韓国観光公社が実施した日本人観光客が韓国でぜひ食べてみたいものランキング上位に「韓定食」があった。もち米、黒米、栗、ナツメグ、黒豆、きのこを入れた釜飯に、チゲ(辛い鍋もの)にスープ類に焼き魚、カルビなど12種類以上のおかずが並ぶ。これが普通の韓定食だ。韓定食は元々王様のお膳を真似た両班の食事だ。でも、韓定食はおかずが多ければいいものではない。その1品1品には全部意味があった。
王様は全国各地の特産物を口にしながら、平民の生活ぶりを報告してもらっていた。特に新しい食材を生み出すことにも積極的で、農家の人達が食べずに捨てるものでおかずを作る競演を開いた。日本でよくチャンジャと間違った名前のついた塩辛(チャンジャは内蔵という意味で韓国では通用しない。単品ではなく胡麻油とねぎを混ぜて食べるか鍋物にする。チジミも韓国の方言で正式にはジョンという)や屋台のトッポギ(もちを辛く炒めたもの)は宮廷で作られるようになって韓国全土に普及したと言われる。特にトッポギは、元々王様だけが食べられる高級料理で野菜と牛肉、もちを醤油で炒めたものが今の辛い庶民的な味に生まれ変わった。
外国人はよく、韓国ではどうしてこんなに食べきれないほどおかずを並べるのか、しかもどうしておかずはタダでどんどんお代わりしてくれるのか、残してもいいのか、と疑問に思うようだ。これは儒教の影響で何でもおじいさんやお父さん最優先、今でも美味しいものはまず年長者のおじいさんやおばあさんが味見してから家族の食卓に並ぶ。昔は年長者から先に食事をして最終的にその残りを子供や家来達が食べていたので、わざとちょっとだけ手をつけて残してあげた。全部平らげるのは「足りない」の意味になるので、食堂でもどんどんお代わりしてくれる。
今では残飯処理に年間2兆ウォン(約2000億円)を無駄使いしていると、残さないようキャンペーンもしているが、何百年の習慣なのでそう簡単にはいかない。食堂によっては残すと罰金を取るところもあるが、「テーブルの脚が折れるほど」食べ物を並べないとお店もお客も満足しないのが事実だ。
時代が変わっても、お酒の飲み方と親の前でタバコは吸わない礼儀は守られている。年長者が匙を取るまで先に食べないし、お酒を飲むときも右側に顔をまわし両手を沿えて飲む。女性は家族以外の男性に愛想よくお酒を注いだりすると夜のバイトでもしているのかと怪しまれる。お酒の注ぎ足し、挨拶を2度以上ぺこぺこするのは死んだ人にする礼儀なので好まない。韓国は新しいようで古いところがまだ色々残っている。
[BCN This Week 2003年11月17日 vol.1015 掲載] Link