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2012年8月にアップルの勝利で終わったように見えたサムスン電子とアップルの米カルフォルニア州における連邦地方裁判所での特許訴訟だが、その後意外な展開を見せている。
8月当時、米の陪審員はアップルが主張する7件の特許侵害の内6件をサムスン電子が侵害したと認めた。賠償額は10億4900万ドル。「サムスン電子が、アップルの特許であることを知りながら故意に侵害した」として賠償額をもっと増やすべきだという話もあり、サムスン電子絶体絶命のピンチ!と注目を浴びた。
アップルは同裁判所に、サムスン電子のスマートフォンとタブレットPCを米国内で永久に販売できないようにする販売禁止可処分申請をしたが、これは棄却された。さらに、米の特許庁(USPTO)がアップルだけの技術と主張していた「Pinch to zoom」と「Bounce back」を次々に「特許ではない」と判断したことから、訴訟の争点は端末のデザインのみとなっている。Pinch to zoomは指2本でタッチして画面を大きくしたり小さくしたりする技術、Bounce backは画面をタッチして下に思いっきり下げると画面が弾けるようにして元に戻る技術だ。
韓国のマスコミが12月20日付で一斉に報道した内容を見ると、米特許庁は10月にBounce backを、12月にPinch to zoomの特許を再審し、「既に先行技術が存在する」という理由で特許暫定無効の判定を下した。アップルのiPhoneが発売される前から、タッチスクリーン製品は指2本タッチして画面を大きくしたり小さくしたりする機能があったということである。
指で2回連続タッチすると画面が大きくなったり小さくなったりする「Tab to Zoom」も、同裁判所が特許を認めるにはあいまいなところがあると指摘しているので、特許が無効になる可能性もある。
アップルが特許侵害を理由にサムスン電子を訴えたが、それが実は特許ではなかったとなると、裁判の判決も変わる。同裁判所の陪審員が認めた侵害は、iPhoneのデザイン特許だけ残った。これによりサムスン電子の賠償金も調整される見込みである。とはいっても、欧米はデザイン特許をもっと重要視しているので、賠償額はそれほど変わらないだろうという分析もある。サムスン電子の訴訟関係者は「陪審員の評決に対する我々の再審査要請は適切であった」と喜んでいる様子だ。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121225/1074882/