スマートフォンで冷蔵庫の中身まで管理、顔写真から好きそうな音楽をお薦め [2013年11月18日]

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韓国ソウル市にあるCOEX(コエックス)展示場で、2013年11月13日から15日まで「2013国際スマートホーム・ビル展示会」が開催された。産業通商資源部(部は省)が主催し、韓国スマートホーム産業協会が所管するイベントである。

 スマートホームやヘルスケア関連団体のフォーラムがメインのイベントなので展示会の規模は大きくなかったが、サムスン電子と大手キャリア(通信事業者)のKTが「スマートホーム」を体験できるブースを出していた。会場は大学入試のテストを終えて団体観覧に来た高校生で大いににぎわっていた。


団体参観に来た高校生向けにクイズ大会中のサムスンのブース。サムスンのスマート家電の機能やサービス名を当てるクイズで盛り上がる。

サムスンはブース内にスマートホームを再現

 サムスンはスマートフォンで、スマート冷蔵庫、スマートTV、掃除機、洗濯機、エアコンをコントロールできる「サムスンスマートホーム」をブース内に再現した。スマートフォンがリモコン代わりにとなり、家の外にいてもインターネット経由で家の中の家電を制御できる。「外出モード」に設定すれば一斉に家電や照明の電源が消えたり、家に着く20分ぐらい前に「帰宅モード」にすると、エアコンが稼働して快適な温度にしてくれたり、という機能がある。

 こうした機能は何年も前からあり、パソコンから利用できた。今回はスマートホーム制御をアプリにして、家電のアイコンをタッチするだけで楽に制御できるところを強調した。サムスンのスマートホームはお年寄りでも十分使いこなせる、生活が楽になるといったことをアピールした。

 サムスンのブースで最も人が集まっていたのはスマート冷蔵庫の前だった。冷蔵庫のドアにあるディスプレイとスマートフォンが連動し、賞味期限切れ防止、買い忘れ防止を助けてくれる。まだ商品を冷蔵庫に入れるだけで中身と賞味期限情報がインプットされる、という段階まではなってないので手動で入力しないといけないが、冷蔵庫のどこに何があってそれぞれの賞味期限はいつまでなのかを分かりやすいアイコンで冷蔵庫のディプレイ上に表示する。賞味期限が明日までの食材は何か、買い足さないといけない食材は何か、といった情報を冷蔵庫が持ち主に知らせてくれる。

 この情報はスマートフォン上のスマートホームアプリからも確認できるので、「ミネラルウォーター残量1本」「賞味期限が明日までの牛乳があります」といったメッセージが登場し、買い物リストに追加するか、賞味期限前の食材で作れる料理のレシピを検索するか、といったことを選択できる。冷蔵庫の中にあることをすっかり忘れて干し乾びてしまった野菜、どろどろになった牛乳、賞味期限が2年前に切れた調味料なんかが冷蔵庫の中に転がっている余地を与えない。冷蔵庫に余計なものが入っていないので、省エネにもつながる。

大手スーパーと提携も

 買い物リストに登録した商品は韓国スーパーマーケット最大手のEMARTと連携して、スマートホームアプリや冷蔵庫のディスプレイから注文・決済して自宅まで配達してもらうことを計画している。実際にサムスンのスマート冷蔵庫からEMARTに注文できる仕組みにはなっているが、現在はEMART側のサーバー点検のため一時的に注文をストップしているという。スマート冷蔵庫のディスプレイは額縁や家族へのメモ帳としても使え、天気予報、ニュース、スケジュール帳、料理情報といった機能もある。

 また、家電が自ら自分の不具合を知らせるという機能も面白かった。


スマートテレビの右画面に、家電が自ら不具合を知らせてきた。どう対処すればいいのかイラストが登場するのでマニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても済む。

 例えば、掃除機内にゴミがいっぱい溜まると、スマートテレビを観ている途中、画面右に「掃除機のゴミがいっぱいになりました」というメッセージが出てくる。同時に、どうやればゴミを取り出せるのかイラストが出てくる。最近はコンパクトでデザインを優先した家電が増えているため、ぱっと見て直観的に動かせないものもある。このスマート診断機能があれば、マニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても、その場ですぐ対処できる。家電はすべてWi-Fiでつながっている。

KTは「ALL-IP基盤スマートホーム」を訴求

 キャリアのKTはALL-IP基盤のスマートホームということで、KTのスマートフォン型インターネット電話機(サムスン電子GALAXY 070)、「スマートホームパッド2HD(GALAXY Note 10.1)」、スマートテレビが連動したコンテンツサービスを展示した。「スマートホームフォンmini」という名前の固定電話は4インチのシンプルなスマートフォンで、Wi-Fiを利用してインターネット電話、音楽ストリーミング、VODを利用できる。
 


キャリアKTは、ALL-IP基盤のスマートホームをテーマに、タブレットPCや家庭用インターネット電話機から楽しめるKT独自のコンテンツを紹介した。

 KTの音楽ストリーミングサービスは140万曲ほど保有していて、ユーザーに合った音楽を選んでくれるという機能がある。しかし、なぜか音楽を薦めるために顔写真を要求してくる。顔写真から好きそうな音楽を選んでくれるという不思議な機能が付いているのだ。

 ちなみに人相を見るのではなく、髪型とか、服の色とか、その人のスタイルを分析して好きそうな音楽を選んでいるとのことだった。ランダム再生とあまり変わらないような気がするが、知らなかったいい曲に出会えるチャンスもあるので、これはこれで楽しい。

 スマートホームパッド2HDは、家の中ではKTの家庭向けHubを使うことでハイビジョン画質のVODを視聴できるのが特徴だ。家の外ではWi-Fiで普通画質の動画を視聴できる。10.1型のタブレットであっても、ハイビジョン画質だと色もくっきりしてより立体的に見えるので、画面が小さいとは感じなかった。

テレビをタブレット代わりに使う単身世帯に焦点

 韓国でも一人暮らし世帯が増えていて、タブレットをテレビ代わりにする人も増えた。キャリアのモバイルIPTVを利用すれば、地上波放送とケーブルテレビ合わせて60チャンネルほどリアルタイムで受信できるので、タブレットは十分テレビ代わりになる。

 この他に、政府から予算をもらっている実証実験の展示もあった。ウエアラブル端末で人の心理状態を把握して適切なメンタルケアを提供できるようにするヘルスケア、顔の表情や動きなどを分析して罪を犯しそうな人を選び出すカメラ、透明なビニール1枚にしか見えないのに電源を入れると英字も韓国語も入力できるキーボードになり、腕や太ももに巻いても使えるものなどが面白かった。

 またスマートホームとも政府の技術開発とも全く関係なさそうに見える「あなたの家は大丈夫ですか!」と恐怖心をあおる防虫グッズのブースがあったり、韓国SNS協会が「韓流SNS」というのを宣伝していたり、企業向け販促品を宣伝するブースもあった。COEX展示場では年中何かしらIT関連の展示会を開催しているので、出張や観光のついでに活気あふれる韓国の展示会を経験してみるのも、いい経験になるだろう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131115/1112223/

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