[日本と韓国の交差点] 二兎を追う韓国企業:新規事業の拡大と経営効率の向上

2011年は市場最大規模の投資を計画


韓国では政府も企業も、「今後10年間の持続的成長を考えるとき、2011年は重要な年になる」と強調し、史上最大規模の投資を実施している。加えて、雇用拡大、人材養成や教育拡充など10年後を見据えた成長戦略を次々に発表している。

 大統領官邸である青瓦台は、韓国の2011年を展望するとき「2匹のウサギ」がキーワードであると発表した。5%の経済成長を目指す一方、物価上昇は3%に抑える。雇用を増やしながらも、休暇を楽しめるようにする。先進国と途上国の架け橋になる。青年失業と高齢化社会の両方の対策を取る。FTAを拡大するが投機資本が流れてくるのは防ぐ。こうした国政目標を発表した。


 韓国の主要企業も2011年度事業戦略を発表し、新規事業のための果敢な投資と経営効率の向上という2匹のウサギを狙っている。サムスン、LG、SK、現代自動車の4大グループはそろって、2011年に史上最大規模の投資をすると発表した。「10年後を考える」、「世界市場競争力」、「攻撃的経営」、「人材養成と雇用拡大」が共通テーマになっている。


 韓国ではどの企業も「技術発展の速度がものすごく速くなっているため、今売れている製品が10年後には市場からなくなっているかもしれない」という危機を常に強調し、長期投資の重要性を訴える。韓国が今まで取ってきた「先進国の技術に素早く追いついて、低価格で勝負する」戦略は、中国や新興国が取り始めている。中途半端なままでは生き残れない。今から「未来」競争は始まっている。



3代目への継承が、投資の拡大と人材の教育につながった

 もう一つ、韓国の財閥系大手企業が市場最大の投資に走っているのは、2011年から経営者一家の3世が第一線に立つことも影響しているようだ。最も注目されているサムスングループの場合、3世経営者をサポートしやすいよう、役員も若手に入れ替えている。3世の時代にも企業を存続させ成長を持続させるためにはどうすればいいのか? 答えは、新規事業を発掘するための投資と、ブレインになってくれる人材の確保しかない。


 サムスングループは2011年、前年比18%増の43兆1000億ウォンを設備と研究開発に投資すると発表した。主力事業である半導体や液晶ディスプレイ(LCD)の世界市場支配力を強化するとともに、新規事業への投資を拡大することで未来成長動力を拡充する。年間採用も前年比11%増の2万5000人を予定している。これは同社史上、最大の規模だ。


 LGグループも創業以来最大規模の投資を実施する、前年比11.7%増の21兆ウォンを設備と研究開発に投資すると発表した。サムスンと同じく1)主力事業の市場拡大、2)スピーディーな新規事業発掘、3)積極的な人材確保で世界市場のリーダーになるという目標を掲げている。


 現代自動車は15兆ウォンを投資する。SKグループは具体的な金額は発表していないが「前年より投資も雇用も増やす」としている。サムスンとLGの攻撃的な経営戦略は、ほかの企業にも影響を与えており、この他にも多くの企業が、投資も採用も当初の予定より増やすとしている。新規事業への投資と並んで、新興市場の攻略も重要な戦略の一つである。中近東、南米、アフリカへの進出が、より活発になると見込まれている。



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By 趙 章恩

2011年1月14日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110112/217894/

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