スマート教育はロボットを活用する時代へ、韓国2大キャリアが子供向けロボットで競う [2013年6月28日]

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韓国は、教育分野でのIT活用、スマート教育に熱心な国だ(
関連記事)。2013年6月18日~20日、韓国・ソウル市にある展示場COEXで、スマート技術と教育の融合をテーマにした「スマートラーニングコリア」展示会が行われた。一般向けではなく、ビジネス・バイヤー向けの展示会ではあったが、スマート教育を実践している小中学校の教師が参加するセミナーや模擬授業もあり、教師と企業が一緒になって教育の未来を考える展示会だった。

 展示ブースの中で目立ったのは、大手通信事業者(キャリア)であるSKテレコムとKTの2社が、幼児向け教育ロボットを目玉にしたことである。


 SKテレコムは「アルバート」という名前のロボットにスマートフォンを装着して使う方式である。ロボットとスマートフォンの他に、専用のお店ごっこゲームボード、英単語カード、英語絵本などを展示した。









ソウル市の展示会でSKテレコムが展示した幼児向け教育ロボット「アルバート」



 英語絵本は電子ペンでなぞると英語を読み上げる。ペン先に付いているカメラで自分の顔を撮影してアプリに連動させると、ロボットの画面には絵本の主人公が自分の顔になって登場。子供が楽しく英語を勉強できるようにしている。英語絵本は600種類を販売。英単語カードをロボットにかざすと読み上げ、韓国語で意味を教えてくれる。


Bluetoothサイコロでお店ごっこ


 「お店ごっこゲームボード」はロボットがお客、子供が店員になる。Bluetooth付きサイコロを投げると、サイコロの数字をロボットが認識して、その数だけボード上のマスを進められる。


 マスには魚、野菜、文房具、セール会場といった文字が書いてある。ロボットは該当マスに書いてあるカテゴリーの中から商品を選んで「○○をください」と子供に示す。子供は商品が書いてあるカードをロボットにかざす。ロボットはBluetoothでカードの情報を認識し、ロボットの画面(スマートフォンの部分)にカードに書いてある商品が登場する。


 さらに、画面にはロボットがお金を差し出す場面が登場し、ロボットは「おつりください」と言う。子供は専用の紙幣をロボットにかざし、おつりを渡す。ちゃんと計算しておつりを渡すことで算数の勉強につながり、遊びながら学習効果もあるということだ。


 スマートフォンにゲームコントローラーをダウンロードすることもできる。スマートフォンをリモコンにしてロボットを動かしてボールを入れるサッカーゲームで遊ぶ、といった使い方になる。今までロボットというと大きくて銀色に光る巨体をイメージさせたが、SKテレコムの教育ロボットは手のひらサイズでとても小さく簡素なものだった。


 スマートフォンが画面になるので、ロボットとゲームボード、絵本や電子ペンまで一式全てをそろえても2万円もかからないお手頃価格である。スマートフォンを取り付けて使う仕組みなので、ロボット自体を買い替えなくてもスマートフォンにアプリをインストールするだけで幅広い機能を使える。



KTは歌って踊れるロボットを展示


 もう一方のKTは、2012年から発売している水色のロボット「Kibot2」を展示した。7インチの画面が付き、30cmぐらいの高さで、頭の後ろに投影のための“ビーム”が付いている。ロボットにアプリをダウンロードしたら、ビームを使って壁一面にアプリ画面を映し出し、親と子供が一緒に歌ったり踊ったり絵本を読んだりできる。英語や韓国語の文字を指でなぞりながら筆順を練習するアプリもある。筆順通りに書かないと次に進まない。









KTが展示した教育ロボット「Kibot2」



 ロボットの頭や足をなでると画面が笑顔になり、放置すると眠そうな顔になる。専用のカードをロボットにかざすだけで親の携帯電話につながる仕組みもあるので、防犯カメラとしても使える。Kibot2は一括払いだと7万円、KTのインターネットユーザーの場合は2年契約で月1500円ぐらいの利用料をネット料金に上乗せする。KTは、Kibot2用学習アプリ開発者を育成するための教育プログラムも運営している。


キャリアは音声通話収入を補う狙い


 スマートフォンが登場してから減り続ける音声通話収入を補う狙いもあって、SKテレコムとKTは「スマート教育」に力を入れている。2015年からは韓国全土の学校で「デジタル教科書」を使えるようになる。このため、親は子供が小学校に入る前にデジタル教科書に備えたいとして、タブレットを購入して学習アプリを利用させるケースが増えている。


 KTが無料提供している「オーレ幼稚園」「オーレ小学校」は算数・国語・社会などの学習効果があるクイズとゲームを提供するアプリ。初めてスマートフォンやタブレットを使う子供向けのアプリになっている。学習レベルを分析して、それに合わせてより難易度の高い学習アプリを勧めてくれる。「子供に学習アプリを使わせてみたいけど何から始めたらいいのか分からない」という親に好評だ。


 対するSKテレコムは有名予備校と提携し、中高生向けの本格的な受験勉強アプリを有料サービスとして提供している。大人向けの英語学習アプリにも力を入れる。展示会で紹介していたのが「Tムービーイングリッシュ」。最新映画を観ながら英会話を学習できるというものだ。スマートフォンで映画を再生すると、右側の透明なスクリーン上に英語字幕と韓国語字幕が登場する。もう一度見たい場面を繰り返したり、分からない単語をクリックすると詳細な意味が出てきたり、字幕を消して映画だけ見たりできる機能もある。映画ごとに覚えておくといい英語表現をまとめて解説する機能も学習の助けになりそうだ。


 SKテレコムは、現行の「アルバート」よりさらにかわいくて使い勝手が良いという新たな子供向けロボット開発も進めているという。2012年下期には「キッズタブレット」と呼ぶ幼児向け7インチタブレットの広告が目立ったが、今年の展示会ではロボットを前面に打ち出している。


国策として「スマート教育」推進


 今回のスマートラーニングコリア展示会の内容は盛りだくさんだった。英語・算数といった科目別学習アプリ、スマート教室内で3D映像やAR(拡張現実)を使う模擬授業、紙の教材を手軽にアプリに変換できるツール、デジタル教科書を教師がカスタマイズして使えるようにするツール、学習履歴管理・学習レベル分析といったソリューションに至るまで、びっしりとブースに並んでいた。


 韓国新政権のICT(情報通信技術)政策はソフトウェア・コンテンツ産業育成、クリエイティブな人材養成、ベンチャー投資活性化に重点を置いており、スマート教育関連ベンチャー投資も積極的に行うとしている。政府が営業担当者になりスマート教育関連端末とシステムを輸出することも盛んに推進する方針だ。次回のスマート教育関連展示会は9月にソウル市で開催される。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130627/1096136/

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