匿名がもたらす快感、口コミでユーザーを集めたチャットサービス

オープンから1カ月、口コミだけで1日の訪問者数が8万人、同時接続1万5千人のチャットサイトが登場した。韓国政府が進めている実名確認に逆らい、会員登録や本人確認など一切なく、匿名でチャットができる「GAGAライブ」というサイトである。

 しかもランダムチャットといって、同じ時間に接続した人同士がランダムに2人だけで1対1で会話できるようになっている。どんな人とつながるか全く分からない、自分も相手も匿名のままチャットを楽しめるところが人気を集めている要因だ。


 使い方はとてもシンプルで、サイトにアクセスして「ランダムチャット実行」のボタンをクリックするだけ。自分が書き込む文章の前には「あなた」、相手の文章の前には「知らない誰か」としか表示されない。


 これはなんと、お医者さんが趣味で開発したものだそうだ。徹底した匿名ぶりや使い方は、英語サイトの「omegle」に似た仕組み。パソコン通信のようなシンプルなウィンドウの中で文字を書き込みチャットする。


 Flashで動作しているので、HTMLソースを自分のブログやSNSなど、どんなサイトにも貼り付けてチャットができる。平日の昼でも5000千人以上が同時接続しているのをみると、みんなこっそりブログなどに貼り付けてやっているのかもしれない。


 今までのチャットサイトは、実名確認をして会員登録し、カテゴリーを選択し、チャット部屋を作って相手を待つか、チャット部屋の名前を見て面白そうなところに入る。チャット=出会い系、援助交際の温床という悪いイメージがつけられたため、基本的に性別やIDが公開される。住む地域や年齢まで公開しないといけないサイトも多い。

しかし「GAGAライブ」は匿名なのでどんな会話をしても大丈夫、相手がどんな人なのか探るのが面白い、別人になりすまして会話をするスリルがある、といったブログやSNSサイトの書き込みがきっかけとなり、全く宣伝もしなかったのにいつの間にか1日8万人が訪問するサイトに成長してしまった。


 ランダムチャットが話題になったのはもう一つ芸能人や有名人が出没するという噂からだった。ある有名人が、「ランダムチャットで色んな人と他愛のない会話を楽しむとすごく癒される」と発言したことや、チャットを終えて挨拶をしようとしたら歌手の○○だと言ってきたので「嘘つけ!」と言ってやったが、他の人のブログでもその人とチャットをしたという書き込みがあったのでびっくりした、などの証言がコミュニティサイトなどに書き込まれえいる。好きな芸能人に会えるかもしれない、というドキドキ感からか、20歳代女性の利用が増加しているという。女性ユーザーの多いチャットサイトには自然と男性も集まる。ユーザーが増えていくのは


 チャットの内容は色々。意味不明の言葉を残してすぐ出て行く人もいれば、しりとりをしたがる人もいる。就活に悩む大学生がいたり、いきなり数学の問題を解いてほしいと頼んでくる高校生がいたりする。自称ソウル大生に科学の試験問題の解き方を教えてもらったというチャットのキャプチャーは話題になった。


 全く知らない人だからこそ、自分の秘密を打ち明けたり、誰かの悪口を聞いてもらったりしてすっきりするという、毒を排出できる爽快感もある。何でもネットで完結させ、恋人との別れも携帯メールで済ませてしまうというこの頃。そういう世の中だからこそ、PC通信や文通の時代を懐かしみ、ランダムチャットにはまる人も増えているようにみえる。


 ランダムの残念な点は、気が合う人同士が出会い会話が進む中、事情があって途中で切れてしまうともう最後。同じ人にまた巡り会える可能性が非常に少ないということだ。チャットサイトにある掲示板には、「×月×日×時に出会ったあの人を探しています」という書き込みが絶えない。これもランダムチャットの妙味といえるかもしれない。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年10月22日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091022/1019779/

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