南北サイバー戦争始まる?国際的ハッカー集団が北朝鮮サイトを攻撃 [2013年4月5日]

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2013年3月20日に
韓国で発生した大規模サイバー攻撃事件は北朝鮮の関与が疑われている。北朝鮮の韓国に対する威嚇がどんどんひどくなっている中で、4月3日に、国際的ハッカー集団「Anonymous(アノニマス)」が、北朝鮮が韓国向けに運営する体制宣伝用TwitterとFlickrのアカウントを乗っ取ったと発表する出来事があった。

 同じく宣伝用サイト「ウリミンゾクキリ(わが民族同士)」のサイトをハッキングし、会員として登録している1万5000件近いアカウント情報を手に入れたとして、4月4日に9001人分のデータ(ID、性別、氏名、メールアドレスなど)をFacebookページ「Anonymous South Korea」で公開したりもした。


アノニマスの「Free Korea作戦」


 「Anonymous」は、今回の北朝鮮サイトハッキングを「Free Korea作戦」と名付け、北朝鮮に対して4つのことを要求している。


 1.北朝鮮のキムジョンウン(金正恩)は辞任する、2.核兵器の製造を諦める、3.自由民主主義体制に変える、4.北朝鮮の住民が検閲なく自由にインターネットにアクセスできるようにする、の4つだ。








画面 Twitterアカウント「Anonymous_Korea」で立場を表明


 これらの要求に従わないと北朝鮮を相手にサイバー戦争を起こす、と“宣戦布告”している。「Anonymous」は、北朝鮮のサイバー攻撃に関して、自分達は世界平和を望む集団であり、特に米国や韓国政府を支持するわけでもなく、中立的立場であるとTwitterアカウント「Anonymous_Korea」で表明している。


ソニーにも“宣戦布告”した過去


 「Anonymous」は、2011年にソニーのプレイステーションネットワーク(PSN)にDDoS攻撃をしかけ接続不能にしたことを明かした集団である(関連記事:「ソニーの情報流出」、その真相を探る)。米国の某ハッカーがプレイステーション3(PS3)を改造して自作ソフトを動かせるようにするソフトを自分のブログで公開したところ、ソニーは著作権保護のため、そのハッカーだけでなく、ブログにアクセスした人の情報までも取得しようとした。これに「Anonymous」が反発し、ネットの自由を守るという名目で“宣戦布告”し、PSNを攻撃したのがこの事件だった。


 その他にも、著作権関連の取り締まりや表現の自由といった問題に対する意思表明として米法務省ハッキングしてサイトのデータを削除したり、サイトにアクセスできないようにしたりといった事件にも「Anonymous」が関与している可能性がある。児童ポルノサイトをハッキングしてサイトを閉鎖し、ユーザー1600人あまりの名簿をネットに公開したこともある。


韓国ネットユーザーに「スパイ名簿」作成の動きも


 韓国のネットユーザーの間では「Anonymous」が北朝鮮サイトを攻撃したことより、むしろ「Anonymous」が公開した北朝鮮サイトの会員情報に注目する向きもある。会員の中に韓国に住んでいる人がいるのではないか、捜査するべきではないか、という世論が湧き上っているのだ。


 北朝鮮が体制宣伝用に運営する「ウリミンゾクキリ」のサイトは韓国からアクセスできないように遮断されているため、そもそも韓国から会員登録はできないはずだ。だが、公開された名簿の中には韓国ポータルサイトのメールアドレスが多数含まれていた。韓国籍を持つ人がアクセスを禁じられている北朝鮮のサイトの会員になって書き込みをする、北朝鮮サイトの内容を他のサイトに“コピペ”する、といった行為は「国家保安法」違反である。


 韓国内の一部のネットカフェでは、公開された会員名簿の氏名とメールアドレスをグーグルで検索し、出身大学や職業などの個人情報を追加して「スパイ名簿」を作るという騒ぎにもなっている。しかし個人情報を盗用して他の人が会員登録した可能性もある。「ハッカー集団が公開した名簿によって無実の被害者が生まれるのではないか」と懸念する声も上がっている。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130405/1085823/

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