韓国インターネットショッピングの市場規模は2008年が20兆ウォン(約2兆円)を超えると展望されている。サムスン経済研究所の調査によると、2007年の市場規模は15兆8000億ウォン(約1兆5800億円)で、今の成長度合いから予測すると、年内には20兆ウォンを突破し、デパートの売り上げを追い越すに違いないというのだ。
韓国ではすでにインターネットショッピングが大型ディスカウントショップ、デパートに続く3大流通チャンネルの一つになっている。国内全体の小売流通の中でインターネットショッピングが占める割合も7.4%とアメリカの2.8%や日本の2.9%と比べると2.5倍ほど高い。
とりあえずパソコンからネットで検索という習慣が身に付いているので、ネットで物を買う機会が増えている。何か買おうと思ったときにもまずはネットで価格を検索して最安値の店を探す。そうすると大抵、実店舗を持たないインターネットショッピングモールやオープンマーケット(オークションのように業者でも個人でも自由に売ったり買ったりできるショッピングモール)の方が安いので、そのまま購入へと自然につながる。
とはいえ、安さだけがネットショッピングの売り上げ増加を支えているわけではない。秘訣は口コミ情報にあるようだ。
何の予備知識もないままに買うよりも、商品の評価を確認してから買う方が良いに決まっているのだが、このごろは友達のアドバイスよりもネットのショッピングサイトに投稿されている商品の評価を信頼する傾向が高まっているというから驚いた。
ネットに書いてある商品評価なんていくらでも嘘が書き込めるではないか!とか、そんなの日本のショッピングサイトだってやっていることではないか!と思ったのだが、韓国ではちょっと事情が違う。情報の共有に積極的なユーザーが増えていて、テキストで「買ってよかったです」、「配送が早かったです」とか一行程度の文章を書き込むレベルではなく、写真や動画付きで積極的に自分が買った商品の良し悪しを評価して投稿するユーザーが多いのだ。
ネット販売が難しいとされていたファッショングッズやアクセサリー、靴なども、ユーザーが実際に着用した写真を投稿して「ここのスカートはどこどこのブランドよりもサイズが一回り小さいので参考にするように」「モニターで見るよりかなり生地が薄くて、透け透けなので着られるもんじゃない」など正直な評価をまるで自分のブログやSNSサイトに投稿するかのようにショッピングサイトに残していることだ。
このように手が込んだ商品評価を残してくれる顧客には、ショッピングサイトがポイントを提供し、商品をより安く買えるようにしている。その特典を狙って一生懸命に商品評価を登録する顧客がいるという側面があるのは確かにあるが、価格以外の部分でショッピングに関連するコンテンツが豊富になってきたということが、インターネットショッピングを牽引する大きな役割を果たしていると言えるだろう。
大手ショッピングモールは、自社のサイトにはもちろん、個人のブログにも商品評価を残した顧客を対象にしたアフィリエイトを始めた。自分が購入した商品の評価をショッピングサイトと自分のブログの両方に残し、「同じものを買いたいならここをクリック!」という形式のリンクを貼り、そこからの売り上げの1~2%をポイントとして還元している。そのポイントを使えば次回以降のショッピングで割り引きしてもらえるというわけである。
一部のオンライン書店では商品評価をブログに残してリンクを貼ると、売上の2~3%分のポイントが与えられ、一定金額を超えると書籍購入に利用できるというアフィリエイトを実施していたのだが、売り上げ向上にほとんど貢献していなかった。女性顧客がメインになるファッショングッズや化粧品などを扱う大手ショッピングモールサイトでは、商品評価という口コミ情報が、売り上げの向上につながる何よりも効果的なコンテンツだというわけである。ちなみに、日本では幅広く利用されているアフィリエイトだが、実は韓国ではブログでお金を稼げるといったら今までGoogle Adsenseぐらいしかなくて、アフィリエイト的なサービスは導入されていなかった。
インターネットショッピングの広がりとともに、インターネットショッピングをキーワードに顧客を増やそうという動きもある。
インターネットショッピング市場より大きくなるという見込みからか、銀行も関連サービスを提供し始めた。インターネットで物を買うときに口座振替で決済すると、その口座に決済金額の0.5%(最大750ウォンまで)がキャッシュバッグされるというのだ。しかも決済金額が口座から引き出されると同時に銀行からキャッシュバック分が振り込まれるというからなんともスピーディーなキャッシュバッグ! クレジットカードを使うと割引やキャッシュバッグの特典があるというのはかなり前から実施されているが、口座振替に特典が付くのは初めて。一回5000ウォン(約500円)以上の取引に適用されるという制限はあるが、キャッシュバック回数は無制限だ。
韓国の民放放送局SBSは、ラジオ放送をネット経由で聴ける専用アプリ「ゴリラ」を使って、ラジオを聴くたびにポイントが貯まり、それをオンラインショッピングサイトである「オークション」の商品を割り引いてもらえるポイントとして使える「ポイント交換イベント」を実施している。この頃は車の運転中ぐらいしかラジオは聴かなくなったし、夜もインターネットばかりを眺めることが多くて青春=深夜ラジオいうこと図式はなくなってきているし、ラジオ番組のお便りも携帯電話からSMSを送信するかインスタントメッセンジャーで送信できるので、はがきを書くこともなくなった。インターネットでラジオを聴きながらショッピングを楽しんでほしいという計らいなのか。
ただ、韓国でインターネットショッピングの市場規模が成長しているからといって、全てのサイトが大成功しているわけではない。
大手企業が投資したのにいつの間にかネットから消えてしまったサイトもたくさんある。去年の秋にサイト閉鎖を決定し、大騒ぎになったある大手ショッピングモールも値段を安くし、口コミ情報もたくさん集めた。なのに、なぜ失敗したのだろうか。それは売り手が集まらなかったという理由だった。クーポンとか激安セールとか、買い手向けの特典は多いのに、売り手のメリットはほとんど考えられていなかった。成功している多くのショッピングサイトは値段が安く、写真や動画付きの商品評価がたくさん登録されている。それに加えて、売り手が楽にビジネスできる工夫もたくさんしてある。きちんとこの3つのポイントを押さえている。
こうやって立派なことをいうのは簡単だけど、いざ実践するとなると公式通りにいかないのがインターネットビジネスというもの。ショッピングサイト運営者のみなさん、がんばってください。ちなみに個人的な希望になるけど、海外への発送サービスも増やしてください!
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2008年4月16日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080416/1001025/