主戦場がスマホに移った韓国でヤフー撤退の必然

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韓国のヤフーが2012年10月19日、12月31日付けでポータルサイト「Yahoo!Korea」を中断、韓国から撤退すると発表した。2013年からはYahoo!の韓国語サービスはなくなる。Eメールやブログなどは、利用中のIDそのままに英語のYahoo!サイトで利用できるようにする。この決定は米ヤフーのマリッサ・メイヤー新CEOが下したリストラ策の1つだそうだ。韓国支社の社員はどうなるのか、広告契約はどうなるのか、といったことは順次説明するという。

 1997年9月、韓国初のポータルサイトとしてオープンしたYahoo!Koreaは2000年まで人気絶頂のポータルだった。しかし2000年以降からDAUM、EMPAS、NAVERなど韓国産ポータルサイトが続々登場してからその地位が揺らぎ始めた。アバターブーム、同好会サイトブーム、動画投稿ブームなど時代の流れをすぐ反映する韓国産ポータルとは違い、米本社の許可を得てから動くYahoo!Koreaはいつも一歩遅かった。














年末でなくなるYahoo!Korea



 2012年8月末時点での韓国ポータルサイトのシェア(コリアンクリック調べ)は、NAVER76.6%、DAUM15.1%、NATE3.9%、Google2.7%、Yahoo1.1%とNAVERが圧倒的な差で1位となっている。ポータルのモバイルサイトとアプリのシェアを見ると、NAVER73.9%、DAUM15.5%、Google10.1%、NATE0.5%と、ここでもNAVERが圧倒的で、Yahoo!はカウントされないほどである。


 Yahoo!KoreaのシェアがGoogleよりも低いのは、NAVERの壁を越えられなかったこと以上に、スマートフォン向けサービスの対応が大幅に遅れたことが理由ではないかという分析がある。Googleも韓国ではシェアが2%にならないほど人気がなかったが、Android搭載スマートフォンが普及してからは自然と伸びた。スマホで検索すると、Googleが標準搭載されているからだ。


 韓国のポータルサイトを見ると、NAVERのシェアは年々大きくなるばかりである。モバイルでもNAVERが圧倒的なシェアを持つことから、ほかの会社がポータルサイトの運営をやめてしまうケースが増えている。韓国の最大手キャリアKTも、モバイルサイトの対応に遅れたことからシェアが急減したポータルサイト「Paran」のサービスを2012年7月に終了した。SKテレコムの子会社が運営するシェア3位のNATEも、シェアが減り続けていることからリストラに着手した。これからはNAVER、DAUM、Googleの対決になりそうだ。


 NAVERはグーグルのデジタルコンテンツ配信サービス「Google Play」に対抗して、マンガや動画などのコンテンツを販売する「Nストア」、独自のアプリを販売する「NAVER APPストア」に力を入れる。DAUMはLGU+のようにデジタルTVにセットトップボックスを付けるだけでスマートTVのように使える「TV+」に力を入れる。

韓国では、ソフトバンクが運営するYahoo!Japanは日本でのシェアが高く韓国のYahoo!とは全然違うことが話題になった。なぜならばYahoo!Koreaの撤退が発表されたその日に、韓国のスマホ向けアプリ人気ナンバーワンの「カカオトーク」を運営するカカオが日本のヤフーと5対5で合弁し、日本でカカオジャパンを設立したと発表したからだ。


 韓国ではポータルサイトの最大のライバルは、ほかのポータルサイトではなくカカオトークとまで言われている。カカオのソーシャルゲームや、FacebookのようなSNSサービス「Kakao Story」が大人気だからだ。今ではポータルサイトの利用時間よりもカカオのメッセンジャーやゲームを利用する時間の方が長い。そのカカオが日本に進出するために選んだパートナーがYahoo!Japanだという報道に、韓国ではなぜYahoo!なのか疑問だとする声もあった。韓国とは違って日本ではYahoo!がNAVERのように人気のあるポータルサイトだと知って、多くの人が逆に驚いている。


 Yahoo!Japanとカカオとプラットフォームシェアにより、Yahoo!Japanはスマホ向けサービスを強化、カカオは日本人ユーザーを獲得できるチャンスを得た。2社の合弁は、日本で人気の高い「LINE」に対抗するためとも言われる。


 インターネットの入り口はポータルサイト、朝起きたらまずそこのニュースを読む、というライフスタイルはもう昔話で、今ではTwitterやLINE、カカオトークのようなアプリを確認することから1日が始まるほどだ。Yahoo!Koreaの撤退をきっかけに、ポータルの必要性まで議論になっている。


 スマホ時代を迎え、ポータルも過去のサービスになってしまうのだろうか。カカオジャパンはもちろん、日本のポータルサイトの動きも気になるところだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年10月25日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121025/1068223/

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