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最近は携帯電話には800万画素以上のカメラが付いていて、デジカメなんて今さら持ち歩かないという人が多いのではないだろうか。韓国でも、記念撮影というとみんな一斉にスマホを取り出す。韓国でデジカメといえば、もうデジタル一眼になった。
LG電子の「Optimus」スマホが1300万画素カメラ付きだというのに、サムスン電子はあえてスマホのようなデジカメで勝負しようとしている。韓国の主要キャリアSKテレコムとKT、米AT&Tから10月中に「Galaxyカメラ」が発売されるそうだ。韓国のキャリア代理店でデジカメを販売するのは初めてのことである。カメラの値段とデータ通信料金制度についてはまだ正式に発表してない。
Galaxyカメラは、スマホのカメラより優れた画質で撮影し、カメラを使ってその場で編集、データ通信を使ってSNSに公開できる、というものである。Android 4.1を搭載して3Gデータ通信を利用できる1600万画素BSI(Back Side Illumination) CMOSイメージセンサー、光学21倍ズームのカメラ。AT&TではLTEも使える。既存のデジカメより大きな4.8型の液晶画面で撮った写真を再生して編集もできる。SNS以外にもAndroidアプリをインストールして使える。「クラウドバックアップ」機能があり、撮ってすぐ自分のクラウド(ネット上のファイル保存空間)に保存できる。メモリーカードが壊れた、無くした、といったトラブルを防止できるのはありがたい。撮った写真や動画をサムスン製のスマホやタブレットPCと簡単に共有できるシェアリング機能も付く。
どこかで同じコンセプトのカメラを見たことがあるような……と思ったらニコンのCOOLPIX S800cと同じコンセプトではないか。同モデルもAndroid OSに1602万画素、3.5型のAMOLEDワイド画面を搭載する。専用アプリでスマートフォン側からカメラ内の写真や動画を選んで転送もできる。
報道によると、Galaxyカメラは、サムスン電子がスマホと同じぐらい力を入れている主力商品だそう。2012年5月に同社の李健熙会長が「3年内に世界ナンバーワンのカメラを作れ」と指示して3カ月後に生まれたという。急ぎすぎたのだろうか。
ジェスチャー認識で自分撮りも集合写真も
韓国ではGalaxyカメラよりも、サムスン電子の別のデジカメ「スマートカメラMV900F」の方が話題だ。
Wi-Fiが使える1630万画素のスマートカメラは、スマホよりはきれいに、デジタル一眼よりは手軽に写真を撮りたいというニーズにぴったりのカメラである。3D写真と動画も撮影できて、180度回転するAMOLEDタッチスクリーンを使えば自分撮りもうまくできる。
面白いのは、セルフタイマーよりも断然便利な動作認識機能である。カメラのレンズを自分に向けて机の上に置いて、180度回転する液晶を開いてセットする。手を動かす(手を右に回す、左に回す、上下に動かすといったジェスチャー)だけでカメラが動作認識してシャッターやズームを動かせるので、液晶を見て確認しながら団体写真も撮れる。一人はみ出て首から上がないとか、セルフタイマーだと10秒間同じポーズで立っているのが恥ずかしいとか、そういう経験のある人にはお薦めのカメラだ。女性向けに、写真を撮った後でメイクしたように肌をきれいに加工できる機能も持つ。こういう機能はスマホにはないので、1台欲しくなる。
MV900Fは日本円で3万円前後なので、お手頃価格とは言い難い。とはいえ、写真を撮るのが好き、でも奮発して買ったデジタル一眼は結局重くて持ち歩かない、一眼買って1年以上経つのに未だ「これなんだっけ……」と未知の機能に戸惑う(私のような)人にはぴったりなのかもしれない。
サムスン電子は「これからの時代は活字や音声ではなく、写真で自分を表現する視覚コミュニケーションの時代」なので、デジカメの需要はまだまだ大きいとみる。スマホとデジカメ、やっぱり両方持つべき?
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年10月12日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121012/1066567/