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2025年に向けた米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選した。韓国内では半導体産業を巡りこれからどのような戦略をとるべきか、大きな話題になっている。Samsung Electronics(サムスン電子)とSK hynix(SKハイニックス)は2022年に米バイデン政権が定めたCHIPS法(CHIPS and Science Act)に基づく補助金を前提に米国内に半導体工場を建設しているが、トランプ次期米大統領はCHIPS法に対し何度も否定的な意見を述べてきたからだ。トランプ氏は、選挙運動中も米国の人気ポッドキャスト『The Joe Rogan Experience(ジョー・ローガン・エクスペリエンス)』に出演し、「関税を引き上げれば海外企業は自発的に米国に半導体工場を作る」として補助金を支給する必要がないという意見を述べている。
現在、米Intel(インテル)は米国内半導体工場建設に1000億米ドルを投資し、85億米ドルの補助金と110億米ドル規模の融資と税額控除を受け取ることになっている。台湾積体電路製造(TSMC)は2030年までに650億米ドルを半導体工場建設に投資する代わりに66億米ドルの補助金を、サムスン電子は同約450億米ドルを投資する代わりに64億米ドルの補助金を、SKハイニックスは同約38億米ドルを投資する代わりに4.5億米ドルの補助金と5億米ドルの融資を受けることにした。ただし、現時点で補助金は支給されていない。サムスン電子の場合、補助金の支給が遅れたことで、米テキサス州テイラーに建設中の工場の稼働開始時期を延期したという噂もある。
2024年11月15日(現地時間)にはTSMCが一足先に米商務省と補助金支給に関する拘束力のある合意をした。TSMCは中国の顧客には7nm世代以降のAIチップを供給しないことを決めたという。韓国内ではサムスン電子とSKハイニックスはどうなるのか焦る雰囲気があったが、バイデン米大統領はトランプ次期大統領が2025年1月20日に就任する前にCHIPS法に基づき補助金を支給する契約締結を急いでいるという報道もあり、韓国勢も補助金を受け取るとみられている。CHIPS法が無効になった場合、もっとも打撃を受けるのはIntelだからだ。
しかし問題はタイミングである。手続きが長引き、必要な時に補助金が支給されない、または補助金の規模が縮小した場合、半導体工場建設スケジュールがこじれてしまう。サムスン電子とSKハイニックスは既に米国工場建設に莫大な金額を投資している。補助金はどうなるのか不確実性が高くなったことで株価も揺れている。
トランプ次期米大統領は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げ、輸入品に一律10~20%の追加関税、中国からの輸入に対しては一律60%の追加関税を導入する方針を示している。韓国は米国政府との交渉により、今まで韓米FTA(自由貿易協定)や輸出量クオーター制を利用して自動車輸出や鉄鋼輸出において、関税を回避してきた。トランプ次期米大統領は選挙運動中の10月に開催された「The Economic Club of Chicago」での対談で「辞書の中でもっとも美しい言葉は『関税』だ」と発言し、同盟国に対しても関税を引き上げる姿勢を見せている。関税を上げると消費価格が上がり、インフレを生ずる懸念があるが、それでも関税を上げれば海外企業が米国内で生産を始めるので米国の製造業が生き返ると主張した。
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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
(NIKKEI TECH)
2024. 11.
-Original column