2 韓国で生きる道
ここ数年、韓国では女性を主人公にした時代劇が大人気だ。日本でも強い女性が主人公になることは多いが、韓国ではちょっと違う。
昨年までは、男に騙されても差別されても、何があってもめげず成功する女性が主人公だったが、今年からは実在した専門職女性を主人公にすることが多い。
朝鮮時代の女刑事「茶母(ダモ)」、宮中で料理をする宮女から初の王様担当医女になった「大長今(デジャングム)」と続けて歴史上の専門職女性がテレビで活躍している。あの大昔にも職を持ち大活躍した女性たちがいたことを全く知らなかったので、毎回楽しみに見ている。
韓国では男女平等だとか、代理満足のために女性をドラマの主人公にする時代はもう終わったように思える。男性に媚びて成功するとか、女の人生は旦那さんで決まるとか、そういう考え方がなくなり、男性と勝負して勝ちたい、自分が支配したい、そういう女性が増えている。
日本でも公開された韓国映画「猟奇的な彼女」(インターネット言葉の影響で、韓国では猟奇殺人とかの猟奇ではなく、個性のある、面白いという意味で使われるようになった)も女性に対する意識を変えたが、男性の目に映る強い女性が主人公で、ボーイフレンドに暴力をふるうけどかわいいから許されるとか、現実にはあり得ない「美貌と力」を持ち合わせた女性を理想とする男性の願望を表した映画なので、女性には目障りな場面が多かった。でも韓国の若い世代の変化を象徴している映画なので、ぜひ見てほしい。
韓国の変化のきっかけは、やはり1998年の経済危機だった。失業と就職難が続く中、性別よりは実力を評価するようになったし、インターネットが社会の中心になってからますます相手がどういう人であろうと、中身が大事だと思うようになったのも女性を強くした。
韓国企業の人事課のほとんどが、今では定年関連業務をしなくなったと聞いても韓国人は驚かない。定年まで残る人がいないからだ。45歳には会社を辞めるべきだとか、50を過ぎても会社に残るのはどろぼうと同じだとか、62歳(本当の定年)まで会社に残る人は社会の敵だとか、とにかくすごい話ばかりである。この嵐のような韓国社会の中では、女も男も毎日がサバイバルだ。この緊張感が今の韓国を動かしているとも言えるが、韓国も高齢化社会。性別に関係なく、お年寄が自立できる日が早く来ないと危ないかもしれない。
[BCN This Week 2003年10月13日 vol.1010 掲載] Link