キャリアとメーカーがケータイ販売価格を“談合”していた

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韓国の公正取引委員会は2012年3月15日、SKテレコム、KT、LGU+の通信キャリア3社とサムスン電子、LG電子、パンテックのメーカー3社に対して「不当顧客誘引行為」をしたとして、課徴金453億3000万ウォン(約34億3000万円)の納付命令を出したと発表した。キャリアとメーカーが談合して端末価格を高く設定し、各種割引で安く買えるように見せかけてユーザーをだましているというのが理由だ。SKテレコムとサムスン電子は異議を唱え、行政訴訟を起こす方針であるとしている。






SKテレコムの代理店。個人情報保護のため、紙ではなくタブレットPCを使って会員情報登録を行っている。韓国の販売代理店が携帯やスマートフォンの端末価格を膨らませて大幅に割引しているかのように見せたことが問題になった(写真は本文と関係ありません)

公正取引委員会が調査したところによると、キャリアとメーカーは代理店に販売する端末価格を実際の価格より高く表記し、ユーザーにはキャリアとメーカーが「端末購入補助金」を支給して大幅に割引販売しているかのように見せかけていた。2008年から2010年まで販売された機種の中で、SKテレコムが120機種のうち26機種、KTが77機種のうち4機種、LGU+が56機種のうち14機種、合わせて253機種のうち44種が端末価格を膨らませていた。

 からくりはこのようになる。キャリアとメーカーが談合して、メーカーがキャリアに納品した端末価格より、1台あたり平均30万ウォン(約22000円)ほど高く代理店販売価格を設定する。キャリアは代理店に、1台販売するごとに平均14万ウォン(約10500円)を奨励金として支払い、代理店は5万ウォン(約3700円)のマージンを残して代理店価格から1台9万ウォン(約6800円)ほど値引きしてユーザー販売する。差し引きすると、結局ユーザーは、割引してもらったと思ったものの、実際の端末納品価格より15000円ほど高く買っていたことになる。


 つまり、「代理店価格(出庫価格)」という端末価格の表記があり、そこから該当キャリアの利用年数や平均料金を割り出して「端末購入補助金」が販売代理店に適用される。代理店は、出庫価格よりも安く買えるようになっている。出庫価格が実際の価格より2万円以上も膨らんだ水準になっていたため、ユーザーから見ると割引してもらったと思っていたのが実は全然そうでなかったということである。筆者の場合、端末を安くする代わりに条件があるとして、高いデータ通信料金に加入させられただけに、二重にだまされた気分である。

また今回の調査により、あるメーカーの端末の場合、韓国内での出庫価格は5万円ほどする一方、海外40カ国での平均出庫価格は2万円にも満たないことが明るみになった。同じ端末なのに、韓国のユーザーには2.5倍も高く売っていたのだ。


 韓国はこれまで、同じキャリアの代理店なのに、代理店ごとに端末の価格が全然違うことも問題になっていた。例えばSKテレコムのユーザーが機種変更しようとした場合、同じ機種なのに代理店AとBでは値段が全然違うので、複数の代理店を歩き渡り一番安いところで機種変更していた。新規加入するときも同じで、代理店Aは端末価格無料なのに代理店Bでは数千円したりと、定価というものがなかった。その理由は販売奨励金にある。


 韓国では2008年より販売奨励金が復活し、キャリアから代理店に支払われる奨励金だけでなく、メーカーも代理店に奨励金を支払い自社の端末を販売するようにしていた。代理店は奨励金から自由に自分のマージンを残して割引販売するので、代理店Aはマージンを少なくして端末を安く販売し、代理店Bはマージンを多くして端末を高く売る、という仕組みだ。


 キャリアとメーカーは、補助金をはじめ販促費用を商品価格に上乗せするのは当たり前のことであるとして猛反発する。公正取引委員会はキャリアとメーカーに対し、課徴金を支払うほかに、端末の納品価格と代理店価格の差額、販売奨励金の内訳をホームページに公開するように求めているが、これも営業秘密だとして反発する。公正取引委員会の処置がうやむやにならず、携帯電話端末流通、引いては適正な価格の改善につながってほしいものだ。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月17日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120316/1044007/

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