スマホ用ディスプレイの覇者争いに活気づくゲーム市場

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アップルの次世代スマートフォン「iPhone 5」には、既存の平面ではなく曲面ディスプレイが搭載されるらしいとネットで話題だ。韓国のサムスンとLGのスマートフォンも、この5月からディスプレイ競争を始めている。今まではCPUやUI、薄さ、軽さに焦点を当てていた。

 ディスプレイ競争のきっかけはLGのスマートフォン「Optimus Black」。世界で最も明るい700カンデラ(cd、発光体が放つ光の強さの程度を表す単位)のディスプレイを搭載したと大々的に宣伝したことから、サムスンの「Galaxy S2」が搭載するSuper AMOLED Plusがいいのか、LGの「Optimus Black」が搭載するIPS液晶のNOVA Displayがいいのか、ネットではユーザー同士の口コミ合戦が熱くなっている。


 LGによるとNOVA Displayは最高技術の液晶だそうで、現存するスマートフォンディスプレイの中で最も明るく、それで「新星」という意味のNOVAと命名したという。サムスンのスマートフォンより2倍ほど明るいので、どんな場所で見ても目が疲れにくいというのが売りだ。







LG電子は「世界で最も明るい」というNOVA Displayを搭載したスマートフォンOptimus Blackを発売し、スマートフォンのディスプレイ競争を巻き起こした



 サムスンも負けていない。Super AMOLED Plusはディスプレイのピクセル構造をRGB方式に変更したもので、自然の色の再現力、明暗比率、ディスプレイの反応時間、消費電力、どれをとってもLGのIPS液晶とは比べものにならないほど優れていると宣伝する。


 LGは明るさ、サムスンは色が鮮明、という点が特徴である。ユーザーの間ではより鮮明で色鮮やかなのはGalazy S2、野外でも画面が見やすく可読性が高いのはOptimus Black、Webブラウザー画面の解像度はiPhone 4、といった具合にそれぞれ特徴があると分析されている。


 Pantechも新しく発売したスマートフォン「Vega Racer」にゲームを躍動的に楽しめ、正面からは見えても横からはのぞけないシークレットビュー機能が付いたディスプレイを搭載していることをアピールした。


スマートフォンがディスプレイ競争を始めたら、モバイルゲーム業界も忙しくなり始めた。韓国人がスマートフォンでもっとも利用するコンテンツは「ゲーム」と「動画」といわれていることから、より鮮明で明るいディスプレイでやってみたいと思わせるゲーム開発に余念がない。


 サムスンもGalaxy向けキラーアプリとしてゲームを育てる方針であることを発表した。GalaxyのスマートフォンとタブレットPC向けに、ソーシャルネットワークゲームを準備しているという。時期は確定できないが、ソーシャルネットワークゲームをプリインストールして販売する可能性もあるというから楽しみだ。韓国では「モバイルゲーム=中小ベンチャー」の分野という認識があったので、サムスンという韓国を代表する大手が参加することで市場が大きく伸びるのはないかと期待されている。


 またアプリストアにも変化が表れ始めている。韓国はオンラインゲーム等級制度があり、韓国内で流通するすべてのオンラインゲーム(モバイル向け含む)は審議を経て、利用できる年齢に制限が設けられる。そのため世界市場をターゲットにするアップルのApp StoreやグーグルのAndroidマーケットは韓国で審議を得るのは難しいということで、ゲームというカテゴリーを消してサービスを提供していた。ゲームを利用するためにはエンタメのカテゴリーから入るか、ゲームの名前を検索して利用するしかない。


 だがここにきて、世界の流れに応じて規制緩和すべきというゲーム業界の意見を韓国政府が受け入れ、2011年の7月あたりからは、アプリ開発者が自主的に等級を付けて青少年を保護するという条件で、ゲームアプリを提供してもいいことになりそうだ。


 さっそく人材のスカウト競争も始まった。ポータルサイトや大手オンラインゲーム会社はスマートデバイス向けゲームアプリ専門会社を設立し始めていて、個人でゲームアプリを制作し、韓国以外の国で販売して大ヒットさせたことで有名になった開発者を自分の会社にスカウトしようとしているのだ。携帯電話向けのモバイルゲームをスマートフォンやタブレットPC向けに手直ししたり、3Dを加えたり、2011年はゲームアプリの転換期になりそうだ。


 韓国コンテンツ振興院によると、韓国のモバイルゲーム(ゲームアプリ含む)市場規模は2010年の4242億ウォン(約297億円)から2011年には4878億ウォン(約341億円)へ、13%程度の成長が見込まれている。ゲーム産業協会の関係者は、「スマートフォンのディスプレイもゲームしやすくどんどん技術がよくなっているし、さらにゲームアプリを正式に販売できるようになれば、4878億ウォンどころか8000億ウォンは軽く超えるだろう」と期待を隠せない様子だった。


 オンラインゲーム大国の次はゲームアプリ大国になれるだろうか。どんな楽しいゲームが登場するのか、7月が待ち遠しい。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年5月27日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110527/1032055/

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