サムギョプサルとは直訳すると「三重肉」、「三段肉」。よくメニューに「三段バラ肉」なんて書いてありましたね。今は「三枚肉」、あるいはサムギョプサルで日本でも通じてしまうほどポピュラーな韓国料理になりました。
お肉を焼いて、にんにくやキムチ、サムジャン(韓国味噌とコチュジャン、ごま油、唐辛子、ねぎ、にんにく、ごまなどを混ぜたもの)と一緒にサンチュに包んで食べるだけなので、お母さんの手間も省けます。夏休みにはみんなでキャンプに出かけ、よくサムギョプサルパーティーをやったりもします。お肉をごまの葉に包んで食べると、独特の風味があってとってもおいしいんですよね。野外で食べると、さらにおいしく感じるんです。木の枝や松ぼっくりを拾ってきてバーベキューのように焼いたり、川では拾ってきた平たい大きな石をホイルに巻いて熱し、その上でお肉を焼いたりと、焼き方もいろいろです。私はちょっと厚めの肉とキムチを一緒に並べて焼いて食べるのが一番好きです!
ところが、サムギョプサルに関してここ数ヵ月間ショックなことが……。お手頃な値段で、庶民のごちそうとして愛されてきたサムギョプサルが! 骨付きカルビよりも愛されていたサムギョプサルが! 今じゃビーフより高い!! 霜降サーロインと変わらない値段にまで高騰してしまいました。豚肉は高級食材になってしまったのです! 「金ギョプサル」と呼ばれるほどですから、もう泣きたいです……。
もちろん、国産豚を使うサムギョプサルに対して、牛はオーストラリアからの輸入が増えて安くなったという事情はあります。しかし! スーパーで100gのものが1300Wぐらいだったサムギョプサルが、今じゃ2500Wぐらいしますからね。お店で食べると1人前8000Wだったのが、1万Wから1万2000Wぐらいはするし。うちなんてふたりで4人前は軽く食べるから……。韓国の物価から考えると、おサイフに負担をかけることなく気軽に食べられるメニューとは言えなくなりました。
「豚肉のほかの部位だっておいしいのに、なぜサムギョプサルにこだわるの?」と聞かれそうですが、やっぱり、脂と肉の絶妙なバランスが魅力なのでしょう。焼く前のあの肉を見るかぎり、白い脂だらけに見えますが、サムギョプサル専用の鉄板(釜の蓋のような真ん中が盛り上がっているあれです)で脂を落としながら焼くと、お肉のすみずみまでジューシーな脂がしみこみ、やわらかくて香ばしくて! キムチと一緒に食べて冷たいチャミスル(緑色の瓶の韓国の焼酎)を1杯のどに流し込めば、もうパラダイス! きゃ~なんて、叫んでしまうほど幸せになるんです(と、夫が熱っぽく語ってくれました)。
そして、サムギョプサル価格急騰の影響で私が最近目覚めた、それはそれはおいしいあるものがあります。辛口醤油に漬け込んで下味を整え、練炭でじっくりパリッとなるまで焼いた「デジコプテキ」(豚の皮)です!! 最初は「うひょ~、こんなに毛穴が丸見えの皮なんて食べれないよ~~」とベソをかいてしまったのですが、「コラーゲンたっぷりでお肌ぷるぷるになりますよ。うちに来る芸能人の方はみんな必ずデジコプテキを注文します」とお店の人に励まされ、レッツチャレンジ!
うっすら茶色で乾燥こんにゃくのような感じもするデジコプテキを口に入れると、パリッと醤油味スナック菓子のような歯ごたえがあって、次はもっちりとした少し固めのゼリーのような食感が続き、ほんのり甘いお肉の味がきた~と思ったら、もう口の中で溶けてなくなりました。え~~これがデジコプテキですか! 私今までこの味を知らずに生きてきたなんて、損しました。もっと若い頃から食べていれば、おいしくコラーゲンを補えたのに。この口周りのほうれいせんも、いじわるそうにみえる垂れた頬肉も、カラスの足跡のような目尻のしわも、私とは縁のないものにできたはず! これからは、値段が急騰したお高いサムギョプサルよりも、デジコプテキを愛してあげるつもりです。
でもひとつ難点なのは、デジコプテキは下準備が大変なので、家庭でこの味を再現するのは難しく、専門店に行かないとおいしくいただけないことです。
新しくオープンした「ロッテシティホテル」がある地下鉄「麻浦(マポ)」駅周辺は、40年も前からデジコプテキで名声の高いお店が集まっているので、おすすめしたいです! デジコプテキがおいしいお店は豚肉を熟知しているということなので、サムギョプサルも豚カルビも、なんでもおいしいんですよ。
麻浦(マポ)に行けば、お店の外に置かれたステンレス製の丸い練炭用のテーブルに座り、「うぎゅ~」、「ぱうぱう」、「ミチゲッソヨ~(頭がおかしくなりそう~)」なんて、わけのわからないことを叫びながら肉にむさぼりついている私に出会えるかもしれませんよ。
by: 趙章恩
2009年07月17日
「ニッコリア」: ダイナマイト・コリア 今日もドキドキ探検に出かけよう!