モバイルゲームを売るにはSNSが必須? 開発者は韓国でKakao、日本でLINEと組む [2013年7月5日]

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韓国では、2012年下半期に中高年までを“ゲーム地獄”に引きずり込んだ国民的人気モバイルゲーム「Anipang」(
関連記事)が成功してから、SNG(Social Network Game)ではない単独ゲーム、つまりSNSとつながっていないモバイルゲームは売れなくなってしまった。アプリストアの人気上位は全てKakaoTalk(カカオトーク)とつながっているモバイルゲームで、大手ゲーム会社のアプリよりもアイデアで勝負するベンチャー会社のゲームアプリが躍進している。2013年6月時点で170を超えるゲームが「ooo(ゲーム名) for Kakao」の名前でアプリストアに登録されている。

 韓国では、単独のモバイルゲームや、「モバゲー」のような(SNSよりもゲームを中心とした)ポータルサイトが提供するゲームよりも、SNGが圧倒的に人気を集めている。それは、SNSが今までゲームに全く興味がなかった人までも顧客にできるプラットフォームだからである。


NHNハンゲームも韓国ではKakaoと組む


 実は、韓国のKakaoTalkでヒットしたモバイルゲームは、日本ではKakaoTalkではなくLINE(ライン)に乗り換えてリリースされることが多い。同じゲームを韓国語バージョンはKakao向けに、日本語バージョンはLINE向けに提供していることがよくある。韓国でSNSといえばKakaoTalkの存在感が大きいが、日本ではLINEを超えるSNSはないからだ。


 KakaoTalkとLINEはSNS事業では全世界で激しく競り合っている(関連記事)。ところが、LINEの親会社である韓国NHNは、韓国内ではKakao向けゲーム「チームナイン for Kakao」を提供するなど、ゲームの供給先としてKakaoを活用している。










NHNハンゲームがKakaoTalk向けに新しく始めた野球ゲーム「チームナイン for Kakao」


 KakaoTalk(KAKAO)とLINE(NHN)は共に韓国資本の企業が開発したSNSだが、海外利用者数が多いことから、韓国モバイルゲームの海外進出プラットフォームになるのではないかと期待されている。現時点でKakaoTalkのユーザーは全世界で約1億人、LINEは1億8000万人に上る。


中高年がソーシャルゲームを楽しむように


 韓国インターネット振興院が発表した「2012年スマートフォン利用実態調査」によると、スマートフォンユーザーの79.7%はKakaoTalkやLINEといったソーシャルネットワークサイトを経由したSNGを利用したことがあると答えた。SNGの利用経験者は10~30歳代は90%以上、40歳代77.2%、50歳代で54.3%と中年層の間でも着実にユーザーを獲得しているのが特徴だ。


 SNS上の友達から「面白いゲームがあるからやってみて」とメッセージをもらいゲームをダウンロードするのが最初のきっかけになっている。広告よりも、友達に勧められる方がダウンロードしてみようという気持ちになるからだ。また、「主にダウンロードするアプリ」についても79.7%がゲームと答えているほど、モバイルゲームは韓国のアプリストアで圧倒的な人気を集めている。


若年層よりも30歳代以上が有料アイテム購入多い


 2013年7月3日ソウルで開催されたゲームテクノロジーセミナーでは、KakaoTalkやSNG開発会社によるモバイルゲームの展望に関する発表が人気を集めた。スマートフォンのゲームアプリの主なユーザーは10~20歳代と思われがちだった。だが韓国で人気のSNGは、ダウンロード数は20歳代の方が多くても、有料アイテムを購入するユーザーはほとんど30歳代以上だという。


 2013年上半期の売上高を比較すると、いち早くKakaoTalk向けにゲームアプリを提供したベンチャーが既存の大手モバイルゲーム会社を追い越した。ゲーム会社が次々にKakaoTalkと手を結んだことで、SNGの種類も豊富になった。


 現状では、まだ「Anipang」「ウィンドランナー」「アイラブコーヒー」のように、中高年層のゲームになじみの薄い人でもすぐに遊び方を理解できるカジュアルゲームの方がユーザー数は多い。だが、この夏からはロールプレイングやシューティングなど本格的なゲームが多数登場している。パソコン用ゲームと比べても遜色ないほどグラフィックも高品質になっている。さらに、数人が同時にアクセスしてチームを作って敵を倒すゲームになっているので、SNS上の友達と一緒に遊ぶのにぴったりである。


大画面スマホや高速回線普及も追い風に


 最近のスマートフォンは画面が5インチぐらいあり、高性能プロセッサーを搭載して、バッテリーもかなり長持ちするようになった。しかも7月から韓国のキャリアはLTEより2倍、3Gより10倍速い150Mbpsの「LTE-Advanced」を商用化する。「ネットワークが遅いためにスマホでゲームを楽しめない」ということも少なくなりそうだ。


 韓国コンテンツ振興院によると、韓国のスマートフォン向けゲーム市場規模は2012年約820億円で前年比28%ほど成長している。2013年も20%以上成長する見込みである。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130705/1096656/

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