日本政府は2019年7月4日午前0時、半導体やディスプレー製造に欠かせない3品目、「フッ化ポリイミド(透明ポリイミド)」、「レジスト」、「フッ化水素」の韓国輸出規制を発動した。輸出をしないというわけではない。韓国に上記3品目を輸出していた日本企業は、今までは最大3年間分の輸出許可を1度に取ることができた。7月4日以降は、輸出契約ごとに許可を取る必要があるため、時間がかかる。韓国メーカーでは半導体やディスプレーの製造が計画通りにできなくなることで、納期が遅れて米国や日本のメーカーでもテレビやスマートフォンの製造に影響が出る可能性がある。韓国メーカーは7月3日までに最大限の在庫を確保し、追加される手続きを確認するなどの対応に追われた。

 韓国における2018年の輸出額は、半導体が1267億米ドル、ディスプレーが249億米ドルである。韓国メーカーは日本から、製造に不可欠な材料を3億8546万米ドル分輸入して、半導体とディスプレーを製造している。「フッ化ポリイミド(透明ポリイミド)」、「レジスト」、「フッ化水素」は日本メーカーの世界シェアが高い。韓国貿易協会の2018年のデータを見ると、上記3品目はほとんど日本から輸入している。「フッ化ポリイミド(透明ポリイミド)」は日本からの輸入が84.5%を占めており輸入額は1972万米ドル、「レジスト」は同93.2%で同2億9889万米ドル、「フッ化水素」は同41.9%で6685万米ドルだった。

 では日本から材料の輸入が遅れると、韓国経済を支える半導体とディスプレー産業は大変なことになるのか、というとそうではないようだ。韓国メディアやアナリスト、メーカー関係者の間では「短期的には混乱が生じるが、常にリスク管理しているので長期的には影響がない」という見方がほとんどだった。

 韓国内では日本政府の輸出規制をきっかけに、今まで何度も頓挫していた「材料国産化」を本気で始めるべきだという世論が沸き上がり、官民による集中投資が始まろうとしている。複数の韓国メディアは、「今までは、日本から材料を輸入するのが経済的だと見て国産化に力を入れなかった。材料の国産化に使う資金をもっと早く結果が出る分野の投資に回し、利益を最大化したかったからだ。グローバルでの半導体チキンレースの勝者である韓国サムスン電子(Samsung Electronics)が自社にとって欠かせない材料を輸入に頼るはずがない。韓国の材料産業は大きく変わるだろう」と報じた。

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