サムスン参入でがらりと変わった韓国低価格ミニノート市場

韓国でもこの頃、低価格ミニノート、いわゆるネットブックの勢いがものすごい。日本のようにモバイルインターネットに加入すると100円になるとか、そこまで大特価販売はないが、この不況の中、なによりも安さがうけている。

 韓国ではまだノートパソコンは購入品なので、オンラインゲームやeラーニング、VOD視聴、DVD再生などマルチメディアの利用に不便はないか、持ち歩くものなのでみんなに見せて恥ずかしくないデザインなのか、それなりのブランドなのかというのが重要な条件になる。だからノートパソコンは日本メーカーのものが好き、という人が多いのかもしれない。


 とにかく値段が安い、しかも軽くて機能は全部揃っている、画面とキーボードは小さくてデスクトップに慣れている人には不便だがそんなに悪くはない、バッテリーの持ち時間は液晶サイズが小さい分、普通のノートパソコンより断然長い。などの長所がブロガーを中心に口コミで広がった。それでもネットブックを買う人は今まではそれほど多くなかった。ハードディスクの容量が少ないとか、画面が小さすぎるとか、表側はそういう文句をつけていたが、「それ5万円の激安ノートパソコンだよね」と言われるのは嫌だから買わない、というのが正直な気持ちなのかもしれない。


 ところが、サムスン電子がネットブック市場に飛び込んでから事情が変わった。2008年初頭には、「ネットブックには興味がない、激安パソコンよりはハイエンドで20万円以上の高価格パソコンでブランド力を高める」、なんて言っていたサムスン電子だっただけに、9月に突然のネットブック発売を打ち出したニュースにはマスコミも消費者も驚いたものだ。


 携帯電話は相変わらず超高価格路線を守っていて、デザイナーとのコラボやタッチパネルやスマートフォンで100万ウォン(約8万円)を超える端末も発売されている。それがノートパソコン市場ではNetobookを先頭に、安くて小さくて使える端末に集中している。


 韓国のネットブック市場は台湾メーカーのASUSやMSIが火付け役ではあったが、アフターサービスが粗末だったことから、買いたいけど買ってはいけないと遠ざけられていたところもあった。しかしサムスン電子やLG電子、トライジェムといった韓国メーカーのの参入を受けて、ネットブックも値段が安くても機能はしっかり揃っているだろうという良いイメージに変わったからだ。


 トライジェムのネットブック「Buddy」は発売から1カ月で1万7000台が売れた。10.2インチの液晶に1.1Kgの重さ、80GBのハードディスク、それで値段は約5万円。サムスン電子のネットブック「NC10」は10.2インチの液晶に120GBのハード、1.3Kgの重さ、バッテリーが8時間も持つところや、キーボードのサイズを一般キーボードの93%のサイズにしたため、ネットブックの最大の弱点とされていた打ちにくいキーボードを改良したところがうけている。値段は同じく約5万円だ。


 「NC10」はブロガーの間で特に評判が高く、普通はバッテリーの持ち時間が8時間といっても無線LANを使ったり使用環境に応じてすごくばらつきがあるが、「NC10」はしっかり7時間30分以上使えたと使用感想を載せている。いまや、他のメーカーのネットブックよりも注目されるようになった。この不況下にインターネットショッピングモールでも量販店でも、入荷待ち状態であるという。


 サムスン電子は全世界の景気悪化による消費傾向の変化に応じて、値段の安いネットブックと新興市場向けの安い携帯電話にもっと力を入れる方向で戦略を修正するとしている。どんなに良い製品を作っても、市場に受け入られない商品はいらないからだ。しかし、今まで高価格製品で着実に築いてきたブランドイメージなのに、今売行きがいいからといって収益性の低いネットブックに集中してしまい、お手頃ブランドのイメージになってしまっては困るという意見も少なくはない。


 サムスン電子は世界携帯電話シェア2位の企業であるが、パソコンでは2008年上半期時点でたったの1.6%。ネットブックで世界市場に躍り出るためにはまだまだ時間がかかりそうだ。


 それでもサムスン電子は、新興市場向けのネットブック市場はあきらめられないようだ。HPやデルもネットブックを発売していることも気になる。サムスン経済研究所も、新興市場では機能は最小限にして値段を最大限安くおさえたネットブックが爆発的に売れると予想しながらも、ネットブックは結局似たような機能になるしかないので最後は価格競争になるしかないため、どれだけ安く効率的に製造できるかが競争力とみている。


 そういう面でサムスン電子は強いはずだ。ハードディスクに変わるSSD(solid state drives)市場の拡大も狙っているからだ。ASUSのネットブックはSSDを搭載してより軽く薄くなっている。サムスン電子が生産しているSSDをハードディスクの代わりにネットブックに搭載すれば、収益率はそれほど落ちないのではないかという見方である。


 韓国のネットブック市場は全ノートパソコン市場の10%を占めると予想されている。2008年1~10月のネットブック販売台数は8万台、年末までには18万台を見込んでいる。韓国IDCの調査によると、韓国ノートパソコンの販売台数は170~180万台前後である。





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(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年12月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20081125/1009959/

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