子供の安全を守れる社会システムとなるか? ITフル活用のソウル市施策

韓国ソウル市は小学校周辺の監視カメラとセンサーを利用し、子供たちの学校出欠、危険地域への立ち入りなどをチェックして保護者の携帯電話に知らせ、いつでも子供の居場所をソウル市のウェブサイトで確認できる「ユビキタスソウル安全ゾーン」を始める。2009年9月よりソウル市内の2箇所の小学校で600人を対象に実験サービスを開始し、利用方法や活用方案などの標準モデルを制定し、ソウル市25区全域に拡大させる。




「ユビキタスソウル安全ゾーン」のサイト

位置情報確認のために子供にUSIM内蔵携帯電話または位置追跡機能のあるネックレス、腕時計型電子タグを持たせ、学校周辺半径200M以内の位置情報が周期的にSMSで保護者の携帯電話に送信される。子供の位置情報は行政機関と警察も確認できるようにする。

 学校や塾などで個別に子供の出欠を位置情報でチェックし、保護者の携帯電話にメッセージを送信するサービスは提供されてきたが、自治体が乗り出して子供の安否を確認できる位置情報サービスを提供するのは初めてのことである。


 位置情報を利用するため、保護者が同意した場合だけ利用できるようにした。子供が危険な状態と思われる場合は、ソウル総合防災センターまたは警察に連絡し、監視カメラで確認してもらうこともできる。今後サービスをお年寄りや障害を持つ人の安否確認にも利用できるようにする計画である。


教育政策を担当する省庁である教育科学部も、共働きと低所得層の多い地域にある小学校40校を対象に「セイフウェイ・プロジェクト」を始める。指紋認識または電子タグを利用して学校の出欠情報を保護者の携帯電話に送信し、低学年の子供はボランティアが指定の場所まで子供を送り迎えする「登下校お助け制度」も利用できる。教育科学部は安心して子供を外に出せるよう、2010年6月からは全国の小学校で電子タグを利用した位置情報サービスを提供するとしている。


 子供が今どこにいるのか、ちゃんと塾に行っているのか、変な人に連れ去られはしないか、いつでも自分で確認できる位置情報サービスを自治体が提供してくれるとなれば、保護者にとって嬉しいことであろう。一方では、そのためにまた街に監視カメラが増えるとことを、プライベート侵害として嫌がる人もいるだろう。


 しかし、韓国のニュース番組では、連日街の監視カメラのおかげで強盗が捕まった、駐車違反が減ったと報道しているため、個人の肖像権やプライベートを侵害されても、犯罪のない安全な生活を求め監視カメラをもっと増やしてほしいと願う住民も増えている。


 この秋からは路線バスにカメラをつけて、バスを「移動交通違反取締り」に利用するという方案も発表された。マンションでは人件費を節約するという名目で警備員の数を減らし、監視カメラとオートロックに変えている。カメラは動かぬ証拠を残してくれるので、確かにないよりは犯人逮捕にも役立つし予防にもなっている。でもシステムの不具合はいつでも起こりうる。電子タグと監視カメラは万能ではない。決定的な瞬間カメラが動かなくなることだってあるではないか。韓国の有名女優で自殺した故チェ・ジンシルさんのお墓から遺骨がなくなった事件でも監視カメラが役に立たず捜査に苦労したことがあった。


 ユビキタスという魔法の言葉をつけると、すべてのものが生命を持ち、人間のために働いてくれそうな幻想を抱いてしまう。犯罪の被害者になるのも怖いが、「電子タグ依存症」「監視カメラ依存症」になってしまうのも怖い。自分を守るために常に位置情報を発信し、カメラを頭につけて歩く時代になったりして。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090909/1018483/

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