スポーツ競技はテレビよりスマホで観るもの

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オリンピックといえば「テレビの買い替え」、という時代はもう終わりに近づいていのかもしれない。ロンドンオリンピックはスマホが広く普及してから初めて迎えるオリンピックだった。現地との時差が8時間と大きく深夜に試合が中継された影響もあり、韓国では「テレビスマートフォン」やタブレットパソコンを使って競技を見ながらSNS上でつぶやく人が急増した。オフラインではひとりだけど、SNSでは街角応援並みに大勢が集まり盛り上がった。

 個人放送局「アフリカTV」は、動画サイトでありながらロンドンオリンピック中継権を買い、モバイル向けに放送した。スマホからオリンピックを観たいユーザーがアフリカTVに殺到し、ユーザーが前より20%も増えたとアフリカTVは発表した。個人放送局らしく、韓国選手が金メダルを獲得した瞬間を集めて個人がコメントを付けて放送する動画も人気を集めた。


 ポータルサイト最大手のNAVERもオリンピックをストリーミングで中継した。オリンピック期間中、パソコンからストリーミングを視聴した人が3分の1、スマホやタブレットPCから観た人が3分の2を占めた。オリンピック関連情報やニュースも、モバイルから利用した人が圧倒的に多かった。NAVERのスポーツコーナーのモバイルページビューは、オリンピック期間中毎日1億を突破し、いつもより4倍も増えたという。2番目に大きいポータルサイトのDAUMは、オリンピック競技ハイライト場面のVOD再生回数が5200万回、このうち70%がモバイル端末からの視聴だったと発表した。


 男子サッカーの3位決定戦があった8月11日は、韓国のスマートフォンユーザー約2900万人のうち1000万人がNAVERのモバイルサイトにアクセスしてオリンピックニュースを読んだ。この試合はモバイルトラフィック最高記録を更新したほどだった。サッカーの試合結果を翌朝動画で観ようというユーザーも増えたことから、同試合の動画再生回数は1000万回を突破、史上最高を記録した。それまでは、キム・ヨナのバンクーバー冬季オリンピック動画が再生回数900万回で1位だった。


 各ポータル会社は、オリンピック選手団を応援するための特設ページを運営した。NAVERの場合、ユーザーが書き込んだ応援メッセージは42万件、そのうち30万件がモバイルから書き込まれたものだった。 



キャリアが提供するIPTVに脚光


 オリンピックを契機に、キャリアが提供するモバイル端末からIPTVをリアルタイムで視聴できるサービスも人気急上昇。SKテレコムの「Btvモバイル」は、全ての地上波放送とオリンピック中継、CATVの40チャンネルをハイビジョンクラスの画質でLTE端末向けに提供している。現在はリアルタイム放送が中心で、10月以降IPTVと同じくVODも利用できるようにするという。動画サイトのモバイル放送よりも画質がきれいなところが売りである。キャリアが加入者を伸ばしたがっているLTE高速ブロードバンドを宣伝するためのツールとしても、オリンピック中継は注目を浴びた。


 LGU+もLTE対応スマホからハイビジョン画質でIPTVを視聴できる「U+HDTV」を開始している。1秒当たりの画面伝送を1.5Mbpsから2Mbpsに上げ、韓国では最も画質がきれいなモバイル放送と宣伝している。40型のテレビにLTEスマホをつなげて視聴しても違和感ないほどの画質で、ワンセグに比べると10倍もきれいな画質なのだとか。最近、電車の中でワンセグを視聴している人を滅多に見かけなくなったと思ったら、こんなに画質がきれいなモバイル放送が続々始まっていたのか。LGU+はLTEスマホ向けに1万本のVODも提供する。






LGU+のLTE対応スマホ/タブレットPC向けIPTVサービス。1秒当たり映像伝送速度を1.5Mbpsから2Mbpsにアップグレードし、ハイビジョンクラスの画質が自慢。高画質モバイル放送があるからか、ワンセグを利用している人を滅多にみかけなくなった



 次のオリンピックはテレビの買い替えよりスマホの買い替えCMがもっと頻繁に流れそうだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年8月17日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120817/1059922/

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