ネットショッピングで大ブレイク、10万ウォンの組み立てPC [2007年10月10日]


日本に秋葉原があれば韓国には竜山(ヨンサン)がある。秋葉原と竜山は、ほぼ同じ時期に都市再開発によって周辺に超高層ビルが建ち並んだ。竜山には立派な駅ビルがオープンし、デパートや映画館、大型スーパーが入店したのをきっかけに、怪しげな男くさい街から、主婦や家族連れが集まるおしゃれなショッピング街に変わってきた。

 秋葉原がフィギュアやメイドといった「萌え」の世界になりつつあるのに対して、韓国の竜山は依然としてパソコン部品や家電、何に使うのかよく分らない電子部品が山積みにされた小さい店舗が迷路のように続く電化街ブロックや、強引な客引きがまだ残っている。


 竜山は、インターネットがなかった時代には「家電やパソコンを買うなら竜山が一番安い」というイメージがあった。しかし、ネットの時代になってからはちょっと検索しただけで竜山よりも安くて親切で無料配送までしてくれるショッピングモールをいくらでも探せるようになり、竜山の客は減る一方だった。竜山の不親切さは韓国でも有名。値段だけ聞いて買わずに帰る、なんてことをするのはかなりの勇気が必要だ。客引きのときはとっても親切なのに、お店の中に足を踏み入れた途端、監禁されたような気分になるというのが竜山スタイル。もちろん、親切なお店もあるにはあるが、素人にはふっかけて、プロには安くするという、客によって言い値がばらばらな。女性には怖すぎて近づけなかった。


 そんな竜山の部品ショップが不況対策に力を合わせてネットショッピングへ進出している。テレホンショッピングやオークションに10万ウォン台(1万3000~2万6000円)で買える組み立てパソコンを出品し、メーカーパソコンの7分の1から10分の1の値段で買える激安パソコンの流行に火を付けた。これにキーボードとマウス、19インチのLCDモニターを付けても30万ウォン以下(約3万7000円)でフルセットがそろってしまう。





































組み立てパソコン本体のサンプル
CPU AMD SEMPRON 3400 3万ウォン
メモリー SAMSUNG DDR2 1GB 2万3000ウォン
HDD HITACHI SATA2 80GB 3万9000ウォン
マザーボード ECS 761GXM-M 4万ウォン
光学ドライブ SAMSUNG CD-ROM 52倍速 1万3000ウォン
電源 A1 350HW 1万7000ウォン
ケース 3Rシステム K400 1万3000ウォン
合計 17万5000ウォン(日本円で約2万2000円)



夏休みや冬休みの特価セールとして提供した10万ウォン台のパソコンは、インターネットを始めたばかりの子供向けに売れることを予想していた。しかしふたを開けてみると、ショップの会員管理用、銀行の顧客センター用など、パソコンの用途はネット検索と文書作成だけというような企業からの発注の方が多かったという。

 10万ウォン台のパソコン本体が登場してから韓国では、「一体いくらぐらいのパソコンを買えばいいの?」と悩む人が増えている。メーカーのパソコンよりも安いのは確かなのだが、選ぶ部品によって値段がものすごく変わってくるので、素人は何を選べばいいのかまったく見当がつかない。結局は予算に応じてお任せで買ってしまうしかないのだが、そうすると竜山式に騙されるのではないか心配してしまう。


 また一部では「CPU にIntelではなくAMDのものを使うと、パソコンが頻繁にフリーズするから使い物にならない。10万ウォン台のパソコンを買っても、安物買いの銭失いになる」と主張しているが、「このごろのAMDのCPUはかなり改善されたので、パソコンの用途がネット検索や文書の作成ぐらいなら十分使える」とアドバイスする専門家も多い。IntelのCore 2 Duoの値段もかなり安くなってきたので、組み立てパソコンの本体は30万ウォン以下(3万~3万8000円)で立派なものが買える。


 パソコンのことは全然分らないので、ネットで組み立てパソコンを買うのは怖いという人のために、1年間無料の訪問修理サービスを提供するショッピングモールも増えている。激安の組み立てパソコンでも、メモリーを1GBも搭載すればWindows Vistaを十分使えるし、オンラインゲームも楽しめる。近頃、社会的現象にまでなっているUCC(User created contents)や動画投稿を利用するための編集機能、3Dのゲームを使うのは厳しいかもしれないが、家庭やSOHOででネット閲覧、メール、文書作成をする程度の用途なら十分使える。パソコンの知識がなくても知識検索(ユーザー同士が質問して答える検索)を利用してアドバイスを得て、プラモデルをいじるみたいに楽々パソコンを組み立てたという人も増えてきた。


 筆者も知識検索から親切なパソコンオタクたちの協力を得てテレホンショッピングで販売している組み立てパソコンを発注したばかり。動画撮影やオンラインゲームがしたいので最上級のものをピックアップしてみたが、それでも40万ウォン(約5万円)ほどと、三星電子やトライジェムといったメーカーパソコンに比べて30万ウォン近くも安く買えた。竜山のショップですべて組み立ててから出荷されるパソコンで、1年間無料の訪問修理サービス付き、OSもプリインストール、クレジットカードで買うと6カ月間無利子の月賦払いなので、1カ月当たり約8000円ちょっとでパソコンを手に入れた。


 これで家のパソコンはノートパソコンも含めて5台になる。2台は処分したいのだが捨てるのもお金がかかるし、何となくいつかは出番があるのではないかという気がして机の上に置きっぱなしになっているが、毎日たっぷり電磁波を浴びるのも体に悪いし、何とかしないといけないかな~。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2007年10月10日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20071005/283895/

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