日本と変わらず、韓国にも色んな種類の商品券がある。ネット強国らしく、韓国の商品券はほとんどがオフラインでもオンラインでも使える。その中でもお年玉やちょっとしたプレゼントに人気なのが図書券だ。
オンライン書店(韓国の書店はオフラインでは定価制だが、オンラインでは1年未満の新刊は10%、その他は20~40%ほど割引販売されている)でも図書券が使えるように、金額のところをスクラッチにして、その下にあるPIN番号を利用すればオンラインでサイバーマネーとして使えるように配慮したのはいいが、これが思わぬ方向へ転がってしまった。
図書券はオンラインショッピングや映画前売り、オンラインゲーム決済、デジタルコンテンツ購入、携帯電話利用料金決済など220以上のサイトで決済手段として使える。携帯電話料金の場合は、プリペイド式で音声通話10分にいくら、という利用権を買う方式だ。
問題になっているのは小学生の図書券を利用したオンラインゲーム決済。未成年者なのでクレジットカードは利用できず、携帯電話小額決済やARS(固定電話から特定の番号に電話をかけ、利用番号を入力すると決まった金額が電話料金に合算請求される方式)決済を利用する。しかし、これらの方法だと利用の明細が残り、親に叱られる。子供達は本を買うから図書券をプレゼントしてほしいとねだったり、お小遣いで図書券を買ってはオンラインゲームのアイテム購入に使っているのだ。
図書券をオンラインゲームで使う方法はとても簡単で、図書券を発行している会社のホームページに会員登録し、図書券のスクラッチを剥がして下に書いてあるPIN番号を入力してサイバーマネーに転換すると、図書券と提携した220サイトで現金と同じように使える。スクラッチを剥がした図書券は例えオンラインで使っていないとしてもオフラインでは絶対使えない。
2006年にサイバーマネーとして使われた図書券は1800億ウォン(約230億円)で、全発行額の半分以上にも及ぶ。1800億ウォンの中でもゲーム用に使われたのは780億ウォン(約100億円)で、2007年には1000億ウォン以上になる見込みだ。このように図書券を利用してこっそりオンラインゲームの利用料決済やアイテムを購入できるようになっているため、親は自分の子供がどれぐらいの金額をオンラインゲームに注ぎ込んでいるのかさえも分らない。
市民団体は「産業育成という名目でオンラインゲームを野放しにしたために、純粋に楽しめる子供向けゲームはなく、ほとんどがアイテムを次々に購入しないとゲームを楽しめないようにしている。判断力のない子供たちが親に隠れてゲームにお金を使いすぎて困っているという相談が絶えない。子供のサイバーマネー利用をオンラインゲーム側が制限するようにするべきではないだろうか」と主張している。
大手企業に勤めるキム・ドンウ氏は
「小学校2年生の子供が図書券がほしいというから本をたくさん読むのはいいことだと喜んで20万ウォン分買ってあげたら、その日の夜こっそりオンラインゲームに全部使い果たしてしまった。どうしてそんなことをしたんだと咎めたらゲームに勝つためには魔法のアイテムが必要で、ゲームのレベルが低いとみんなにバカにされると泣く。仕方ないのでゲームのアイテムが買いたければお母さんと相談すると約束させただけで怒らなかったけど、ゲーム中毒なのではないか心配。でも小学生のいる家庭はみんな一度は図書券に騙されたというから図書券をオンラインゲームで一定金額以上は使えないようにするべきなのではないだろうか」
と心配する。
オンラインゲーム中毒も問題だが、経済観念のない小学校低学年からサイバーマネーの便利さだけを覚え、サイバーマネーはいくら使ってもまた湧き出るものと勘違いしてしまう子供は確かに増えているようだ。銀行や証券会社では顧客の子供を対象に、「お金教室」、「投資教室」を開催し、正しいマネー知識を教えてあげるイベントを熱心に開催している。
2006年韓国をひっくりかえした「成人PCバン」事件、日本でいうパチスロだが、ここでは図書券を渡して外で換金する方式が問題になった。またギャンブル用の商品券は景品用図書券に分類されるが、商品券発行許可を担当している関係機関が賄賂をもらってでたらめな運用をしていたために約4300億ウォン(約540億円)もの図書券がギャンブルマネーに化け、組織暴力団の資金になった。
これらの問題を受けて、4月28日からは景品用図書券の流通は全面的に禁止される。そのせいか、金券ショップでの図書券の取引価格は下落、今のうち普通の図書券を安く買い込んでお年玉に使おうかな~と企んでいる。使い方に問題があるとはせよ、あげる側にとっても現金より下手な物よりは図書券の方がプレゼントしやすいからね。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070424/269278/