ワールドカップの時差克服のために韓国でモバイル放送が人気急上昇 [2014年6月20日]

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サッカーのワールドカップになると、熱烈な街角応援で海外メディアにもよく紹介される韓国だが、今回のワールドカップは街角応援よりモバイル放送の方が人気を集めている。

 韓国代表のグループリーグ3試合の開始時刻は、午前7時、午前4時、午前5時と朝早い。街角に繰り出して応援するには、とても微妙な時間帯だ。韓国代表の第1戦、ロシアとのゲームは6月18日午前7時のキックオフだった。出勤ラッシュの時間帯だけに、早めに会社に行って社員みんなで応援した人もいたし、電車の中でスマートフォンを使って生中継を見る人も少なくなかった。

 韓国代表戦は、DMB(Digital Multimedia Broadcasting、韓国版ワンセグ)、ポータルサイト「NAVER」と「Daum」のインターネット生放送、地上波放送局3社が共同設立したモバイル放送「pooq tv」(テレビ番組を視聴できるアプリ)で視聴できる。


写真●ポータルサイト「Daum」のワールドカップ生中継ページ。全試合のハイライト場面をまとめた動画も提供している
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 最近は、DMB視聴機能を搭載していないスマートフォンも多く、ほとんどの番組をインターネット経由のVOD(ビデオオンデマンド)で利用できるため、DMBの利用は減少していた。しかしワールドカップのおかげで、久々にDMBを利用したという人も多かった。視聴率調査会社である韓国TNmSのデータによると、韓国代表戦があった18日午前7時から9時までのDMB視聴率は、前日の同時間帯の5.8倍にも上った。

 韓国では、地下鉄の中でもDMBやネット動画が途切れることはほとんどない。走る地下鉄の中でも途切れることなくLTEを利用できるだけでなく、地下鉄の車両ごとにキャリア3社のWi-Fiルーターがあるので、地下鉄の中でも高画質な動画を視聴できる。

 試合動画はVODでも提供されているので、生放送を見逃したとしても好きな時間に何度でも観られる。ただし、これらのサービスは、FIFA(国際サッカー連盟)に対する中継料の関係で韓国内だけでしか利用できない。海外からアクセスしても、「海外ユーザーは利用できません」という案内が表示される。

 モバイル放送には問題も起こった。ポータルサイトの生放送中継動画は、同時接続数90万人前後を予想していたにもかかわらず、視聴者数が250万人を超え、サイトに接続できない人が続出したのだ。ネットでは、不満の書き込みがあふれた。

 DMBでは画質が問題になった。DMBの解像度は640×480ドットとワンセグの最大320×240ドットよりも高画質だが、それでもサッカーのようなスポーツ中継では、今画面に映っている選手が誰なのか、ボールがどこにあるのかがよく分からないといったことが起こる。しかも、最近のスマートフォンはどんどん高画質になっているので、5.5インチ、1920×1080ドットといったスマートフォンでDMBを観ると、どうしても「画質が荒い」と感じざるを得ない。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 日経パソコン

-Original column

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