サムスンとアップルの判決、韓国での反応は?

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サムスン電子とアップルの訴訟は、2011年4月から米国、韓国、日本、ドイツ、イタリア、オランダ、英国、フランス、オーストラリアで行われてきた。

 米カリフォルニア州サンノゼの連邦地方裁判所は2012年8月24日(現地時間)、サムスン電子による特許侵害行為があったとし、10億5000万ドルをアップルに支払うよう命じた。


 同日、ソウル中央裁判所の判決では、アップルがサムスン電子のデータ分割伝送に関する通信特許を侵害したというサムスン電子側の主張を認めた。サムスン電子のスマートフォンGALAXYがiPhoneのデザイン特許を侵害したというアップルの主張に対しては、ユーザーインタフェースの一部を侵害したとした。具体的には、ユーザーがタッチして画面を左右上下に動かすとき、メイン画面の外にはみ出ると何もないスペースを見せて自動的にメイン画面に引き戻す「bound back」というユーザーインタフェースだ。


 ソウル中央裁判所の判決は、アップルの方がサムスン電子の特許をより侵害しているという結果となった。そのため、アップルのiPhone 3GSとiPhone 4、サムスン電子のGALAXY SIIを販売禁止にしたが、どれも旧モデルなので、両社の売り上げに影響を与えることはないという。
 







アップルとの訴訟でデザインやUIをコピーしたとして問題になったサムスンGALAXY S。アップルが販売禁止を要請した同機は2010年6月に発売され、7カ月で販売台数1000万台を突破した



 ソウルの判決が下されてまもなく、カリフォルニアの地裁は、サムスン電子の完敗ともいえる判決を言い渡した。これには「驚き!」という反応が多かった。特許訴訟の場合、完全にどちらかが有利な結果になることはほとんどなかったからだ。


 韓国のマスコミは、「米の貿易保護主義によってサムスンが完敗した」、「サムスンがアップルに払う賠償金分を製品価格に上乗せしてスマートフォンが値上がりするのではないか」、「スマートフォン輸出は韓国の経済を支える重要な産業なので、これはサムスンだけの問題ではない」と騒いでいる。


 一般の人の反応はどうか。


 韓国のポータルサイトのニュースコメント欄に書き込まれた意見を見ると、「ひじは内側に曲がる(韓国のことわざで、良し悪しに関係なく家族の味方になること)から、韓国の判決はサムスンが、米の判決ではアップルが有利になるに決まっている」と冷静なものから、「一方的にアップルの肩を持つ評決なのでは」、「アップルに市場を独占させたい判決にしかみえない」と疑問を呈する意見もある。


 一方、「サムスンはアップルのデザインやインタフェースを真似たことを認めて、特許使用料を払うか新しく作り直すべき」、「GALAXYは箱もアクセサリーもCMも全部iPhoneにそっくり。偶然似てしまったのではではなく、わざとコピーしているとしか思えない」とサムスン電子に批判的な意見も目立った。



 サムスン電子の営業利益は6割ほどがスマートフォンから生まれている。世界市場におけるスマートフォンの市場シェアは、2012年6月時点でサムスン電子が32.3%、アップルが17.2%である。この2年ほどでサムスンがスマートフォンの市場シェアを大きく伸ばし、iOSのiPhoneか、それともAndroidのGALAXYか、という時代になっていた。


 サムスン電子の株価は米国の判決が報道されてから7.8%ほど下落したが、8月28日にはまた値上がり始めた。米での訴訟は旧機種を対象にしているので、これからの売り上げに大きな打撃はないと分析されている。しかし影響はないとしても、サムスンの企業イメージは打撃を受けたに違いない。


 報道によると、サムスン電子は米国での判決に対して、「市場でイノベーションを通じて正々堂々と競争せず、法廷で特許という手段を利用して競合者を抑えようとした会社が消費者から認められ成長を持続した事例は歴史的にない」、「今回の評決は消費者の選択権を制限し、業界のイノベーションを遮ることになる」といったコメントをしている。


 アップルが狙っているのはグーグルで、サムスン電子がAndroidスマートフォンを代表して訴訟のターゲットになったという見方もある。いずれにせよ、これをきっかけにサムスン電子は自ら明かしたように、「イノベーション」してより使いやすい、独自のスマートフォンを発売してほしいものだ。


 iPhoneユーザーを代弁するコメントを見かけたので、最後に紹介する。「裁判のせいで、韓国だけiPhone 5の発売が遅れるようなことがあったらサムスン恨む」




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年8月31日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120830/1061504/

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