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ソウル市とビッグイシューコリアは、ホームレスに中古スマートフォンを提供する「The Big Smart~ホームレス、SNSで社会とコミュニケーションする」事業を始めると2012年6月27日発表した。ビッグイシューコリアは2010年5月から韓国でも販売されるようになった雑誌『ビッグイシュー』を発行する会社で、販売収益でホームレスの自立と社会復帰を支援している。
The Big Smartはソウル市とビッグイシューコリアが窓口となって中古スマートフォンを個人や企業から寄付してもらい、ホームレス自立センターに入居している2000人に提供するというもの。
ウェル情報通信が同センター入居者向けに、既存基本料の6分の1ほどである月6000ウォン(約440円)のプリペイドでスマートフォンが使えるようにした。ウェル情報通信はキャリアと提携して、スマートフォンや携帯電話、Wibro(モバイルWiMAX)をプリペイドで提供している。放送コンテンツ振興財団とメディア教育研究所がスマートフォンの使い方、SNSの使い方を教える。
第1回としてソウル市のセンターに入居しているホームレス30人を対象に、7月17日に1泊2日でスマートフォン/SNS/アプリの使い方教育プログラムを実施する。プログラムを修了した人だけスマートフォンがもらえる。
情報化社会という言葉すら古臭く思えるほど、韓国ではほぼ全ての情報が電子化されネットに掲載される。インターネットと携帯電話が使えないと、就職情報も日払い労働の仕事も見つけられない。求職者にとってインターネットと携帯電話は重要な武器になる。スマートフォンがあればネットも電話も使える。しかしホームレスになった人達は信用不安で携帯電話を契約できない場合が多い。
ソウル市は社会的企業やキャリアと一緒に、まずはホームレスに中古スマートフォンを提供することで、社会復帰のきっかけを作ろうとしている。情報の死角に置かれたこうした人達がスマートフォンを手にしてSNSなどを利用することで社会とつながる。そうすれば、社会復帰したい意欲を掻き立てられるのではないか、というわけだ。
それにスマートフォンを使ってネットを検索すれば、就職情報はもちろん、ニュースを見たり、電子書籍を読んだり、たくさんの情報を得られる。それらがきっかけになって人生が変わるかもしれない。ソウル市内はフリーのWi-Fiスポットが多いので、3Gデータ通信料金に加入しなくても、スマートフォンがあればインターネットが使える。ホームレスの立場でスマートフォンを使って市民に情報を提供することで、お互いの理解を深めることもThe Big Smartの狙いの一つである。
ソウル市は中古スマートフォンがあまり集まらない場合は、サムスン電子、LG電子に協力を求めるとしている。
しかし、中古で寄付されたものとはいえ、ホームレスに高価なスマートフォンを無料提供することに反対する意見もソウル市民の間では多い。代表的な意見は「スマートフォンの普及率が高くなったとはいえ、ホームレスに無料でスマートフォンを提供するのは賛成できない。もらったスマートフォンを転売してそれが犯罪に使われたらどうするのか」というものだ。ニュースのコメント欄には、そうした意見が多数ある。
ホームレスとスマートフォンの組み合わせがどのような効果を発揮するか、今大きな話題になっている。
趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
[2012年7月6日]
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120706/1055008/