サムスン、LGのIoT家電戦略 力点はスマートホームへ [現地レポート:韓国編]

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毎年1月に米国で開催される、世界最大級のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES」で、2016年からIoT・AI機能を搭載した家電をアピールしてきた、韓国の2大メーカー、サムスン電子(Samsung Electronics)とLG電子(LG Electronics)。両社が力を入れるIoT家電の最新事情や戦略について、ITジャーナリストの趙 章恩氏に現地から報告してもらう。

 韓国では長年、「家電はLG」という認識が一般に定着していた。スマートフォン(スマホ)は、世界トップシェアのサムスン電子の「Galaxy」シリーズを使う人が圧倒的に多いが、冷蔵庫や洗濯機といった生活家電は丈夫で長持ちするとしてLG電子が人気だ。LG電子は2020年8月、前身の金星社時代に販売した電子レンジの最も古いモデルを持っている人を探すキャンペーンを実施、勝者3人に最新のキッチン家電3種をプレゼントした。

 LG電子はこれまで、韓国初の家電を数多く発売してきた。古くはラジオ、白黒テレビ、家庭用エアコン、洗濯機、電子レンジ、キムチ冷蔵庫など。この10年ではロールアップ型のOLED(有機EL)テレビや衣類管理機など、従来は存在しなかった市場を生み出した。「家電はLG」から「プレミアム家電はLG」へ、多機能・高級化戦略が目立つ。

 しかし最近は、サムスン電子の追い上げが激しい。テレビは既に世界市場でも韓国市場でもサムスン電子の方がシェアが高く、エアコン、洗濯機、乾燥機など生活家電では両社とも4割ほどのシェアで韓国市場を二分している、という報道もある。

「家電を私らしく」

 家電では後発のサムスン電子は1990年代後半から「デザイン」を重視する戦略を採ってきた。デザインだけでなく、家電とスマホ、AI・IoTでユーザーの利便性を高められるよう、ハードウエアとソフトウエアをつなぐ融合デザインも重視してきた。

 2019年には「Project PRISM」と名付けた戦略によって生活家電を一新した。同年6月には、光がプリズムを通ると虹色に光るように、ユーザーがカラーも素材も機能も好きなように組み合わせることができるオーダーメード家電「BESPOKE」シリーズを発売した(図1)。冷蔵庫、キムチ冷蔵庫、食洗器、オーブンなど、まずはキッチン家電を展開している。ソウルのロッテデパート本店、新世界デパート江南店など、サムスン電子製品を取り扱うどの売場に行っても、最も面積を占めているのはBESPOKEという力の入れようだ。

 BESPOKEは「BE+SPEAK」で「言う通りになる」という意味が込められている。外側パネルの材質は9種類から選べる。冷蔵庫は1ドアから4ドアまであり、2ドア+1ドアまたは4ドア+2ドアといった具合に、自宅のキッチンのサイズに合わせて自由に組み合わせられる。

 BESPOKEが追及するのは、製造より創造(Creation)、標準化より個人化(Customization)、そして異業種との協業(Collaboration)である。ターゲットは個性を追求したいミレニアム世代(1980年~94年生まれ)。韓国のこの世代はコストパフォーマンスより心を満たす消費を重視する傾向が強く、自分が満足できるのであれば価格にはこだわらない。

 「家電を私らしく」という同社の戦略は当たった。2020年上半期に売れた同社製冷蔵庫の6割はBESPOKEシリーズだった。韓国では単身世帯の増加により、丈夫な家電よりデザイン優先、AI・IoTでユーザーが操作しなくても機器が状況を判断して空気をきれいにしてくれたり、アプリケーションでモニタリングや操作ができたりする、付加機能を重視する傾向が出始めていた。

 そこに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で「ステイホーム」の時間が長くなり、キッチン家電の需要が伸びた。レジャーや旅行にお金を使えない分、自己投資として自宅のリフォームやインテリアを一新することが流行った。デザインなどを自由に選べるサムスン電子のオーダーメード家電がマッチしたのだ。BESPOKEは既に、韓国・米国・欧州・中国・インドで意匠権を68件登録済み。2021年は種類を増やしてエコシステムを築くとしている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経 ELECTRONICS》

2021.1 .

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00068/00006/


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