提供する。そのため2012年の始めには、サムスン電子のスマートTVが自社のネットワークトラフィックを大量に発生させているとしてキャリアのKTが「ネットワークのフリーライドはやめろ」と訴訟を起こしたこともある。サムスン電子はネットワーク中立性を盾に反撃した。政府機関の仲裁で和解したが、キャリアのスマートTVに対する対抗意識は依然と強く残っているようだ。
LGU+のスマートセットトップボックスにはNFCタグが付いていて、スマートフォンやタブレットPCをかざすだけで、テレビの画面がスマートフォンに移動、同じ画面を観られる。逆にスマートフォンの画面をテレビで観たいときも端末をかざすだけ。複雑な切り替え操作はいらない。
4台のスマートフォンまたはタブレットPCをつなげてそれぞれデジタルテレビの違うチャンネルを視聴することもできる。テレビは1台だけどスマートフォンは家族全員が持っている家庭が多いので、チャンネル争いすることなく観たいチャンネルを選べる。画像検索機能も強化した。家族のスマートフォンをセットトップボックスにかざすだけで、スマートフォン内の写真がセットトップボックスに移動し、テレビで写真を鑑賞できる。
日本では肖像権の問題で考えられないかもしれないが、テレビ番組の場面をキャプチャーして自分のSNSに投稿して番組について語り合う機能も付いている。これらはAndroidスマートフォンでしか利用できないようになっている。
韓国のキャリアはスマートフォンが普及してから「脱通信事業」をキーワードに、融合サービスに力を入れる。具体的にはヘルスケア、教育、アプリケーション開発の分野だ。LGU+のスマートセットトップボックスはスマートホーム、スマートメディアサービスの一環で、個人向けにはスマートフォンで家族みんなをつなげるとしてデジタルテレビとセットトップボックスを利用するライフスタイルを提案した。
韓国では自分のスマートフォンばかり使ってテレビも見なくなった、家族の会話も減った、という家庭が多い。スマートセットトップボックスがあれば、家族で一緒にゲームをしたり、学習アプリを利用したり、写真を見たりとコミュニケーションするきっかけが増えるかもしれない。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年10月22日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121022/1067742/