韓国の最大手キャリアKTが、2016年から支援したスタートアップの技術を採用して、2017年から新しいサービスを始めた。KTのユーザーが決済や会員情報変更など本人確認が必要な時に、パワーボイス社の音声認証技術を使って本人確認ができるというものである。
今までは、携帯電話にSMSで認証番号を送信してそれをもう一度入力するか、指紋認証で本人確認をしていた。パワーボイスの持つ技術の特徴は、録音された声では音声認証ができないことである。本人の生の声でないと認証に成功しないので、なりすまし犯罪を防止できる。生体認証の世界標準といえるFIDO(Fast Identity Online)の認証も取得した。
使い方は簡単だ。スマートフォンに「KT認証アプリ」をインストールして、韓国語で「声の認証」と7回繰り返し話すと、音声情報が登録される。その後は、本人確認の時に音声認証を選択して「声の認証」と話すだけでよい。
時間を短縮するため、スマートフォンのIDとパスワードの自動入力機能を利用する人も多いが、セキュリティ上は好ましくない。KTはフィンテックの利用率が増えていることから、決済の際に手間をかけずセキュリティを高めるため、生体認証の一つとして音声認証を始めた。
自動運転やIoT関連スタートアップとの提携も
またKTは、スタートアップのカビー社と協力して、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System)を開発している。カビーのシステムは、画像認識や各種センサーを利用し、一人ひとりの運転スタイルに合わせて車の衝突やスピード違反を防止して、車線からはみ出ることがないよう安全運転をサポートする。日本では既に、バスや自動車に導入されているが、韓国では最近導入が始まったばかりである。
KTはカビーのシステムをロッテのレンタカー1000台に搭載し、そのレンタカーを借りてKTの業務用車両として使うことにした。KTは通信以外の収益源を作るため、自動運転に投資していた。その流れでカビーに投資し、技術開発にも協力するようになったのである。韓国政府は2017年から、全車両に先進運転支援システムの搭載を義務付けることを検討している。KTはスタートアップと組むことで、よいビジネスチャンスを見つけた。
次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
2017.1
-Original column
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/010400125/?itp_leaf_index